「造形とリアリズム」で絵を描いた巨匠を紹介 1.

古代ローマの時代から絵画は造形的に描かれてきました。

ルネサンス時代から遠近法と解剖学の発展により、絵画は浮彫的なものから立体的に発展しました。

それにより、さらにリアリズムが発達します。

ルネサンス後期になると、絵の具の発展により厚塗りとタッチによる絵画が流行、線を無くし色彩で柔らかいタッチで描かれるようになります。

バロック時代になると、さらにリアルな造形表現で、画面から飛び出てきそうな迫力ある絵画になり、油彩画の絶頂期をむかえます。

ここではルネサンス時代とバロック時代の「造形とリアリズム」で絵を描いた巨匠を紹介します。

 

造形表現で絵を描いた巨匠その1

造形を科学的に研究し、実現したルネサンスの時代の偉大な巨匠たちを紹介します。

彼らがいなければ絵画の歴史は100年遅れていたでしょう。

レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロラファエロジョバンニ・ヴェリーニ、ベロネーゼ、ブロンズィーノなどの巨匠が代表的です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ

レオナルド・ダ・ヴィンチは人体解剖を誰よりも最初に行った画家です

彼は自然の中に同じ色は存在しないと言っています。

レオナルドは、肌の陰影色の幅、光色の幅を写実的に捉えた最初の画家でした。

この作品は想像以上に小さいのですが、とても大きな絵に見えます。

それだけ画家の絵の力量が、ただ者ではないことを物語っているのです。

 

ミケランジェロ

ミケランジェロのこの作品はルネサス時代の、典型的な造形美の象徴と言ってもいいでしょう。

彼の彫刻家としての造形観を見せつけるような完璧な作品です。

この華やかな色彩も多くの画家たちに影響を与えました。

この作品は、珍しくテンペラ画で描かれています。

 

ラファエロ

ラファエロのこのレオ10世の肖像画は当時あまりにも美しく、見事な造形でローマで話題になり、世界中の画家のお手本になりました。

このころから、油絵の具の練り合わせ剤により、絵具にボリュームが出始めます。

ラファエロの「小椅子の聖母」はあまりにも有名ですね。

 

ジョバンニ・ヴェリーニ

ジョバンニ・ヴェリーニは、ヴェネツィアを代表する大画家です。

彼の造形のすごさに実物を見た人達は、この空間遠近法にくぎづけになってしまいます。

額縁に合わせて描かれた絵画は、素晴らしい造形作品の傑作です。

 

ベロネーゼ

ルーブル美術館にある、世界最大の油絵を描いたベロネーゼは空間遠近法の達人です。

彼の描く建造物はあまりにもリアルなため、まるで見る人を絵画の世界に招いているように思えます。

彼の造形は見事で、大画面のキャンバスの大きさに圧倒させられます。

昔からヴェネチア派の画家たちは、キャンバスによる大作を得意としてきました。

ヴェロネーゼは、ミケランジェロ、ラファエロ、ティッティアーノのいい部分を集めたような画風でとても魅力的な作品を描いています。

日本であまり知られていないのが、不思議ですね。

 

ブロンズィーノ

ブロンズィーノの作品は、まるでギリシャ彫刻のような美しさが特徴です。

実物より人体を長く引き伸ばし、デフォルメしたマニエリズムの時代の画家です。

後の18世紀のフランスでブロンズィーノの絵は、画学生たちのお手本としてだけでなく、多くのアカデミーの人達の憧れの画家だったのです。

エレガントで美しい色彩と質感、説得力のある構図と美しく描かれた人物は、ルネサンス精神の復興を呼び覚ますのでした。

 

造形表現で絵を描いた巨匠その2

バロック時代になると、リアリズムを描く傾向が強くなり、肖像画や風俗画などが流行ます。

光と陰影の絵画になり、さらに人々はそのリアルな表現に驚くのでした。

王侯貴族だけでなく、一般市民の中でも絵画の収集が盛んになる時代でもありました。

この時代が油絵の全盛期時代だと言えます。

ルーベンスヴァン・ダイクカラヴァッジョレンブラントベラスケス、スルバランなどが代表的です。

 

ルーベンス

ルーベンスはヨーロッパ中の王侯貴族が、競ってその絵画を収集した大画家です。

彼の造形は、イタリアの巨匠から多くを吸収し、フランドルの伝統と合わせ自分独自の絵画表現に到達させています。

彼の絵は量感がありハイライトが多く、ルネサンス時代の絵と比べると、画面から飛び出ています。

この美しい肌は、絵具にミルクと血を混ぜて描いていると噂されたほどです。

 

ヴァン・ダイク

ヴァン・ダイクの作品は人物の表現の美しさと、画面の引き締まった構図が見事です。

彼は絵具を自由に使う魔術師のように、人物に気品と魅力を与え優美な作品に描き上げます。

肖像画部門で、歴代人気ナンバー1の大画家です。

 

カラヴァッジョ

ユデットを描いたこの作品は、あまりにもリアルに描かれて当時センセーショナルを巻き起こした作品です。

カラヴァッジョは、暗い闇の中にハイライトを使って人物に注目が集まる方法を使っています。

このスポットを当てた映画の一コマのような効果は、レンブラントに引き継がれます。

 

レンブラント

レンブラントはまれにみる天才で、カラバッジョの絵にドラマチックな効果を、さらに発展させた作品を生み出していきます。

光を自由にあやつり、陰影も作り変えています。

またその効果を最大限に発揮しているのは、彼の絵具の使い方なのでしょう。

どのように描いているのか、解明できないほど、多様な技法を使っています。

 

ベラスケス

ベラスケスの最大の魅力は人物たちの動きや性格、画面の中の空気感です。

この作品の逸話でサルバドール・ダリがインタビューを受けた話ですが、リポーターが「プラド美術館でもし火災があれば、あなたはどの作品を救いますか?」という質問にダリは「私は、・・・空気を救う!!」と言いました。

リポーターはこの答えに理解できなかったようですが、後の対談でダリは「ラスメニーナスには空気が描かれている。すなわちこの絵は世界最高の絵画だ!」ということを言っていたのです。

 

スルバラン

この時代に静物画という、単独の分野が成立したと言っていいでしょう。

物を描く事は当時としては、レベルの低い仕事だと思われていましたが、画家はそんなことより、描く楽しみを優先しました。

スルバランのこの静物画は有名で、壺に生命観を感じます。

まるで生きているようで、壺と会話できそうですね。

空間の不思議な力、物と物との微妙な間隔により生み出されている関係性が、見ている人の心を飽きさせない魅力があります。

 

まとめ

ルネサンス後期からバロックまでの造形を描く画家たちが、リアリズムを描いていく工程を見てきました。

絵画の造形の歴史は油絵の歴史そのものです。

バロック以後にその伝統が崩れ始めます。

画家たちは、絵の質にこだわりを無くす時代に突入していきます。

続きは、ロココ、新古典主義、近代に・・・

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画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。