「抽象」で表現した巨匠を紹介

抽象画と聞いても、見たことがない人が多いと思います。

日本では、一部の人々しか見る機会がないようにも思いますが・・・

伝統を重んじる日本の社会に、あまり受け入れられていないのが本当のところかもしれません。

現代美術館や美術ギャラリーで扱っているくらいで、美術画廊や百貨店のギャラリーでは見かけません。

日本ではあまり売れないし、画廊も取り扱いたくないといろんな事情もあるのでしょうが・・・

最近は現代美術館も、抽象芸術に力を入れているみたいです。

 

「抽象」で表現した巨匠の絵画を紹介

抽象絵画の時代や種類もたくさんあるのですが、ここではアメリカとヨーロッパで活躍した20人の画家を取り上げてみました。

抽象絵画の見方や説明は難しいのですが、簡単に見ていきましょう。

抽象絵画は、大きな作品が多く、見る人が絵の中に入っていけるように、大作で描かれているものが多いのも特徴的ですね。

抽象絵画は何より見たときの、自分の感覚と考える力が必要です。

感情を受け取るという部分が、全てと思ってもいいかもしれません。

また物質的、色彩的であるため、感覚的に見る遊びのように感じるところもあります。

 

「抽象」を描いた・ブリジット・ライリー

眼の錯覚を利用して、見る人を強烈に刺激する作品です。

正方形の白と黒の相対作用を通じて、画面が揺らぐような錯覚を起こさせるのは、オブ・アートの特徴です。

作品の要素はライリーにとって、樹々や雲、丘と同じ自然の一部なのです。

 

「抽象」を描いた・モンドリアン

単純な黒の格子模様を、ところどころ原色に塗り分けた大胆な幾何学的構図、モンドリアンの絵画につきものの立体感や曲線抜きの作風を創りあげました。

単純きわまりない要素(直線と原色)で絵画を構成したいという願いから、完璧に釣り合いのとれた構図が見つかるまで、試行錯誤をくりかえすといっています。

目指すのは、普遍的秩序を反映する、統制のとれた客観的美術の創造と純粋な線や色彩の使用を特徴とする方法でした。

 

「抽象」を描いた・マーク・ロスコ

ロスコは見るものを、徹底した色彩体験に浸からせたいと願い「大作を描くのは人が絵と親密に触れ合える状況を創りたいから。大きな絵ならじかにやりとりできる。中に引き入れられる」と語っています。

ロスコは抽象表現主義の重要作家で、一切のフォルムと無縁のその作品は、到達不能な人間心理の神秘に究極的な応答を求める運動の神髄を強く訴えかけています。

 

「抽象」を描いた・ヴィクトル・ヴァザルリー

遠近法的に視覚をかくらんし、画面が動くような錯覚を引き起こさせています。

見つめていると、不思議と色分けされた形が動くような気がしてきます。

ヴァザルリーはオブ・アートの先駆者で、絵画、彫刻を問わず、視覚への働きかけ方に工夫を凝らし、鑑賞者に錯覚を起こさせるアートです。

 

「抽象」を描いた・サイ・トゥオンブリー

トゥオンブリーの作品は、理解不能、あるいは説明不能なものをあえて表現しようとします。

絵画の構図に対する伝統的な定式、思想にはまったくとらわれていません。

創造への衝動が具象的な形をとらずに、浮上したありのままの姿を尊重しています。

 

「抽象」を描いた・バーネント・ニューマン

ニューマンは伝統的な絵画の技法を捨て、一様に塗った色彩の非対称な部分間に、純粋な緊張感を創り出すことを目指しました。

アメリカ抽象表現主義の画家の中でも、とくにミニマリズム(無駄をはぶいた最小限主義)の傾向が強く、美よりも神秘性のある抽象をめざしました。

鑑賞者がただ絵を見るだけでなく、色彩と壮大なスケールを伝える高度な精神性と神秘性を感じることを願っていました。

 

「抽象」を描いた・サム・フランシス

抽象表現主義の重要作、現実の世界に対応するイメージは見当たらないものの、ある種の感覚、動き、雰囲気が捉えられています。

フランシスの描きたい世界は、色彩の強烈さが精気を生み、たかぶる感情が形の縁をうめつくし、輪郭のない色彩と現実に縛られない世界でした。

フランシスは、油彩と水彩の優れた手腕を発揮しました。

 

「抽象」を描いた・モーリス・ルイス

下塗りを施していないキャンバスに薄く溶いたアクリル絵の具を流しこみ、ギリシャ建築の柱にもにた垂直に絵具をしみこませた作品。

ルイスはこの作品で、キャンバスの繊維に文字通り絵具をしみこませることにより、形や色を排除し、純粋な色彩のみを扱うまったく新しい描法を開発しました。

筆後をみせずに色彩を浸透させ、画面の平板さを強く意識させるこの手法は、カラー・フィールド絵画の一角を占めます。

 

「抽象」を描いた・ジョセフ・アルバース

4個の黄色い正方形には、かすかなゆがみがあり自由に浮遊し、今にも画面の外に出てきそうな感覚さえ感じます。

アルバースの作品の中でも特に名高いこのシリーズは、混じりけのない色彩で描いた正方形から成り立つ、目の錯覚を起こしそうなところはオプ・アートと関わりますが、絵具の塗り方、色使いの点でカラー・フィールドの絵画にもつながります。

 

