ラファエル前派の魅力

19世紀のイギリスの絵画革命は、旧来のアカデミズムから離脱した若者たちによって生み出されていきました。

画家であり批評家のジョン・ラスキンによって擁護されたラファエル前派となずけられた若い画家たちの運動は、

イギリス絵画に新たな芽生えを促しました。

アカデミズムの絵画世界との対立したラファエル前派の画家たちの魅力とは

いったいどのようなものだったのでしょう。

今日僕はラファエル前派の展覧会で、彼らの絵から崇高な思想の大切さを学びました。

 

ターナーから始まった近代の絵画

西洋近代の幕開け19世紀のヴィクトリア朝は、産業の発展が目まぐるしい時代でした。

蒸気機関車や蒸気船が都会と田舎を行き来し、人々の暮らしに新たな刺激をもたらしていたのです。

そのような時代にイギリス絵画にも、彗星のごとく現れた一人の天才がいました。

その画家の名はジョセフ・ターナーです。

彼が描く風景画は、古代の巨匠に匹敵する実力があり、

その色彩表現は印象派を先取りした自然主義的感覚を全面的に出した絵画でした。

目に映る現実の出来事を官能的に表して、感情そのものを絵具の塊で見せようとしたその絵画は

鑑賞者に不思議な感覚を覚えさせた。

批評家ですら評価すべきか、批判するべきかわからなくしたその絵画は、

その時代の次元を超えた世界に到達していたと言えます。

ターナーから始まった近代絵画の時代は、

さらなる可能性に満ちた世界を生み出していきます。

 

中世の絵画と物語の世界

ラファエル前派が誕生した時代、社会は中世末期の物語の世界に酔いしれていました。

それは、純粋な恋愛と宗教や神話の世界、若い男女の愛と死がテーマでした。

詩人や作家によって蘇らされていく中世の時代の物語は、若い画家たちに大きな影響を与えます。

絵画の世界でも、ルネサンス初期の絵画に注目して、純粋な線の表現方法を見つけ出していきます。

線による魅力に注目して、塗り絵式ともとれる単純な絵画世界は、初期ルネッサンス時代の絵画のように

半平面的であるが、色による新らしいテクニックを生み出している。

アカデミズムの優秀な画家たちに比べるとその絵画デッサンはとても及ぶものではないが、

そのデッサンは独特のぎこちなさと、デフォルメ、自由な描写、美しい空間装飾によって埋め尽くされています。

感情を全面的出した情熱的な絵画は、ロンドンの人々に新しい刺激を与えました。

 

写真を使ったリアリズム

19世紀になると写真を使った絵画が生み出されています。

写真を使って描く近代的絵画はこの時代にすでに描かれていました。

写真を使った人物画や風景画は、画家たちに新たな技術革命をもたらします。

今までは空想的な表現だったのに対して写真の技術を応用することで、

その絵画表現は現実に目の前で起きているかのような効果を発揮します。

彼らは物語の世界と現実的なリアリズムをミックスしたことで、鑑賞者に実在的なドラマ性を感じさせることに成功します。

ですが現実的なリアリズムを手に入れたことに反し、造形的絵画はより写真的平面に近づいていきます。

 

ロセッティの奇跡的な実力

ラファエル前派のなかでも中心的革命者だったロセッティ。

彼の絵画は奇跡的な魅力を秘めています。

ロセッティの絵画技術は、ロイヤル・アカデミーの画家たちの中では評価が低いものでした。

お世辞にもデッサン力でアカデミーのお偉いさんたちにはかないません。

ですが、彼の絵画にはとてつもない情熱と女性たちに対する熱い思いを感じます。

ロセッティはまるで15世紀の画家のような純粋さと、神秘的世界の創造主としてその絵画世界を描き続けていきます。

ロセッティは絵画技術よりも、その情熱の方が先に進み彼の筆を走らせていた。

画面を飾る装飾的なデザインや衣服の色彩は、女性のいきいきとした魅力をさらに引き出しています。

ほかの画家の絵に比べると、ロセッティの作品は異様なほど魂がやどっていることを感じます。

技術よりも魂が先立つロセッティの魅力は、ターナーに次ぐイギリス絵画の奇跡の1つです。

 

まとめ

今日たまたまクライアントと一緒に見たラファエル前派の奇跡展は、

19世紀当時の若い画家たちの絵画理念を想起させるものでした。

アカデミズムの伝統と新しい解釈の絵画の対立は、時代の新たな変化と密接な関係が感じられる。

産業革命の時代の人々の近代的思想の進化という大きな時代の流れに、ラファエル前派の絵画世界は新たな世界を見つけ出す

大きな手掛かりになっています。

ラファエル前派の絵画運動は、上流階級ではなく一般階級の人たちに希望を与えるものでした。

ラファエル前派の魅力は、自由な表現と鮮やかな現実を誇張した色彩にあり、

その絵画表現に当時の人々はターナー以上の衝撃を受けたのです。

ラファエル前派の画家たちからは、感情に任せた理想的な美の世界を

信じ続けることに大きな意義があることを教えてくれています。

・油彩画の「有色下地」で色の深みを増すには・・・

・「カラヴァッジョ展」を見て感じたこと

・「聖母マリア」の処女受胎思想

・最初の一歩から始まるアートの世界

・「ボナール」波乱を知らぬボヘミアン

・「油絵の描き方」を知れば独自の「スタイル」を作り上げることができる

・「名画」を共同で所有する新しい方法

・「ティエポロ」 偉大な伝統に育まれた画家

・「ポイントをおさえて学ぶ」と、楽しく絵は上達できる!

・自己肯定していくと早く成功する

・絵画で大切なのは色彩!

・ギュスターヴ・モローの「出現(サロメ)」との再会

・画家は「本質を見抜く力」が必要だ!!

・初めての絵画購入は・・・

・絵を描き続けるには強いメンタルが必要!!

・絵画の「テーマ」と「ストーリー」どちらも大切

・自分の感覚と感性を大切にして絵を描いていこう!

・油絵の具をどのように使うかは自分次第

・インスピレーションを得たときは、すぐに素描すること!

・ゴーギャン 「我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々は何処に行くのか」

ABOUTこの記事をかいた人

画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。