この「友達はスフィンクス」を見てくれている皆さんは、美術館での絵画鑑賞で「観察眼を鍛えている」と思います。
絵画鑑賞は見れば見るほど、新しい発見があり巨匠たちの素晴らしさを感じることになりますね。
美術館でも絵画の解説はされていますが・・・・
今回は、「絵の伝統的な画面構成と複雑な構図」、「色彩の対比」などの巨匠たちの表現方法について見ていきましょう。
「グリューネバルト」の神秘的な色
「ベリーニ」の聖なる会話
「ラファエロ」の左右対称の構図
「ハルス」の大胆な色彩のコントラスト
「名画」の知識と見どころ 神秘的な色
- グリューネバルト
- キリストの復活「イーゼンハイム祭壇画」(部分)
- 1512-16年
- ウンターリンデン美術館蔵
グリューネバルトの生き生きとした幻想的な色彩の使い方は、当時の芸術家のなかではきわめてユニークなものでした。
当時の画家の多くは、特に宗教的な場面を描く場合には、たいてい写実的な色を用いたからです。
しかし、グリューネバルトは厳密な写実主義とは関係なく、劇的な、そして情緒的な効果を作り出すための手段として色を使用していました。
グリューネバルトの作品のなかでも、この「イーゼンハイム祭壇画」の復活するキリストの姿は、神秘的な色の使い方によって激しい劇的なイメージを作り出しています。
キリストはきらきら輝くオレンジと黄色の光背につつまれていて、そのためにキリストの肉体は青白く見え金色に輝いて見えます。
キリストの口および手のひらや脇腹の傷は深紅色の斑点として浮き出しており、彼の目は神秘的に赤く輝いています。
伝統的にキリストは黒髪で、その復活の画面では白い葬儀布をまとった姿で描かれていました。
しかし、ここでは背景の輝きによって、キリストはまばゆいばかりに美しい金髪の姿になっており、強烈な赤い布を身につけています。
このイメージは当時の鑑賞者にとっては、とりわけびっくりするものだったに違いありません。
「名画」の知識と見どころ 聖なる会話
- ベリーニ
- 「ムラノの祭壇画」
- 1588年
- 199.5㎝×299.5㎝
- サン・ピエトロ・マルティーレ聖堂蔵
15世紀の後半にイタリアの画家たちは新しい形式の祭壇画を手がけるようになります。
それはサクラ・コンヴェルサツィオーネ(聖なる会話)でした。
この名は、聖母子と聖人たちが1つの画面にいっしょに描かれたことに由来します。
新しいタイプの祭壇画は、しだいに従来のポリプティック(多翼祭壇画)にとって代わっていきました。
旧来の形式では、ベリーニの「フラーリの祭壇画」のように、人物が各パネルに分けて配され、別々の空間を占めていたのです。
ですが、「ムラノの祭壇画」でベリーニは聖なる会話の形式を採用し、聖母子が、聖人たちやひざまずく総督アゴスティーノ・バルバリーゴと同じ空間をしめています。
人物は大理石の檀上に位置し、背後には連続した風景が広がっています。
聖なる会話の形式は空間が連続しているため、一般に動きやすい身振りで結びつける人物関係がより密接に描けるようになり、ここでは、ひざまずく総督が、背後に立つ聖マルコによって守護されています。
総督の祈りは、片手を上げて祝福する幼児キリストに受けとめられ、画面右では、総督の名と同じ聖人アウグスティヌスが彼の方を向き、人物配置のバランスを完全なものにしています。
人物群のまとまりは、彼らをわくどりするかのような赤い幕でさらに強調され、彼らがともに静かにたたずみ信仰心に満たされているような親密な雰囲気を醸しだしています。
「名画」の知識と見どころ 左右対称の構図
- ラファエロ
- 「ガラテアの勝利」
- 1511年
- 294.5×225㎝
- ローマ ヴィラ・ーナルジーナ
盛期ルネサンス絵画のきわだった特徴の1つは、左右対称の構図にあります。
ラファエロはこの構図の達人で、一種の鏡像に似た手法でそれをこなしました。
多くの作品において、画面の両側で同様の動きや身振りを表現しましたが、ラファエロが異なる視点から描いている場合は、すぐにはそれとはわからないかもしれません。
「ガラテアの勝利」では、海の精ガラテアが中心軸となり、そのまわりをほかの像が回っています。
左前景のニンフと海神の動きは、画面右のカップルの身振りに繰り返されています。
ただし、後者は背中から見られている。
下のキューピッドはいちばん上のキューピッドの動作に対して、180度反転しています。
こうした構図を用いることによって、ラファエロは心地よいシンメトリーとバランスを生むだけでなく、人物のフォルムをさまざまな角度から描くことによって、鑑賞者に万能な視野をもたらしているのです。
この技法はある面で、彼の人体への関心を表現する手段だったといえますが、この関心はルネサンスの美術思想の中核をなすものでもあったのです。
「名画」の知識と見どころ 大胆な色彩のコントラスト
- ハルス
- 「痩せた警備隊」
- 1633-36年
- 209×429㎝
- アムステルダム国立美術館蔵
ハルスは特に色彩処理が巧みな画家で、そのことがいちばんよくわかるのは、市警備隊を描いた肖像画です。
そうした絵を描く場合には、色の単調さに陥ることなしに、黒く地味な服装をさまざまに表現することが課題となります。
この「痩せた警備隊」の細部描写では、ハルスは青とオレンジ色の飾り帯(サッシュ)を強調することによって、黒衣ばかりが並ぶことを救っています。
青とオレンジは補色であるため、互いに相乗効果を上げ、並べて配色することによっていっそう生き生きとしたコントラストを生み出しています。
ファン・ゴッホはこれを「電極」と呼んでいます。
この鮮明なコントラストに加えて、ハルスは白いレースと光沢のある黒いコートを対比させて、微妙な対照を作りあげているのです。
ハルスの手法は、画面左側の旗手におそらく最も明確に表現されています。
サッシュと背後の旗のオレンジが、淡いグレーのジャケットとみごとなコントラストをなしているのは、グレーに青をたっぷり混ぜせたためでしょう。
旗手のブーツにも同じ効果が見られ、この人物を見たゴッホは「なかでも、あの隅にいる、オレンジと白と青で描かれた男、あれほど神々しいまでに美しい人物はめったに見たことがない」と述べています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
巨匠たちの想像力豊かな絵画表現でしたが、なかでもドイツの画家「グリューネバルト」について、日本ではあまり知られていないのが残念です。
昔の画家たちは、規制が多い時代でしたが新しい表現を生み出し、新たな絵画の素晴らしい世界を描き続けてきました。
このような、過去の表現も取り入れながら、現在の我々もさらに新たな表現を生み出していけばいいのではないでしょうか。
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