「カラヴァッジョ展」を見て感じたこと

バロック絵画の巨匠カラヴァッジョの展覧会が開催されていたので勉強がてら観てきました。

日本初公開のユデットとリュート弾きを楽しみにハルカス美術館へ。

カラヴァッジョの絵は好きでも嫌いでもないので、あまり期待はしてなかったけど、

色々と学んだこともあり、私なりの鑑賞した感想を書いておきます。

 

期待していた「ホロフェウスの首を斬るユデット」だったが・・・

「ホロフェウスの首を斬るユデット」この強烈な絵は絵画史上

もっともリアル感あるグロテスクな絵で有名です。

この絵を描いた画家カラヴァッジョは、イタリアではレオナルド・ダ・ヴィンチより人気があり、

お札になっているほど国民に愛されている画家なのです!

(見たかったのになー(>_<)・・・この作品)

今回日本初公開ということで、期待して見に来たのですが。

なんと、「ホロフェウスの首を斬るユデット」と「瞑想するアッシジの聖フランチェスコ」の2点は、

貸出期限を過ぎたので帰国したとのことでした…(T_T)

残念。というか・・・

「この絵を観にきたのに~」と、

落ち込む気持ちのまま美術館内へ・・・

 

カラヴァッジョの3作ある「リュート弾き」

もう一点私が見たかった絵、それは「リュート弾き」です。

この絵は3点制作されていて、私が愛する「リュート弾き」は

ロシアのエルミタージュ美術館に所蔵されています。

今回来ている「リュート弾き」はたぶんそのうちの1点・・・

お目当ての「リュート弾き」でありますように・・・(*´Д`)

 

(今回来ていた1作目の「リュート弾き」はまだカラヴァッジョが

まだ青年像を描き始めたばかりのときです。1596年の作品)

 

と心中で祈りつつ最初の間に入ると、カラヴァッジョの大きな静物画と

誰かが描いたカラヴァッジョの肖像画から始まり、、

観てみるとカラヴァッジョ展と言いながら、

中の内容はカラヴァッジョ派の画家たちとのコラボ展・・・(=_=)

なかには僕の好きなアンニーバレ・カラッチやリベーラなどの

後輩画家たちの作品もあったので少し救われた気持ちでした。

お目当て「リュート弾き」でしたが、観た瞬間、、、、

「これじゃない!!」と一目でわかっちゃいました。。(>_<)

残念ながら3点のうちの1点(個人蔵)をお借りした作品でした。

やはり第1作目の作品らしく、私が見たかった3作目と比べると完成度は低い仕上がりです。

(私がみたいのはこちらの「リュート弾き」です。昔からめちゃくちゃ好きな絵の一つです。

作品は1枚目から4年後の1600年の作品。4年でかなり画力が上がっているのがわかりますよね~!)

 

作品は思っていたより大きく、人物もしっかり描かれている。

テーブルのリュートやバイオリン、楽譜、花とベネチアグラスなどの静物画は、

細密な描写で描かれていましたが、特にリュートの弦は細心の注意を払った描写技術で描かれていた。

それに比べると顔と手は結構デフォルメされていて、軽い描写でした。

顔の輪郭線などは現代の写真描写のような捉え方で、

当時のカラヴァッジョが他の画家たちと大きく違う眼をもっていたことを物語っています。

 

