日本では、お年寄りから若い人まで、古美術を趣味としている人が意外に多い。
もちろん最近は、お宝発見番組もよくテレビで放送されていますが、そんななか・・・
僕の先生の一人、風景画の先生の作品が出ていました。(もうお亡くなりになりました)
持ち主の御主人は売る気はないと言っていましたが、バブル以前に購入したスペインの風景画が50号ほどでなんと3000万円!!
先生は、ベニスを題材によく100号を超える大作を描いていらっしゃいましたが、まさかそこまで値段が高かったとは思いませんでした。
よく三越百貨店で、個展をされていましたが、あまりにも素晴らしかったのを今でも覚えています。
作品は、2日目で半分以上売れていました。
コレクターの人達が買っていたのでしょうか?!
ということで、今回は気になる絵画の値段や、画廊とギャラリーの違いと役割について説明していこうと思います。
現在のアート市場の仕組みを説明していきます!
アトリエ直送の現代アート
ギャラリーや画廊で売られていいる作品は、骨董のように偽物はありません。
僕は昔よく古美術が好きで骨董屋まわりをしていて、お店の主人とよく骨董のお話をしていました。
僕が百貨店の骨董屋で見かけた不思議な仏像を見たことを、店主に話しました。
あれは、韓国の三国時代の仏像でしたが、説明には朝鮮時代前期と書いてあったのです。
仏像には土もついていて、まさに最近地中からほりだされたようなリアル感があり、僕もだまされそうになりましたが、値段的にありえないことなので・・・怪しいと思いました。
(こんな感じの弥勒菩薩)
歴史的に見てもおかしく、値段も28万円と安いことで百貨店の人に聞いて見たのですが、よくわからないという答えでした。
そのことを、後によその骨董屋で聞いて見ると、専門の偽物業者がいて、偽物を流しているというのです。
百貨店の骨董屋のオーナーもいい加減な人もいるもので、安いから売りに出したのでしょう。
僕は一目で、偽物とわかりましたが、絵画の世界ではなかなかない話です。
ネットオークションでは、偽物をよく見かけますが・・・
下手なのですぐにわかります。
画廊は、古い絵も販売していますが、基本的にギャラリーで販売する作品はできたての新作で、産地直送の作品しか取り扱っていません。
一般の人は知らないかもしれませんが、展覧会初日に作家とオープニングパーティーを催します。
また、作品はアトリエから直送なので偽物はありません。
偽物は取り扱いませんが、新人作家の作品は後世に残るという保証はありません。
現代アート作品は、どんどん新しい作家の作品が登場するので、自分の趣味に合う作品を購入するほかありませんよね。
絵画ファンというのは、単純に楽しむために絵を買う人が多く、作家の成長を見守り応援することで自分のアートの世界を楽しんでいるのだと思います。
アートマーケットを支えているのは、好きで買っているコレクターがいるからこそ、健全で安定しているのだといえるのです。
プライマリー・プライスとセカンダリー・プライス
プライマリープライス
アートマーケットには、大前提として価格が二種類あります。
この二種類の価格構造は、適正なアートマーケットに欠かせないものです。
一つは新作をギャラリーや画廊で展示販売する値段で、プライマリープライスと言います。
展示して初めてマーケットに出たときの値段ですね。
ここでの共通の価格設定は、サイズと素材で値段が決定し、同じサイズのものはすべて同じ値段になります。
素材はキャンバスにペインティングされたものは、紙に描かれたドローイングよりも高いですし、複数ある版画作品は一点ものより安いという感じです。
ですが、この方法は日本だけなのかもしれません。
作家からすると、疑問点や納得できない部分が多いのです。
海外で小さい作品が高額で取引された場合、日本での価格と合わなくなるのです。
この辺は、見直しが必要になってくるのではないかと感じています。
絵によっては、小品でも時間がかかり、より労力が必要な作品も多いからです。
作家によって作品の質が違うので、値段の設定が変わっても仕方ないと思いますが・・・・
昭和の時代の絵と現代の絵は、だいぶ変わってきていのです。
ヨーロッパでは、手ごろの小品の価格は高めで、大きい作品になるほど日本より安い設定をしています。
僕も展覧会で自分では力作でも、普通に描いた作品と同じ価格で販売されたときはなんだか残念な気分でした。
売りたくないという気分になるんですよ。
セカンダリープライス
セカンダリープライスは二回目以後のマーケットの価格を意味します。
オークションやコレクターが自分の作品を手放して転売する時の価格です。
たとえば、12年前にプライマリープライスで30万円で購入した作品を、オークションに出したら3000万円で落札されたとなれば、
その価格がセカンダリープライスとなります。
このように第二の市場で評価が上がれば、作家の価値も上がることになるわけです!
