自分が認識した世界を表現することは、アートの役割の一つだと思います。
過去のアーティストたちは、自分の感じることを何かで表現して生きてきたのです。
人類は無意識に自分たちが思う部分の本質的なことを、絵や彫刻、音楽や、詩などで表現してきました。
伝えたいことの本質を視覚化するには、どのように描くべきなのか?
それを人類は考え続けてきました。
本質を視覚化するには線で形を表す
線の表現で描く古代から現代の画家たち
線の表現は形の輪郭線を基準に描き、色彩をほどこす方法で、古代の絵はこの方法で描かれています。
人は線を利用して輪郭を表現することで、物質を正確に映することができました。
線で形を表現することは、絵そのものと言えます。
古代から絵画は、線を追求して自分独自の個性を出してきました。
魅力のある線を描くことで、美しい表現に結びついていったのです。
ここでは、ルネサンスから近代までの画家を紹介したいと思います。
線で表現した巨匠たちその1
東洋の絵は古くから線を貴重にしてきました。
西洋でもルネサンスの時代には、線の表現が発達し、素晴らしい作品を生み出しています。
中でもボッティチェリ、フラ・アンジェリコ、ウッチェロ、マンティーニャ、クラナッハ、ミケランジェロ、ホルバインなど代表的です。
ボッティチェリ
![](https://i0.wp.com/taesunworld.com/wp-content/uploads/2018/09/f2a07903a23b8d2df3ed929765984c7d.jpg?resize=514%2C700&ssl=1)
ボッティチェリの画風の特徴は、優雅な線にあります。
フォルムのすべてに明確な輪郭線がついています。
その美しい線は特徴があり、細部の表現の美しさには目を見張るものがあります。
ボッティチェリほど輪郭線にこだわった画家はいません。
彼は、ボリュームのある絵画が流行り出した時でも、無視して最後まで自分の輪郭線を守っていました。
彼の絵は、神秘的で神々しいことで有名です。
ルネサンス絵画の特徴を表した、ボッティチェリのヴィーナスは永遠の美がやどっています。
フラ・アンジェリコ
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彼のフレスコ画の中でも最高の出来栄えで、最も親しまれている1点です。
フラ・アンジェリコの素晴らしさは、質素な空間と美しいポーズ、純粋な眼差しで描かれているところです。
画家の清らかな心の線の表現は、ルネサンス絵画史上最も純粋であり、信仰心の熱い画家の人柄まで想像させます。
また、フラ・アンジェリコは、正確な遠近法で画面に奥行きを与えた最初の画家の1人でもあります。
ウッチェロ
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1432年にフィレンツェがシエナに勝利したことを描いた板絵です。
ウッチェロは遠近法を、初めて使った画家だと言われています。
彼の独創的なデッサンは、彫刻の修行時代に浮彫から学んだ方法でした。
この絵では、ウッチェロが夢中になって研究した、遠近法実験の成果を見ることができます。
マンティーニャ
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マンティーニャは古代ローマの考古学知識をもとに、古代建造物を取り入れています。
彼の造形と描写力は、素晴らしい力強いデッサンが特徴です。
ルネサンス期では、非常に人気のある画家でヨーロッパ中で有名でした。
特徴ある構図はダイナミックであり、当時彼に勝る壁画を描く画家はいませんでした。
クラナッハ
![](https://i0.wp.com/taesunworld.com/wp-content/uploads/2018/09/FB_IMG_1525018538237.jpg?resize=480%2C700&ssl=1)
クラナッハはドイツルネサンスの巨匠です。
彼の画風は端正なこまやかさと独特の線が特徴で、見る者に忘れがたい印象を与えます。
生涯多忙で人気画家のクラナッハは、速筆だったといいます。
彼が描く女性像は、独特の魅力がありヨーロッパでは人気がある。
また、彼の描く線の美しさは格別であると言える。
ミケランジェロ
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ミケランジェロは、美術史上最も崇められた大芸術家です。
彼が描く人物像は、完璧な造形美で表現されています。
人間の最も美しい形を目指したその造形は、美しい輪郭線によって浮き彫りのように描かれています。
また色彩の光と影のコントラストも、まれに見る美しさが感じられます。
ホルバイン
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ホルバインは、フランドルからイギリスに渡り、宮廷画家になった画家です。
ホルバインの素晴らしい目はそのまま、絵の線に現れています。
彼の正確なデッサンは、美術史の中でもとりわけ有名です。
現在の写真と同じように、正確に人物の形を捉えることができたホルバインに、当時の人々は大きな信頼を寄せています。
線で表現した巨匠その2
ルネサンス以後油絵の具の発達で、板絵からキャンバスに移っていくようになります。
絵具が厚くなり輪郭線は目立たない時代が続きます。