「抽象」を描いた・ゲルハルト・リヒター

1932年に東ドイツで生まれたリヒターは、東西の渡航が禁止される寸前の61年に西ドイツに移動しています。

「フォットペインティング」や「カラーチャート」「グレーペインティグ」多様な作風を確立し、交互に制作します。

本作は、「アブストラクトペインティング」で、見るものを作品の世界に没入させます。

リヒターは現在のピカソと称されています。

 

「抽象」を描いた・アルベルト・ブッリ

ブッリは古びたぼろとなり、いったんはゴミとして捨てられ裂けた布を縫い直し、絵具を塗りつけた作品は、若いころに医師として第2次世界大戦に従軍し、血まみれの包帯を巻いたり、傷を縫い合せた経験がこの作品を作るきっかけとなりました。

この絵は伝統的な制作概念を拒み、新しい素材に刺激を求めた戦後抽象美術運動「アンフォルメル芸術」の思想を反映したものです。

 

「抽象」を描いた・アド・ラインハート

十字の聖なるイメージの抽象化が、色の表現力を最大限まで高めています。

ラインハートは絵画の本質をきりつめ、究極を極めました。

純粋な境地を表現できるのは、抽象美術以外にないと言っています。

 

「抽象」を描いた・ジャクソン・ポロック

ポロックはイーゼル絵画を放置し、伝統的な遠近法と訣別した点で、国際的な視野から見ても、戦後美術の記念碑と呼ぶにふさわしい、エネルギッシュな描法と表現の自在さは、抽象表現主義の特徴です。

ポロックの作品は、成り行き任せではありません。

本人も「僕は、気持ちを絵で説明するのではなく、外に表したい・・・・絵具の動きは思うままに操れる。始めも終わりもないように。そこは偶然の入り込む余地はない」と語っています。

 

「抽象」を描いた・フランク・ステラ

1936年生まれのステラは、抽象表現主義の激しい筆使いや情動と距離を置きます。

幾何学的または規則的な線と、むらなくフラットな色面による一連の絵画を制作しています。

表現を最小限に切りつめる手法を確立しました。

 

「抽象」を描いた・ピエール・スーラージュ

黒い大きな塊が、白く小さな光と青による対比でさらに存在感を増し、作品の超越性と静けさを添えています。

1946年からスーラージュは、故郷オーヴェルニュ地方に数多く残るロマネスク彫刻や、先史時代の巨石遺跡を偲ばせる抽象絵画を描き始めました。

作品は光沢仕上げの革のようなツヤのある黒の太い帯が、明るい色彩を背景に公さくして格子状をなすものが多いのが特徴です。

 

「抽象」を描いた・ルーチョ・フォンタナ

黄の単色で塗ったキャンバスに4ヵ所、作家はナイフで鋭い切込みを入れ、印象的ではあるが何を意味しているのか?

最大の関心は空間という概念にあり、切込みを入れその奥をみせることで、作家が伝統的な絵画の形式を拒否していると言えます。

作品に奥行きをもたせ、無限を感じさせています。

 

「抽象」を描いた・イヴ・クライン

IKBはクラインが自ら調合し、特許も取ったインターナショナル・クライン・ブルーの略称、色の鮮明さは、青の顔料に合成樹脂を添加して得たものです。

女性モデルにクラインブルーを塗り、自作の交響曲に合わせ、作者の指示通りキャンバス上に引きずりまわして作品を作っています。

作品の大半は、クラインの大切なブルーで塗られ、その青から独特の精神性と開放感が伝わってきます。

 

「抽象」を描いた・デ・クーニング

力のこもった素早い筆の運びが重ねる絵具の層から、イメージが浮上がってきます。

デ・クーニングは抽象表現主義の中でも、純粋な抽象のみに作品を限定せず、常に人間(特に女性)の姿を主題にすえています。

彼の作品の多くは、物質を視覚的に破壊、分解された物質のような表現でもあります。

 

「抽象」を描いた・アントニ・タピエス

絵の具を厚く塗った表面に切れ目や裂け目を入れて、寂しさや怒り、はかなさ、過ぎ去った時間などを表しています。

部分的な破壊を通じて、美と洗礼の気配も伝えています。

絵の具の傷跡が暗示する時の経過こそ、タピエスの作品に力を与える重要な要素の一つだと思います。

 

「抽象」を描いた・カジミール・マレーヴィッチ

マレーヴィッチは、形と色の徹底的な純化を目指すシュプレマティスムの創始者です。

マレーヴィッチにとってこれは単純な芸術的感興で、本人の言葉を借りれば「非・対照的感覚」の表現でした。

白い背景に赤い正方形をえがいたこの作品で、抽象画の限界を極めます。

 

まとめ

以上20人の抽象画家を紹介してみました。

僕はロスコとスーラージュの作品が昔から好きです。

抽象作品は1点だけでは、なかなか理解しにくいと思いますが、作家の作品をまとめて色々見ることができれば理解も深まると思います。

そのような巨匠個人の企画展などがあれば、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

結構楽しめますよ!

・「マニアックなこだわり」が絵を楽しくする!

・マルセル・デュシャン 「階段を降りる裸体NO.2」

・衝撃のフェルメール盗難事件!!

・「風景」を描いた巨匠を紹介!NO1

・「モネ」印象派の純粋な体現者

・「千利休」抽象的な美の世界

ABOUTこの記事をかいた人

画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。