油絵具は描けば艶が出る絵具です。
油絵具は顔料を乾性油で煉ったものであるから、
画溶液を混ぜずにそのまま用いても艶が出ます。
本来、ツヤとコクのあるマチエールが描けるのが油絵のよさと特徴でもある。
しかし、水彩や日本画にはない油絵の量感とこくをもちながら、
艶のないマットな画面、という魅力も捨てがたいですよね。
油絵具の艶をなくし、かつ絵具と絵具のくいつき、
キャンバスへのつきもよい絵を描くにはどうしたらよいだろうか。
マットな画面に魅力を感じる人は参考にしてください。
絵具の余分な油分を厚紙に吸わせる
チューブから生のままの絵具を使わずに、絵具をいったん厚紙などの上に出して、
余分な油分を吸わせる方法があります。
こうすると、絵具の練り具合は固くなり、絵具自体の艶もなくなる。
ただし、豚毛などの硬い筆やナイフなどで描くこと。
絵具の固さに負けるような柔らかい筆などで描くと、
キャンバスや下の絵具層に絵具をくいつかせにくいし、
張りのある色味が出なくなります。
蝋や艶消し用メディウムを加える
蝋を混ぜて描くと、絹のような独特のマットなマチエールが描ける。
市販されている蜜蝋は、蜜蝋の分泌物を精製加工したものです。
蜜蝋の3倍くらいの容量のテレピンオイルを60℃で湯煎して蝋を溶かします。
これを絵具に混ぜて描きます。
混ぜる量は、絵具の容量の1~2%以内にしないと、
亀裂や剥離の原因になり、色味もくもりがちになってしまいます。
市販されている艶消し用のメディウムを用いるときも、使用量制限を守ること。
また、艶消し専用のオイルも市販されていますが、
このオイルは固まりやすい性質なのでなるべく早く使うことをオススメします。
固まってしまった場合は、お湯で湯煎して元に戻すようにする。
吸収性のキャンバスに描く
キャンバスの地塗りが吸収性の強い性質であれば、絵具の余分な油分や溶き油を吸う。
また、吸収した結果絵具のつきがよくなり、丈夫な画面をつくります。
吸収性キャンバスを用いて、蝋を混ぜて描けば、ほぼ完璧な艶消しのマチエールになる。
この手法は、13~15世紀にテンペラ画や油彩画に使われていた下地の1つです。
油絵は、絵具とキャンバスと描き手の技術
キャンバスの地塗り塗料は、油絵具の発色やつき、画面の耐久性に関わる非常に重要なものです。
地塗り塗装の条件は、以下の3点ある。
1・麻布に塗られた糊料(織目を固定し、油分が浸透するのを防ぐ働き)に、しっかり着くこと。
2・柔軟性があり、描きやすく、湿気や光などで変質しにくいこと。
3・油絵具とよくなじみ、発色や艶がよく、耐久性のある画面をつくること。
つまり、麻布にしっかりとつき、その上にしっかり油絵具を付着させるだけの地塗り塗料でなければならない。
弾力があって描きやすく、湿気や温度差などに強い丈夫なキャンバスであっても、油絵具のつきが悪ければダメです。
また、長い年月のうちに絵具層が完全に乾燥し古くなってゆくのに、キャンバスの地塗り塗料ばかりが丈夫であっても意味がない。
吸収性キャンバスの作り方
市販されているキャンバスは、ほとんどが油性のものです。
膠引きの済んだハーフメイドのキャンバスを使って、
艶消しの絵を描くのに最適な吸収性キャンバスを作ってみましょう。
●材料
1・白色顔料(チタニウムホワイト)・・・5
2・膠水(水10、膠1)・・・5~膠を水につけてふやかし2種鍋で弱火で加温して溶かす。
3・生石膏(ボローニャ石膏)・・・5
4・スタンドオイルまたはリンシードオイル・・・2
5・塗料用の豚毛の刷毛
6・泡立器
7・ボール
8・膠引きの済んでいるキャンバス
9・ぬるま湯~上記全容量の3分の1
●混色
1・白色顔料と生石膏をよく混ぜておく。
次に膠水を半量入れて固めに練り、残りの膠水でゆるくのばす。
2・油を点滴しながら、空気を入れないように泡立器でかくはんする。
料理用のかくはん器を使うとよい。
3・刷毛につけて、塗料が細く流れ落ちるくらいの粘りがよい。
ぬるま湯を加えて、固さを調節する。
●塗る、乾かす
この塗料は固まりやすいので、手早く薄く塗るのがコツです。
多少のムラができても気にせず、同じところを何度もこすらないこと。
塗る方向を変えて塗るようにするとよい。
塗っていくうちに、キャンバスがたるんでくるが、乾けばもとに戻る。
1・刷毛を塗料によくなじませ、たっぷり含ませて塗る。
2・刷毛の幅が1回塗り、塗料があまり重ならないように薄く、均一に塗る。
3・キャンバスの耳にも塗り、平らに置いて乾かす。
4・布がふたたび張ってきたら、2回目を塗る。
5・平に置いて表面が乾燥したら、立てかけて乾かす。
3週間くらいは乾燥期間をおく。
吸収性キャンバスに描くときの注意
普通の油性キャンバスに描くときよりも、少し鮮やかな色調で描くこと。
油分だけでなく顔料の色味も吸収されるからです。
また、描画の最初の頃は吸収性がよく乾きが早いが、
半乾きの状態が3、4日つづく。
しかし、シッカチーフなどの乾燥剤を使用したり揮発性油の多用は避けるように。
まとめ
私も以前マットな絵画を描いていた時期がありました。
吸収性のキャンバスにはテレピンよりもぺトロールの方がいいと思います。
蝋やマッドメディウム、エッグメディウムなどを使いこなして、
色々工夫してみることで、艶消しのの画面を実現することができますが
結構手間がかかるので、制作手順を決めておく方がよい。