カラヴァッジョの絵の構造

カラヴァッジョの作品とカラヴァッジョ派たちとの作品を比べてみたところ、

カラヴァッジョの絵との大きな違いは「強調したデフォルメ」にあると感じました。

描写力やデッサン力では、リベーラやその他の後輩画家たちの方が優れています。

でも、なぜカラヴァッジョは巨匠なのか・・・

それは彼が描く絵は絵画的なデフォルメを上手く活用しているというところ。

例えば「トマスの不信」という有名な作品も来ていました。

この絵ではキリストと弟子たちの体のバランスが現実離れしたデフォルメによって表現されています。

手前のやたら大きな弟子の体と手、そして小さなキリストの体に大きなキリストの左手。。

3人の弟子たちはキリストに比べて大きく強調して描かれている。

キリストの傷口に指を入れ、死んだはずのキリストであることを

確認して復活したことに驚く弟子たちを細部の衝撃的効果をリアルに描写している。

最も驚くべきは、カラヴァッジョがキリストの傷を描写した残忍なほど描写的な手法で、

外科的な正確さで観察されているところです。

デフォルメはルネッサンス時代によく使われていて、見せ場を強調して表現する画法です。

ティッツィアーノとその弟子たちはこの手法をオールドマスターの手法として教えてきました。

ベネチア派の影響を多く受けていたカラヴァッジョはそれを学び伝承して巨匠となったのです。

 

現代人に近い眼を持っていたカラヴァッジョ

カラヴァッジョの時代の絵を観察してみたところ、

ルネッサンス時代以後の画家たちのなかでも特別な観察眼を持っていたことが分かる。

彼は大胆なだけでなく、細密な静物画を得意としました。

若い頃はローマで静物画を沢山描いて路上で売って生活していたのです。

初期の絵を観たところそれほど造形的ではなく、

浮き彫り的な描写であり、速筆の画家であったであろうと感じさせる。

画法は北イタリアの影響がみられ、人物の下地はアンバー系、中描きはグレー系、

上描きはオーカー系とシルバーホワイトを使って描かれていた。

イタリアアカデミーの委員長の絵の修復されていな部分があり、

下の層がすべて見えていたことで、当時の描き方は確実にカラヴァッジョと一致していた。

基本ヴェネツィア派の手法であり、エル・グレコとも一致しています。

優秀な画家たちは、当時でも一発描きしていることも解りました。

カラヴァッジョはバックにセピアなどの黒系の色を持ってきたことで、

描くリアルな絵を浮かび上がらせることに成功した。

彼はミラノでレオナルド・ダ・ヴィンチを見てこの手法を思いつき実現したとされています。

彼の現実に対する観察力は、現代の写真技術と同じような光の効果によってなされている。

蝋燭の光を描写したリアルな絵は、見る人に日常的な現実感を与えた。

後にレンブラントもこのカラヴァッジェスキを習得してさらにスポットライトに近い効果を生み出していきます。

現代の人からすれば写真を貼り付けたようにも見える絵でもありますが、

当時として考えるとありえないほどリアルに見えて人々の印象に残る絵だったのでしょう。

 

カラヴァッジョの色彩

カラヴァッジョの色彩でよく使われている色に赤と白があいます。

彼は血の色が好きであり、カラヴァッジョの性格の2面性が浮き上がってきます。

情熱的なイタリアレットと純粋を意味するシルバーホワイト、そして謎めいた黒を基調とした世界。

彼の絵は年齢を重ねるほどドラマチックになっていき、光の効果をよりいっそう強めていきます。

若いころの青年像と静物画は明るく現実的なリアリズムを基本としていましたが、

晩年は闇のなかでの出来事として神秘性を重視した作品を手がけている。

彼のお気に入りの赤と白は心理的に相反するもので、絵のインパクトとして定番的に使っているが、

それは鑑賞者へのメッセージとして受け止めることもできます。

 

まとめ

残念なこともあったけど、意外にも「マグダラのマリア」を描いた作品は、

圧倒的に迫力がありカラヴァッジョの凄さを思い知らされました。

彼はポイントだけしっかり描き込み、あとはそれほどこだわらずに絵を仕上げている。

巨匠は現代の画家たちとは違い、すべてを描くということはしないという大切なことを教えてくれています。

好きだった作品は最後に観た「洗礼者聖ヨハネ」素晴らしい青年像で、

カラヴァッジョは小さな絵より大きな絵が得意だったことを感じさせる1点でした。

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taesun

画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。