ナイフで描きた画家には、レンブラント、モロー、セザンヌ、ブラマンク、
ビュッフェ、ゴッホやクールベ、バルビゾン派の画家たちが有名です。
歴史的に見てナイフを使って描いた画家はそう多くはありませんが、
近代に入ると画家たちは筆以外の道具を使って、油絵具をバターのように厚塗りして
重圧で重い質感を目指しました。
筆とナイフを両立させる技法もあり、絵画表現の自由さを楽しむことができます。
ナイフはシャープで硬質な表情に向く
筆はナイフよりも精密に細部を描くことができるし、
1回で塗れる絵具の層が、反対に、ナイフは金属でゴツゴツした描具であるから、
画面に力強い効果をつくり、マッス(塊)や面で物を表現するのに向く、
シャープで硬質なタッチを描くのに、ナイフは欠かせない道具です。
ナイフは絵具を押しのばして絵具の表面を滑らかにするので、
筆で塗った面よりも光の反射が大きく、新鮮な印象が強い。
人工的なもの、硬いもの、重量感のあるものはナイフで、またソフトで温かなもの、
軽いものは筆で、というように、対象の質や表現方法によって、ナイフと筆を使いわけることもできる。
ナイフを選ぶポイント
ナイフには、描くためのペインティングナイフと、パレット上で絵具を煉ったりするパレットナイフ、固まった絵具をはぎとるスクレーパーなどがある。
ペインティングナイフは、メーカーにより10~20種あるが、1~2本揃えるならば刃1.5㎝くらいの中型と、それより小さいものとで足りる。
弾力があって、腰の強いものが使いやすい。
何種類かを実際に使ってみて、ナイフの特徴や自分の使い方の癖をのみこむことだ。
そうでないと、つい絵具を厚塗りしすぎたり、ギャンバス上でこねまわしすぎたりする。
まず、使いこなせるように、ナイフに馴染むことだ。
ナイフで描いた面は、絵具のつきが悪い
ナイフで描いた面は、筆で描いたものに比べ早く、より均一に乾燥する。
しかし、平滑で固い感じの画肌になるので、キャンバスや下の絵具へのくつきが悪いと、
数年とたたないうちに絵具層が浮き上がって剥離することがある。
また、ナイフによる平滑な絵具の層は、そのあとのせる絵具のつきも悪くなる。
また、層間剥離を起こす原因にもなるので、使用には充分な注意は必要です。
キャンバスにじかにナイフで描くことや、ナイフだけで厚塗りすることは避けた方がよい。
描画中は、筆とナイフを交互に使用したい。
平滑な面に描き加えるときはサンドペーパーをかけて絵具のつきをよくするなどの工夫が大切です。
ナイフによる表現のいろいろ
●練る
絵具と画溶液などを、パレット上やキャンバス上で煉る。
とくに画溶液やシッカチーフなどの乾燥剤を練りこむときは、絵具と均一に混ぜることが大切。
●塗る
ナイフのもとまでキャンバスにおろして、広い面を塗ったり、
ナイフのもとまでキャンバスにおろして、広い面を塗ってたり、
ナイフの先だけ弾力を生かしながら小さな面を塗ったりする。
●線を描く
ナイフのエッジに絵具をのせて引いた線は、筆の線とは違う勢いとシャープさがある。
●ひっかく
ナイフの先や、エッジを立ててひっかく。
●削る
描き直しで削るほか、削ることによって下の色層を出して調子を深める。
まとめ
大作を描く画家にはナイフを愛用している画家は多く存在しますが、
最近の画家たちの制作傾向をみてみると、
昔に比べるとナイフだけで描く画家は少なくなっています。
ナイフを使う技法は、マチエールに魅力があり厚みが出ます。
そのぶん乾燥には時間を要するので、メディウムを混ぜることをオススメします。
筆とナイフを上手く使い分けて、独自の表現を楽しんでみましょう。