画家は絵の道具にこだわるべき?

画家が使う絵の道具にはいろいろなものがあります。

画材は画家が好みで選び、自分の表現に適している道具を用います。

油彩、アクリル、水彩、パステル、ポスターカラー、鉛筆など、

自由に選べますが、その画材にも各メーカーがあり品質や価格も違います。

また、画家の道具は画材屋だけで得るものではなく、

新しい発想やこだわりによって生み出されます。

絵の道具に対しての、画家の考えは皆それぞれ違うものです。

ここで画家の道具へのこだわりについて考えてみましょう。

 

画材道具は手のようなもの

画家の絵と道具の歴史

古代の画家が描いた絵のほとんんどは、装飾や壁画的ものが多かったと考えられています。

そのほかにも木や羊の干し皮で作った紙などに描いていました。

そこには古代エジプト、ギリシャやローマ時代に多くみられる蝋画が

油絵の先駆けとして愛用されていました。

この時代から彼らは筆を使い御椀のような絵皿や(壁画用)、

鉄を熱したパレットを使っていました(蝋画用)。

今ではそれほど使われていない道具を、古代人は必要に応じてどんどん考案していたのです。

 

職人と画材道具

ローマ時代になると盛んに絵を好む時代になります。

いたるところに神殿が建設されたり、巨大施設が建設されていくなかで、

絵画は装飾的に好まれていたるところに描かれていきます。

また巨大な彫刻も多く制作されていて、その全てのものには色彩まで施されていました。

そのため多くの職人たちが仕事を効率的に行うために、便利な道具を沢山考案していきます。

その後の中世からルネッサンス時代になると、聖書の写本や祭壇画、神話画、歴史画、戦争画、肖像画

などがフレスコ画、テンペラ画、油彩画などで描かれるようになります。

その時代に新しい顔料と絵具やオイル、パレットナイフなどが考案されます。

 

現在の画材道具

現在の我々が使っている画材道具は、

19世紀の産業時代に考案されたものを使っています。

そのため、現代的な便利さを重視して生産されている。

販売されている道具のほとんどは、

人工的で科学的な素材を古代の道具をヒントにして作り出しています。

商品化された道具は、古代の職人がしていた仕事を画材会社が代行して製造した道具です。

そのため現代の画家は、描くことだけに時間を使うことができているのです。

 

絵の画材道具のいろいろ

選べる画材の種類

画家によっていろんな才能があるように、画材にも色んな種類があります。

絵の道具はその人の美的感性や描く環境、性格、好みなどと大きく関係してきます。

絵を描くという手仕事は、道具をいかに使いこなすかにかかってきます。

手が自由に表現できる画材、気持ちと感覚が伝わりやすい画材、

好みの色彩表現ができる画材、などを選ぶことが自己表現には大事になってくる。

選べる画材には、紙に描ける鉛筆、木炭、パステル、水彩、ペンがあります。

キャンバスや板には、油彩、テンペラ、アクリル、フレスコ、ペンキが選べます。

どれをどう使うかは、画家の自由です。

 

国内外の画材メーカー

それぞれの画材には、国内、海外の画材メーカ―があります。

国産メーカーは価格が安くて購入しやすいのが特徴ですし、

海外メーカーはその国の伝統的な手法を用いていることで国産との差を生み出しています。

輸入品は国産より購入しにくいのですが、

それなりに魅力ある商品を提供しているので日本でもよく売れています。

最近ではネットで売買されているので誰でも購入可能です。

 

画材の価格

画材の価格を気にする人は多いでしょう。

絵を描い続けるにはどうしても画材は必要です。

なので、沢山の絵を描く人や大きな絵を描く人は、画材の価格にとても敏感になります。

高価な画材にこだわる人も逆に多くて、高価な筆は特によく売れているようです。

一般的な入門者や日曜画家たちは、国産のメーカ―を重視して購入していますが、

彼らはメーカーの知識より、描ける喜びに重点を置いているのであまり気にする人はいません。

 

