「石膏による水性の下地」のつくり方

西洋絵画(油彩、テンペラ)は木、紙、布のどれにでも描くことができます。

(布はキャンバス地が(麻布)が一般的です。)

何に描くにしても、白い地塗りをしておくと描きやすい。

石膏による下地は画面が適度な吸収性を持つからです。

下地が白だと顔料の色が綺麗に出るので、13世紀から絵画の下地は石膏を愛用してきたのです。

また、当時は絵具が薄かったこともあり、特にテンペラ画は白い下地の方が適していたと思われる。

 

画面の質感は支持体で変わる

油絵、アクリル、テンペラ画は、支持体次第で色んな描き方ができます。

一般的にはキャンバスを使い、麻布、線布、ビニール、などが市販されている。

目の粗さは荒目、中目、細目があり、

目的に応じてキャンバス目を上手く利用して描けるのが特徴です。

他にもキャンバスボードやシナベニヤなどもよく使われています。

古代から板の厚みは以下のような感じが一般的でした。

8号サイズまでは6~7mmの厚さ、

10~20号サイズは10mmの厚さ、

それ以上の場合は20mmの厚さの板を用いた方がよい。

木製パネルは堅いので画面はフラットな仕上がりとなります。

作品に金箔を張って磨く場合は力を加えるので、

支持体は木を選ぶほうがよい。

 

 

 

水を混ぜても固まらない非晶質石膏

彫塑などで一般的に使われる石膏は焼石膏です。

この石膏は水と混ぜると固まってしまいます。

絵画の下地として使われるものは非晶質石膏です。

画材メーカーからは地塗り専用のものが何点か出されていて、

ボローニャ石膏もしくは白亜の名称で市販されている。

厳密に言うとそれぞれ成分が違うが、

地塗り用として用いるのならば同じように使ってもかまわない。

 

 

膠水をつくる方法

石膏の接着液は膠水(にかわすい)を使用する

白亜に水を加えただけでは固まらないので、

膠の接着力を利用します。

接着力を高めるには、まず膠を、ゆっくりと水でふくらませる。

そして湯煎することがポイントです。

膠水は、ビーカー(丈夫なガラス器)に膠1に対し水10の割合でつくる。

水と膠を混ぜると10分ほどで膠がふくれてくるので、

そのまま半日はおくようにする。

そして容器ごと湯煎する。

 

湯煎のお湯は60度位

湯専用の容器、タオル、半日置いた膠水を用意する。

鍋に水を入れて火をかけて鍋にビーカーを入れて湯煎する。

湯煎の容器(ステンレス鍋など)を火にかける場合、

膠の入った器と湯煎の容器が直接触れないよう、

タオルなどを入れてクッションにする。

お湯の温度は60度位がよい。(温度計を用意する)

(温度調整ができる保温器があればやりやすい)

※膠は沸騰させると接着力が弱くなるので直火にはかけないように!

※(ビーカーがない場合は、厚みのあるガラスの瓶でも大丈夫です。

写真の瓶は100円ショップで購入したものです。)

 

 

 

膠水と白亜を混ぜて地塗り液をつくる

白亜に白色顔料を入れる場合

ジンクホワイトもしくはチタニウムホワイト(ルチル)の白色顔料は、

白亜の分量分のうち半量までにする。

白色顔料の分量だけ白亜の分量を減らす。

白亜の分量は、B4サイズの画面に対し、およそ50gが目安です。

白亜2+膠水1+水1~2

を容器(料理用のボウル、洗面器)に混ぜ合わせて

泡立たないようにゆっくりかき混ぜる。

 

キャンバスに地塗りする

先に目止めをして吸収力を弱める

麻布も、木製パネルも基本的には同じで石膏液を塗る作業を行う。

ただし麻布は、石膏液だけでは、かなり吸収力の高い画面になります。

絵具をおいたそばから油が浸み込むような画面では描きづらいので、

前膠と呼ばれる目止め作業が必要になります。

和紙を使う場合もこれをやっておくと、適度なしみ込み具合となり描きやすい。

 

 

前膠は薄く重ねる

1回目は30度くらいの温度

少なめの膠を繊維にすり込むつもりで塗ります。

1回目は、人肌よりやや冷えた30度くらいのものをすり込ませる。

膠の温度が高すぎると裏面にまでにじみ、シミをつくってしまうので注意する。

 

2回目は40度くらいの温度

半日ほどおいてから、2回目の膠をかける。

40度くらいのやや暖かいものを、刷毛で普通に塗っていく。

麻布は、膠水を含むと多少縮むので、

しわをつくらないよう側面にも膠を塗ることを忘れないように!

 

 

地塗り液は(石膏液)を塗る

石膏液も一度に厚く塗るとひびわれやすい。

そのため薄く2、3度塗り重ねるほうがよい。

布目が気になる場合は、更に回数を重ねる。

前膠と同じように側面にも塗ることを忘れずに!

刷毛は毛足の短い、やや硬めの毛のものを使う。

石膏液の膠が冷えて硬くなってきたら、膠水と同じ要領で湯煎して使う。

 

石膏液を板に塗る場合

パネルにやすりをかけ表面を対平らにします。

ヤスリかけが終わると粉末を綺麗にふき取っておく。

石膏液は、泡が立たないようにゆっくりと塗ります。

交互に重ねながら、均一に3回は重ねる。

表面3回につき、1回の割合で裏面にも地塗りする。

(これは、反りの防止と虫食いから板を守ることになる。)

そのあと、最低でもまる1日は乾燥させる。

 

地塗りが乾いたらヤスリがけをする

石膏液を乾燥させた後、ヤスリを軽くかける。

小さなパネルであれば、サンドペーパー(8番~10番)で十分です。

ヤスリをかけると画面に艶が出て絵具の色を生かす白くフラットな画面になる。

サンドペーパーは木片などの堅い物に巻いて使う。

こうすると、綺麗にヤスリができある。

※絵具の吸収を抑える裏技

吸収力を抑える方法の1つに白亜地に

リンシードオイルかポピーオイルを刷毛で薄く塗るという方法があります。

1~2回塗り、1週間乾かせると絵具の吸収を多少抑えることができます。

 

まとめ

13世紀から伝わる西洋絵画の白亜地は絵具の発色を美しく見せます。

吸収性の水性下地として現代でも多くの画家たちが愛用している下地の1つです。

膠を使うこの湯煎方法は、臭いがキツイのが今では(住居の場合)問題点とされているので、

必ず換気をして行いましょう。

臭いが気になってつくれない方は、アブソルバンという下地材をオススメします。

これはアクリルジェッソタイプの水性下地でとても便利です。

石膏下地とよく似た画面をつくることができるので、

気になる方はお試し下さい。

 

・お気に入りの素材と下地を選ぼう!

・画家は絵の道具にこだわるべき?

・「油絵の具」の下地材は何を使う?使える下地紹介

・油絵初心者が知っておきたい画溶液の種類

・油絵の筆とパレットナイフの種類を紹介

・油絵の具のパレットの種類

・油絵の色とおすすめメーカー絵具紹介

ABOUTこの記事をかいた人

画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。