グレーズと言えば、グリザイユ画が有名ですし、
グレージングワニスというグレーズに使われるオイルも販売されているほど、
古くから画家たちが使ってきた技法の一つです。
その中でも、特にグレーズ技法を使って活躍した画家たちと、
初心者でもグレーズに使えるオイルを紹介します。
空気を表現する
近代の巨匠で、グレーズ技法を駆使している画家にターナーがいます。
ターナーは19世紀イギリス最大の風景画家として数多くの名作を残しました。
雨や蒸気、速度など、光と空気の輝かしい表現は、のちの印象主義にも大きな影響を与えています。
白の明るい地に、ローアンバーやバーントシェンナなどの褐色でおつゆ描きの下地を描き、
主張したいところを厚塗りして盛り上げている。
そのあとはほとんどグレーズを重ねて色彩の深みを出し、空間の広がりを表現している。
インパストやタッチを強調する
17世紀オランダで活躍したレンブラントは、独特な光と影の描写で、写実的な名作を生み出しました。
レンブラントは常に、厚い不透明な明部と透明な薄塗りの暗部を、暖色と寒色を対照させて描いています。
完成近くまで描き込んだ絵を充分に乾かしたのち、ごく薄く溶いた黒か褐色を、画面全体にグレーズして色を抑える。
そして、明るい部分や顔などのグレーズを、布で慎重に拭き取り、さらに細部の描き込みをします。
グレーズは、インパスト(厚塗り)のくぼみや、盛り上げたタッチのすき間に残り、いっそう立体的な効果を出している。
ほかの素材との併用で幻想性を表現する
グレーズ技法は薄い絵具をかけるため、筆やナイフの描き込みとは違って、偶然の美しさや効果を得やすい。
グレーズしたあと、さらに布や指で拭いたり、タッチを加えることによって、複雑な色調をつくれます。
その上にパステルやコンテなどの油絵具以外の材料を用いて、異質なマチエールと色調を重ねるという
油絵具だけでは表せない独特の表現も可能です。
ルドンは、きわめて個性的で幻想性の高い素描や版画を数多く残しています。
ルドンの作品はシュールレアリスムの先駆けともいわれています。
中心になるテーマを鮮やかなパステルで強調し、背景や細部を油絵具の薄塗りやグレーズ技法で描かれている。
グレーズした光沢のある油絵具の色調と、マットで柔らかいパステルの色調が生む神秘的な空間は、幻想的なテーマをみごとに表現している。
溶き油の種類と選び方
油絵具は、チューブから出したままでも描ける。
しかし、絵具によっては硬く描きづらかったり、発色が悪かったりします。
また、同じ絵具でも、溶き油の加え方によって、描き味や色味がまったく変わってしまう。
このように、絵具の練り調子を整え、発色と流動性をよくして、丈夫な画面をつくるのが、溶き油の役割です。
・下描きは揮発性油を多めに使い、仕上げは乾性油を主に使う
揮発性の油は乾きが早いが、絵具の艶がとれ、カサカサした画面になります。
反対に、乾性油は空気中の酸素と結合しながらゆっくりと乾き、乾燥後は顔料の粒子を包んで保護する役目をもつ。
下描きのときには乾燥が早い揮発性を多めに使い、仕上げに近づくにつれて乾性油を多くしてゆくのが一般的です。
・溶き油の種類と特徴
●揮発性油
テレピン
・乾燥 早い
・特徴 松脂を精製したもので、空気、光、温度で黄変する。
ぺトロール
・乾燥 早い
・特徴 石油を原料としたもので、乾燥後の艶はまったく消える。
●乾性油
リンシードオイル
・乾燥 やや遅い
・特徴 光により黄変するので、ホワイトや淡色にはあまり使用しない。
揮発性油を30%ほど加えて使用。
ポピーオイル
・乾燥 遅い
・特徴 単独だと亀裂が入りやすく堅牢性がやや劣る。
初心者には扱いやすいオイル。
スタンドオイル
・乾燥 遅い
・特徴 リンシードを加熱重合したもの。
乾燥が遅いが、堅牢性大。
単独で使用せずにほかのオイルと調合して使う。
まとめ
グレーズ技法は初心者からでも実践できる描きやすい技法です。
オイル調合は、スタンドオイル+リンシードorポピーオイル+テレピンorぺトロール
容量は自由ですが、基本的にスタンドオイル1対リンシードオイル1+テレピン2で調合し、
必要であれば、樹脂を1容量足したり、揮発性油で濃度を調節すると良い。
画家の描く絵によって自由なので調合は自分の経験で決まってきます。
絵具の量も同じく人によって違います。
経験を重ねて自分独自の技術を持てるようになりましょう!