今日、久しぶりに美術館に行ってきました。
お目当ては、日本でも人気上昇中のフェルメールですが、僕は密かにレンブラントとロイスダールにも期待していた。
ところがこの2人の作品は1点も来ておらず、全体的にさみしい17世紀オランダの絵画展でした。
でも、2点のフェルメール作品と15~10年ぶりの再会ができて、嬉しい気持ちもあったのです。
特に、僕は「手紙を書く女」がフェルメール作品のなかで好きな作品で、今回で3回目の鑑賞。
そして、密かに「来ているかも?!」と、直感的に感じていたハブリエル・メツーの「手紙を書く男」が来ていて2回目の再会が出来てよかった!
フェルメール展
フェルメール作品5点
今回の目玉「手紙を書く女」、「取り持ち女」、「恋文」、「手紙を書く夫人と召使」、「マルタとマリアの家のキリスト」、「リュートを調弦する女」と5点もフェルメール作品を一度に見れる機会が来るとは思っていませんでした。
海外の美術館では、フェルメール作品は美術館でも評価が高く人気があるので、海外に貸し出すことを嫌いますが、日本にはよく貸し出してくれています。
決して安くない入場料
貸し出し料が高い分、入場料を取るのは仕方ないかもしれませんが、僕としては全体の作品の質をみるとCクラスでした。
やはり、17世紀を代表する先輩画家の作品をもう少し充実させてほしかった。
(この肖像は、フェルメールの自画像と言われている)
レンブラント、ロイスダールなどがなければ、オランダの展覧会は盛り上がりません。
レンブラントの弟子の、ヘラルト・ダウ、フェルディナント・ボル、ニコラース・マースは来ていましたが、やはり師匠の作品に比べると迫力に欠けます。
意外に大きな作品
マルタとマリアの家のキリスト
この絵はフェルメールの初期作品ですが、意外に大きいことに驚きました。
158.5×141.5㎝もある大きな絵。
作品はまだ未熟な時期のもので、手の大きさや全体のバランスなどが少しよくありません。
でも、絵の具の大きな取り回しによる筆のタッチは大胆で、彼の師の影響などを感じることができた。
取り持ち女
143×130㎝あるとは思っていなかったこの作品。
フェルメールの転換期の作品といえます。
「マルタとマリアの家のキリスト」から画力が上がり、フェルメール独自の画法の発見と関係している。
この絵は、全体的にぼかされていて、レンズの仕組みから得た知識を使い始めています。
筆や絵の具の使い方も変化が見え、フェルメールがあらゆる実験をこの絵に注ぎ込んでいる。
特に彼は、この絵にボイルドオイルを使いすぎた形跡を発見できました。
黄色い服着た女性の胸元に、絵の具の盛り上げられていますが、その部分が名画には珍しくチリメンジワになっていたのです。
これは、特にボイルドオイルによく現れる現象で、盛り上げる絵の具に大量に使いすぎたせいです。
修復はできないので、そのままにしておくしかありません。
2点の作品と再会
恋文
「恋文」は15年前くらい前に一度見ています。
この絵は昔盗難事件がきっかけで、ナイフで切り刻まれた作品です。
綺麗に修復されて、その記念に日本にやって来たので、思い入れのある作品でもあります。
こんな小さな作品にこれほどの光と影と空間、人物たちの一瞬の動きを描けるフェルメールの力量に、感服したのを今でも覚えています。
当時僕が目にしたときは、鑑賞者はなんと僕一人だったのですが、今日は30人ほどの人だかりの光景を見てなんだか嬉しかった。
「恋文」が修復されて本当に良かったと感じた一時でした。
手紙を書く女
「手紙を書く女」は、10年ほど前に見ていて、その美しさに惚れ惚れしたことを覚えています。
その時は、名作ぞろいで、ティッティアーノやヴァン・ダイク、エル・グレコ、サージェントと巨匠の作品も一緒に来日していたのですが、このフェルメールの作品は特に素晴らしかった。