ですが、後の時代にも、いろんな画家たちが線を使った表現を発見し、独特の表現で描いて行きます。
アングル、ロセッティ、クノップフ、クリムト、ロートレック、モジリアーニ、ピカソ、ポール・デルボー、ビュッフェ、など19世紀から20世紀の画家を紹介あす。
アングル
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アングルの線は、美術史上最も有名といえます。
彼の輪郭線は丸みがあり、色彩を美しい線で覆っているかのようです。
アングルは、モデルをデッサンしたのちに自分独自の線に変えて、作品化する手法を選んでいます。
彼は、古代ギリシャの彫刻や絵画に習い、神々しい神秘的な造形美を目指していました。
ロセッティ
![](https://i0.wp.com/taesunworld.com/wp-content/uploads/2018/09/Dante_Gabriel_Rossetti_-_Proserpine.jpg?resize=336%2C700&ssl=1)
ロセッティは19世紀のイギリスの画家、詩人と才能ある人で、彼は「ラファエロ前派」の中心的人物となります。
ロセッティはロマンティックな作品が多く、エレガントな手の表現は見事なもので、彼独自の幻想的な雰囲気を生み出しています。
ロセッティのデッサンは、当時のアカデミックなデッサンと違い、彼の女性美追求の現れであり、観察による細やかな細部表現の成果だといえます。
クノップフ
クノップフはベルギーの画家で、19世紀を代表する画家の一人です。
彼の絵にはいつも妹が描かれていますが、幻想的な世界は時間を感じさせません。
彼の線は繊細で、色彩は軽く乗せられている。
絵具は薄塗が目立ちます。
鉛筆素描は非常に細かい独特の物です。
クリムト
![](https://i0.wp.com/taesunworld.com/wp-content/uploads/2018/08/360px-Gustav_Klimt_067.jpg?resize=281%2C700&ssl=1)
クリムトはウィーンを代表する画家で、日本でも人気がある画家です。
描く絵は東洋的であり、ビザンチン、ゴシック的でもある、平面を意識した作品です。
線は滑らかで、表現の幅が広いことと、色彩をモザイクのように扱うところが特徴です。
デフォルメされた絵画表現は、当時賛否があったものの、彼の芸術はヨーロッパ中で話題になりました。
ロートレック
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ムーランルージュで毎日絵を描くロートレックは、線の描写で動いている人物を描きとる才能がありました。
彼の流動的な線と色彩は、場の空気や音楽、声まで聞こえてきそうな感覚を見る人に与えます。
彼の単純化された線は、後にポスターを生み出します。
モジりアーニ
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モジりアーニのこの大胆な裸婦画は、単純化した限られた表現に限定して描いています。
単純化された線と色彩で、デフォルメされた独創的な肉体表現は、見る人に圧倒的な印象を与えます。
眼は黒く塗りつぶされ、時間と空間を排除しているように見えます。
ですがその絵には、女性の感情を見ることができる。
ピカソ
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ピカソのこの絵はテンペラ画の未完成作品ですが、彼はこの絵にサインしています。
ピカソは絵の不完全さに、永遠性を見たのでしょうか?
アングルの線を研究した画家の一人でもあります。
彼はあらゆる線で、画風をかえて描き続けた画家です。
彼は、死ぬまで自由な線で絵を描き続けました。
ポール・デルボー
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ポール・デルボーは、ベルギーのシュルリアリストです。
彼の絵はとても不思議な世界で、夜の絵が多く、神秘的な作品です。
ギリシャ的な建造物やヴィーナス、目の大きな女性、機関車など大きな作品を描く画家です。
デルボーは人物の輪郭線を残し、ルネサンス初期の絵に見られる、遠近法も線を使って表現する線遠近法を使います。
ルネサンスの線の表現と遠近法を再び使い、過去と現在を一つの画面で表現した作品を描き続けました。
ビュッフェ
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ビュッフェはフランスを代表する画家です。
彼の絵には、ユーモアと日常生活絵への皮肉も感じられます。
彼の個展は初日から、長蛇の列で二センチ間隔で並んで見ていたとメディアでも話題になった人気画家です。
強烈な独特の黒い太い線は、死の線と言われ人々の内面的な苦を表わしているといいます。
美しく単純化に成功しているこの絵は、人々に忘れがたい強烈な印象を与えたのです。
まとめ
以上ルネサンスから現代まで、代表的な線の表現で有名な巨匠を紹介しました。
参考になったでしょうか?・・・
まだまだたくさんの画家がいますが、また他の機会に紹介したいと考えております。
線で表現することで、自分の心の表現の可能性が広がると思います。
是非とも自分の線を意識して、独自の方法を生み出してほしいと思います。
・人物画を得意とした巨匠たち(ティッティアーノ、ベラスケス、グルーズ、ルブラン)