バロックのデッサン

絵画は各時代によってデッサンに対する考え方が違います。

バロックの時代は線が消えて、ルネッサンスの時代よりも

人物や静物がぐんと画面前に飛び出してきます。

それは光と闇の効果などもありますが、ルネッサンス時代のフラットな均一感から

部分的なリアリズムへと関心が移っていったのです。

カラヴァッジョから始まり、ルーベンスによってイタリア芸術とフランドル芸術が1つにまとめられたことから、

フランドル地方でバロック芸術が生まれます。

デッサンも絵画同様に見かたや捉え方に変化が出てきました。

 

バロックの時代背景

レオナルドミケランジェロの後は、絵画の頂点がイタリアから

ベルギー、オランダ、スペインへ移りました。

ルーベンスレンブラントベラスケスとかという人たちの

仕事が同じ時代のイタリアよりも上位になったのです。

イタリアの各都市のごたごたやローマ法王の権威に対立するものがありあすが、

他方オランダやスペインの方では商業で国が富んだり、王権が強力になったりという好条件がありました。

権力者が自分の威勢を見せる一つの手段として建築をしたり、そのなかを絵画で飾るということを

成功した商人も同じようなことを考えました。

そのような時代の絵画と建築の様子は、バロックを考える場合に忘れてはいけないとです。

 

バロックの形式化

バロックと区別するために、ルネッサンス時代末期にマニエリズムという名を設定して、

ティントレットエル・グレコ、ポントルモをそのなかに入れています。

バロックは形式化されたもので、それについて考えるとこの時代の絵画は陰影がマニエリズムより

深く見る傾向がありました。

 

 

バロックの色彩と陰影

ルーベンスの絵は明るい。

絵の具は薄くて部分的に透き通っています。

色彩が華やかで影の色が黒ずんでいないので、

全体がキラキラしていて影よりも明るさが見えていますが、

実際はこの明るさの中に影があるので光の明るさが細かくなっています。

レンブラントは反対に暗さのなかに、細かい明るさがあります。

光によってできる明暗を絵画の上の明暗にするということは、ヴァルール(色価、空間全体の明暗の段階)の問題です。

デッサンでは白黒ですから、その度合いをつくる工夫をしなければならない。

一口に言えば明暗があるから形が見えるという考えです。

それで形を囲む輪郭線は不明瞭なものでもいい。

「影」と「日向」という境があればいいということです。

実際にデッサンの上で輪郭線がなくなったのではなくて、心持ちがそうだったということです。

 

バロックの線

ミケランジェロのなかに、既にバロックが見えていりという学者がいます。

例えば輪郭だけの人物素描を見てみると、線の強弱がリズムにつながっている。

ミケランジェロはまだこの線は輪郭による形の上からずれていません。

バロックの線は輪郭そのものではありませんし、拍子のついた線は形を区切るよりも線がはずんで、

線自身の動きに気をとられて、内が空っぽになるようなところがある。

その繰り返しが形式化です。

このように言い切ってしまっては、少し言い過ぎのようですが、大体そのようなものです。

舞台の上で激情を表現場合に、大きな身振りを繰り返すと芝居がかってしまい、

それだけでつまらなく見えるということと同じようなものです。

身振りが内面にあるものから離れた恰好になってはいけないのです。

身振りをここでは形式に置き換えてみれば理解できると思います。

 

 

レンブラントのデッサン

レンブラントは沢山のエッチングを制作していますが、

エッチングは影の濃淡を細い平行線を縦横にひいて、

その粗密の度合いによって表しています。

そういう場合の方向の一定しない線は、レオナルドの影につけた

平行線の意味とは違うと思います。

レンブラントの線は、ここでは濃淡の役をすればいいので、

線としての本来の役割が放置されている。

イタリアが普通に理想主義で、北欧は現実主義だといわれていますが、

そのあらゆれを線に見ることができると思います。

 

プッサンのデッサン

プッサンはイタリアで学んだ画家ですが、イタリアの身振りを真似たのではなく、

その身振りをつくる元を探したのです。

イタリアの上調子なところはなく質素で手堅い。

だから安心してお手本にして習っていいように思えるものです。

一つ間違えれば凡庸なものになり、アカデミズムになってしまう。

プッサンのデッサンの輪郭線は鍛え鍛えて出来上がったという気がしません。

つまり、鋭さとか繊細さとかいう技巧をいろいろと見せびらかすというところがない。

プッサンをみていると、形が確かだと思えます。

明暗も正しいと思えるし、ものの見方が間違いのないものという気がしてくる。

 

クロード・ロランのデッサン

クリード・ロランは風景画を描いていますが、プッサンと見方は同様です。

形をつくっている輪郭の線はそのものが面白いというものではない。

濃淡の墨色は、いい調子です。

この調子があれば絵が描けるということを試みたようなデッサンもあります。

空と河水の明るさと、丘の樹の繁みと遠山と、そこにある大気を明暗としてみる。

デッサンでは白黒の濃淡にすることで絵画上の線がなくなっています。

 

まとめ

ここで紹介したバロックのデッサンは、制作に関する下絵的な資料と考えてもいい。

彼らの時代は色彩の効果をいかにうまく発揮できるかで、絵の評価が決まっていました。

色彩の配置や光と闇でいかにドラマチックな絵に仕上げることができるのかを意識しながら

デッサンを描いていたはずです。

キャンバスの有色下地と同じように、デッサンでもモノトーンのものが多いのはそのためです。

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画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。