風景デッサンの基礎知識

静物画や人物画と違い、風景画を描くのは難しいとされています。

静物や人物は、目の前にあっても自分より小さい空間や、自分と対等としての同じ空間に存在しているからです。

だが、風景は広大で遠近があり、画面に描くのにも描く範囲を決めるのが難しい。

そして、風景の中に何が見えているのか、何をどう感情表現に結びつけるのかなど、描く側として迷うこともあると思います。

まず、デッサンを始める前に、ここで述べる3つのことを知っておくと、風景画を描きやすくなると思います。

 

モチーフの発見

よい題材を選ぶ

一口に風景画とは言っても、風景画の対象になるモチーフ(題材)にはいろんな場面があり選び方がある。

都会や田舎、海辺や高原など、場所だけでも多様にあり、選び方にしても、近景から遠景までの広がりを描く、山や建物だけを描くなど、これもまたさまざまな選び方ができます。

動機や出会い方を考えても、身近な風景の中に、造形性などを再発見する日常的風景と、見慣れない造形性などの中に、心理的愛着を探る非日常的風景の二つがあります。

このように風景を描く場合、題材に事欠くことなく、何を描くかも自由ですが、多くの選択肢のなかから、よい題材を発見することは重要となる。

どのような風景でも、初めて、描く対象として見えたもの珍しさや、きれいだからなどぼんやりした、粗雑な感動のみに左右されていては、興味は持続しにくいものです。

 

モチーフとの出会い

大切なことは、十分に注意を集中させ観察することによって、それらの中に見つけうる造形性や、自然の神秘に対する驚きなり発見することです。

それぞれが良いモチーフの発見と出会いです。

何の特徴もなく見える、だだの町並みや田園の風景であっても、視点を変えてみることや、集中して観察することで、光と影の織りなすドラマを感じたり、自然のリズムやハーモニーを発見したりすることができる。

モチーフの発見とは、外にある物理的な風景のみの問題ではなく、我々の見方や感じ方であるともいえます。

現実には探していく時点で、道の真ん中であったり、電柱や異質なものがあったり、木や建物が邪魔していたりと、絵ハガキのように、目をさえぎるものない、整った描きやすい環境は、ほとんどないといっていいでしょう。

しかし、問題は、何より野外の自然の光や風の中に身を置き、変化する自然を感じながら「描きたい」と感じる風景モチーフと出会うことです。

どのような風景でも、十分に観察し、風景の中にある美しい様子を見つけることから風景デッサンは始まる。

 

モチーフとの対話

デッサンは、観察や訓練という意味でも風景との対話であるといえる。

いいかえれば、我々は普段風景を何気なしに見たり眺めたりしており、生活の中で当たり前に存在する環境として受け止めていることが多い。

何らかの目的を持ってみることで、初めて自然や風景に積極的に接することになります。

ここでは「描く」という行為を通して、その中に存在するさまざまな事実に気づき理解することになるでしょう

まずは、目に映るただの映像としてではなく、風景の中の一つ一つに注目して、スケッチやデッサンなどの、忠実な写生描写を進めることが必要となる。

そうすれば木々や建物、地形や光などが語りかけてきて、多くのことを教えてくれます。

これらが対話の第一歩で、心から対話していると感じるためには、目的を持ってスケッチやデッサンを繰り返しつつ、理解を深めていくが、観察と描く行為に没頭していければ、それに息づく、生命までも感じるようになる。

生活のひとコマのような風景の律動を感じるとき、本当に自然が語りかけてきてくれる対話として、成立するのではないでしょうか。

そして、そのためには、静かな音を聞くとき、耳を澄ませるように、目と心を十分に集中して、澄ましておかなければならない。

そうすれば、対象が持つ美の核心にすら触れることができる。

 

観察と歴史

イタリア・ルネサンスのレオナルド・ダ・ヴィンチ、北方ルネサンスのデューラーヤン・ファン・エイクなどの絵画に見る風景は、驚くほど緻密な観察記録やスケッチに基づき表現されています。

貴重であった画材を慎重に扱うように、対象の一つ一つをも大事に扱い、観察した、彼ら巨匠の態度には、描くことに対する祈りにも似たものを感じる。

絵画表現には、必ずしも再現的描写性が必要とはいえないが、先人の懸命なまでの写実性の研究には大いに見習ところがある。

19世紀のフリードリッヒ、コンスタブル、ターナーらによる風景画の成立から、バルビゾン派、印象派を経て、フォービズムやキュビズム、そして抽象へと時代が下るにつれて、芸術としての風景画の位置づけや、表現も大いに変化してきました。

しかし、自然への畏敬に基づいた風景への興味や、それらに対する研究も、ルネサンス期や19世紀の風景画成立期のみにとどまらず、近代の抽象画家や現代美術家に至るまで、多くの作家によって脈々と続けられてきたと言える。

一口に風景のデッサンと言っても、自然の中にある形態や調子の見え方、また、それらの中に息づく曲線や直線的な線の魅力などは、とらえよう(目的)によっては、表現の仕方もさまざまです。

しかし、時代の表現は変わっても、画面上には、線の調子の二つの要素しか存在していないことに変わりはありません。

彼ら先駆者の態度の態度と同時に、風景の中にある魅力をどのような目的を持ち、どのように観察し、どのように、画面の線や調子に置きかえているかを勉強することは大切な事です。

 

まとめ

風景画を描く場合、ここで紹介したこの3つのことを念頭に置いて、デッサンから始めていきましょう。

モチーフを発見して、その中でどんなストーリーを演出するのか、その風景をどのような目で見て、観察し、風景画として制作していくのかを念頭に置きながらデッサンを描いて行く。

実際現場で描くときは、細部の描写を細かく描いておく必要がある。

風景画の制作はこのようなスケッチを手掛かりに行うからです。

人物画が描ける人でも、風景画を描けないのは、風景との対話や叙情性と詩的ロマンなどに不向きで、空気遠近法などを上手く表現できないからだと思います。

風景デッサンをする場合は、これらのことも少し考えて描くようにした方がよい。

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画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。