これが市場の評価格ということです。
セカンダリーの場合はサイズが同一でも、作品の内容によって違います。
ここで、作家の歴史や活動と評価で独立した一点の絵画としての価値が決まるのです。
アートビジネスと新興国
今、中国を中心としたアジアでのアートの人気は高まっていますが、中国がますます経済発展することで、富裕層が増えるので投機目的の人には、大きなチャンスです。
そういう流れで、自国のアートを買い戻す可能性は大きい。
中国だけでなく、インド、ロシア、アラブ産油国の富裕層の資金が、現代アートの市場に大量に流れ込んでいるのです。
安いうちに大量買いをし、評価次第で売ろうと考えているのでしょう。
このような理由もあり、アジアの現代アートだけを取り扱ったオークションが開催され、国際的に人気が高まっています。
ですが、アジアの現代アートの歴史は浅いことから、システムを無視した大陸的な市場が独り歩きを始めているのです。
経験がないプライマリーの作品を、いきなりオークションに出品している事態がおきているというのです!!
一度も売買していない作家の作品をセカンダリーの価格で落札されているわけです・・・・
確かに、この方法は早道で、アーティストとギャラリーには実りいいことですが、お金だけの商売になってしまっているところに危機感も感じます。
アジア限定マーケットが荒れている
アジア限定のオークションは、日本、中国、インドなどアジアで活躍する評価を確立した作家を集めて、始めたものです。
しかもアジアの作品は人気は上り調子で、高価格で取引されています。
ですが、あまりにも投機色が強すぎ、短期的な儲けだけに集中しすぎていると感じます。
オークションとは、国際的に正当な価値を作る場ですが、アジアだけに限定したとしてもルール違反であることは明白です。
プライマリーとセカンダリーを無視して、ただお金のやり取りだけ集中しすぎていることは、健全なマーケットが育成されないことにつながります。
このような流通は、アート界を荒らす行為であり、時がくればバブル崩壊のようにすべての作品価格が急落するでしょう。
そして、すべての関係者の痛手となると思います。
やはり、アートマーケットのシステムを無視することは、後に大きな失敗につながる恐れがあります。
高いほど売れるアート
投資家が飛びつくアート作品は、健全で安全な作品です。
セカンダリーで安定した価値のある作品を買うことで、投機としての魅力が分かりやすく一般人向けといえます。
完全に人気があるブランド化された作品は、アートに詳しくなくてもオシャレで一般人受けし安全なのです。
ブランド化されていれば、誰もが知っているので、有名ブランドのようなものですから・・・
とにかくお金が余っていて、投機目的の人には歓迎される作品です。
このような作品は、競って高額になればなるほど不思議と売れていきます。
古典的な作品はともかく、現代アートの作品は世界中で飛ぶように売れるのです。
情報がすべてのアートマーケット
日本が世界のアート界の情報をつかむことに出遅れていたことが、国内に海外の名品が少ない理由の一つだと考えられます。
日本のマスコミや雑誌関係者もアート情報となると、ほとんどお手上げ状態で、最近は少し動き出しているのかな?と感じるぐらいです。
バブルの時代でも、「今、勢いがあり、注目度が高く評価されている作品」など、まったくといっていいほど情報をつかんんでなかったのが問題でした。
今は情報を収集しやすくなりましたが、最新のアートを手に入れるには、最近の展覧会情報から、評判、コレクター情報、マーケットの流れなど、美術界の生の情報をつかむことが重要だと感じます。
より良い最新のアートを手に入れるには、プライマリーマーケットの情報を入手する必要があります。
誰よりも早く、プライマリーで素敵なアートの情報を手に入れることで、個人コレクションも充実します。
まとめ
今、アジアのマーケットは注目されていますが、この流れで日本にもアートバブルがまた起きて欲しいですね!
僕の先生の時代は、日本のアートバブル時代だったと思います。
日本は70年代からバブル期までが絵画ブームでしたから。
これからの時代は、絵画の情報次第で新たな才能がある画家を、発掘するチャンスは広がっていきます。
こまめに作家の情報を集めることで、アートビジネスだけでなく、プライベートコレクションも充実していくことでしょう。
そして、若いコレクターもどんどん増えるのではないかと予測されています。