この作品に注ぎ込まれた技術は素晴らしく、フェルメールの技術の素晴らしさを一番感じられる作品だと思えました。
この絵のための下絵がもう一枚あったはずです。
優秀な画家たち
フェルディナント・ボル
展覧会の入り口で僕を迎え入れてくれたのは、フェルディナント・ボルの作品でした。
彼はレンブラントの弟子で、優れたデッサン力がある画家です。
筆使いもうまく、色彩も豊な魅力ある肖像画を得意としました。
レンブラントの弟子たちは、髪の毛や衣服、顔の皮膚とすべての質感を描き分けることを学んでいますが、彼がいちばんそれを自由に描きこなしています。
大変素晴らしい画家でした。
ハブリエル・メツー
メツーの作品は、必ずフェルメールについてきます。
彼はフェルメールから影響を受けた画家ですが、その絵の美しさや美意識はまた違う魅力を持っています。
メツーの「手紙を書く男」は、若いころ僕は一度見ていますが、好きな作品です。
この美男子がとても絵になり、画集などで見るとフェルメールよりよく見えます。
ですが、今日実物を見比べると彼には癖があり、顔や腕の動きにかたさが少しあることで、動きがぎこちない。
これはメツーの描き込みすぎな点が問題で、彼は写実的に描き込まないと気が済まない気質であることを今日感じました。
フェルメールは、ペンを持つ手を軽く描いているが、メツーの手は少々顔とのバランスが悪い。
フランス・ハルス
この女性はハルスの初期の作品で、とても上品にきっちり描き込まれていました。
ハルスと言えば、あらい自由なタッチで人物を描く巨匠ですが、この人物の顔や衣服は綺麗な筆使いできっちり描き込まれていました。
特に首のレースの処理は素晴らしいく、上品で美しかった。
衣服の黒の使い方なども、確かな色が配置されていて見事としか言えません。
あっさり描かれたことを思わせるこの画法は、簡単そうで描くとなかなか簡単ではない。
人気の西洋絵画
名画の人気の高さ
今日展覧会を見に行って、名画の人気の高さに驚かされました。
フェルメールの人気もあるかもしれませんが、鑑賞者が17世紀の絵画や文化に興味と好奇心を持って、接していることを見ることができてとても嬉しかった!
絵をこのような人ごみの中で見るのは、絵を描くものとしては勉強しにくかったのですが、僕もこのような光景を見ることができてよかったと思いました。
これからどんどん、このようにあらゆる展覧会を増やしていってほしいものです。
絵画芸術に触れる喜び
僕は今回、作品と同時に鑑賞者も観察させてもらいました。
17世紀の油絵を初めて目にする人も多かったように見えた今回の展覧会ですが、多くの鑑賞者たちは17世紀の美術を気に行っていたように感じました。
展覧会場での会話や、記念品の販売コーナーでの人気ぶりには驚くばかりでした
特によく売れていたのが、ポストカードや、額縁に入ったフェルメールのコピーなどです。
やはり、その美しさに感動した人たちは、自分の住まいにも複製画を飾りたいと感じたのでしょう。
まとめ
展覧会に行くと、19世紀のサロンのようににぎわっていた会場。
少ない作品を大勢で見るのは少し大変でしたが、名画がこれほど親しまれていることに今回の企画の成功を感じました。
一点、銅板に描かれた小さな男性の肖像画の、素晴らしい保存状態には驚きました。
キャンバスより非常にいい感じで、まったく油彩の傷みなどがありませんでした。
他にも、オランダの女性画家の作品が2点展示されていて、これもなかなか珍しい作品!
いつもと違う楽しみを見つけることができたフェルメール展でしたが、新しい角度からどんどんいろんな展覧会をこれからも企画してほしいと感じた一日でした。
・絵が上手い人たちは、学んだことを時間をかけて実行している!!!