絵が上手くなるほど、画材道具にこだわりを持つ

巨匠たちの画材へのこだわり

巨匠たちの画材へのこだわりは、昔から続いてきました。

画家たちのこだわりこそが伝統をつくって来たのだと思います。

彼らは自分たちで何でも作っていました。

それは工房の中で学び、工房の制作の基本と秘密でもあったのです。

ダ・ヴィンチの時代には絵具やオイル、チョーク、筆などすべての道具を自分たちで作っていました。

この時代にパレットナイフなども考案されていて、それまでは指や筆、練り石で絵の具をまぜていたのです。

パレットナイフは木で作られていて、粘土の彫像などにも使われていたようです。

彼らには時間が十分にあったので、油なども独自の製法で準備しています。

ヤン・ファン・アイクも絵具の美しさを追求していた画家でした。

彼はおそらく古代の手法を用いて、油絵具を軽く熱して使っていたのでしょう。

オイルも現代とは違う手法で使っていたと考えられます。

古代の絵具には色んなものが入っており、それは画家たちの秘密でした。

特に筆には画家たちのいろんなこだわりがありました。

あらゆる獣の毛を使っていき、好みの絵肌になるように研究を積み重ねています。

絵具が薄い時代は柔らかい筆、練り合わせ剤が入ってくる時代だと

絵の具を盛り上げるために強い筆を用いるようになっていきます。

工房の制作のスピードを上げるためには、師匠の下描きが大量に必要になってきます。

そのためには早く乾く揮発性オイルが必要でした。

ルーベンスは海外から持ち帰った揮発油ぺトロールを最初に使った画家であり、大量の下絵はぺトロールをまぜた溶剤で描いています。

それぞれの時代の画材へのこだわりには、それなりの理由と画家の考えがあったのです。

 

絵が上手くなっていくと好みが出てくる

どんな素人画家でも絵が上達していくと、さらに自分の好みを追求していくものです。

これは自然なことで、それなりに知識と経験から生まれてくるものです。

人の好みというのはさまざまで、どれが良い悪いは全くない。

どの画材を使おうがどのメーカーを選ぼうが、それは画家の深い考えと関係してきます。

画家が選ぶ画材は、今の自分に必要な画材を取り入れるため、その時その時まったく違うものを選ぶ場合もよくあります。

長年絵を描いているベテラン画家たちは、もう自分の画風が決まっていて固定されているため、

決まった画材を愛用しています。

 

選んでこだわるのは自由

どの部分にどのメーカーを選ぶか、どの画材を取り入れるかは本人の自由です。

画材を購入するのも画家の楽しみの一つであり、

次は何を描こうかと考える場所として画材屋によく出入りしている人もいます。

最近はキャンバスも変形型が多く出ていて、海外からの商品が多く見られます。

そのため画家のイメージを当てはめることで、新たなスタイルの絵が誕生している。

 

画材道具の力を借りて不可能を可能にする

絵によって技法が選べる時代

現代美術、近代美術という言葉があるように、

今の時代の絵は「自由な発想」と「自由な表現」で「自由に画材を使って」描いています。

リアリズムや抽象表現、エッセンシャルアート、ポップアートなどは、進化をし続けています。

そのため各分野に必要な知識を持つ画家たちは、ミクスト技法を使いこなして新たな可能性を引き出しています。

素材を上手く利用した作品にも、部分的に新しさを感じるものもあります。

どんな表現を目指すのかは、画家本人の好みであり自由です。

今は技法が選べる時代であるだけに、描く題材に合う表現を目指さないと逆に

説得力に欠けることもあるのでそのあたりに注意が必用です。

 

創作の目的に応じた画材を選ぶ

創作ではアルミニュウムや木、キャンバスを同時に使う画家もいます。

フランク・ステラなどがその代表的な画家です。

彼はあらゆる素材を組み合わせて一つのオブジェのような作品を制作しています。

それには、油彩やアクリルなどの絵具を使っており、彼の素材に対する愛着を感じることができる。

このように素材は自由に使って選び、一つの作品にすることができます。

アンゼルム・キーファーも画布にいろんな素材を付け加えて描く画家です。

彼の作品は非常に大きくて巨大なものが多い。

そのためあらゆる素材を貼り付けることができるので、

作品のテーマの生々しさが強調されています。

 

自分だけの決まりを作る

「描き方を決める」これはベテラン画家になると、自然に決まってきます。

そのなかで「自分だけの決まり」というものも同時に出来上がってくる。

描く項目によって自分が使う道具にこだわりを持ち、調合や使うタイミングなど様々な工夫をして

制作手順と同時に技術的なことを決めておくことで、自分だけの方法論を生み出していきます。

 

道具を上手く使えるアトリエにする

アトリエと制作の規模

アトリエの広さは画家の制作に応じて違いがあります。

小さい絵を描いている人は小さなアトリエで十分ですが、

大きな大作を描く人は広いスペースが必要になります。

どちらも画家が目指す目標に応じて準備されるものですが、

人には制作していて心地よいスペースというものがあるように思います。

無駄に広いと落ち着かないとか、狭すぎるとイライラしたりするかもしれない。

天井が高いとアトリエにはとてもよくて開放感も生まれます。

ヨーロッパの建物はほとんどが天井が高いので、画家たちの制作にはとても適した部屋が多くあります。

絵を飾るにも天井が高い部屋の方が向いているのも納得がいく。

 

アトリエ内で行う作業

アトリエでの作業を見せたがらない画家はいます。

アトリエ内は画家の創作秘密ということでしょう。

絵の特殊な制作の秘密がある画家は、アトリエに人を入れたがらないものです。

巨匠でもティントレットドガバルテュスなどはアトリエに

友人たちですらあまり入れるのを好みませんでした。

アトリエ内での作業は、画家の本質がむき出しになっていることもあります。

そのため逆にアトリエの新作を見せたがる画家います。

巨匠にはルーベンス、ターナー、ピカソ、などは、実際制作中のアトリエに客を招いているほど、

自由で誇らしく自分の作品を見せて売り込む意欲を持っていました。

アトリエというのは画家の仕事を見ることができる作業場であると同時に、

アトリエのあり方を考えて使うといろんなことに結びつけることもできます。

アトリエと同時にギャラリーのように絵を飾って並べている画家もいますが、

彼らは画商たちに売り込みをさりげなく演出している。

 

自分専用の画材道具を生み出す

特別に注文してオリジナルの筆を作る

キャンバス、、イーゼル、パレットなどの道具は、

画家のこだわりを感じることができる部分でもある。

特別に注文して作ってもらうオリジナルの道具類には、画家たちの経験とアイデアが込められている。

特にオリジナルの筆の注文はよくあることで、画家と画材屋が共同で生み出しています。

筆の長さ、毛の長さ、点描用の筆、幅広い筆の注文などが特に多い。

マチスは筆の長さにこだわり、レンブラントは筆先にこだわった、ベラスケスは筆の毛の長さを調節している。

ダ・ヴィンチは毛の柔らかさにこだわっていて、いろんな動物の毛で多様な表現に挑戦しています。

 

自分で道具を自作する

フランスの抽象画家スーラージュやドイツのリヒターなど、

抽象画家たちは自分のオリジナル道具を考案しています。

抽象画家たちは今までにない道具を生み出して、独自の新しい表現に挑戦しています。

絵具や色をどのように面白く表せるか、自分の哲学を駆使していろんな材料で実験を繰り返しています。

「自分にしか使えない道具」というものは人と違う特別なことであり、

芸術としての自己表現にさらなる説得力を与える力になる。

本当の経験者は人が使わない道具で作品を創り上げる力を持っています。

 

まとめ

画家が使う絵の道具というものは、長い歴史の中で生み出されてきたものでした。

現代ではその技術の一部を科学的に発展させていき、新しい可能性を生み出せる道具として用いられています。

画家の愛用品としての画材は、多くの人に愛されているのですが、誰もが同じものを使っている現代に、

一つなにか違うことをしてみることはとても大切なことだと思います。

自分で何かを感じ取り、画材を使い表現することは画家になるための第一歩です。

沢山の絵を描いて自分だけの道具を選び、自分だけの表現に挑戦していきましょう!

道具にこだわることはとても大切なことなので、画力と同時に色んなことを学んで自分の知識材料の

一部として活用していきましょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。