ティッティアーノ 「音楽にくつろぐヴィーナス」

日本でも西洋美術の企画展を、見ることができるのは皆さんお分かりとおもいますが・・

この企画展を全国で、年間に何回もできるのは世界でも日本が一番だといいます。

他の国では、それほど西洋の名画を見ることはできないようです。

これは、世界でも贅沢なことなので、機会があれば是非展覧会に足を運んでください。

あなたの心に残る名作に出会えるかも!!

 

昨日ティッティアーノを生で見てきた

昨日プラド美術館展を見に行ってきたのですが、お目当てはベラスケス品7点でした。

飛びこみで、絵の情報はほとんどなしで展覧会に入場してベラスケスから順番にみていったのですが神話画部門でティッティアーノに遭遇!!

僕はティッティアーノの作品が大好きなので憧れの名画「音楽にくつろぐヴィーナス」が見れるなんて思ってもみなかったのです。

まさに感動の出逢いで胸が躍りました。

ティッティアーノはヴェネツィア最大の画家なのです。

 

ティッティアーノの人気テーマ

1555年ごろの作品巨匠70歳の時の作品で,(138×222.4㎝)の堂々とした大作です。

ヴィーナスの右手薬指の指輪をしていることと、忠誠を象徴する犬を伴うことでこの作品は結婚を意味するので、それに関係して制作されたようなんです。

「音楽にくつろぐヴィーナス」は5点ある楽器演奏を伴う構図の作品の中で、一番最初に制作されたものと最近の調査で明らかになりました。

(この作品はたぶん弟子たちの手が入っていると思います)

この作品の評価が高く人気があり、同主題の作品の依頼があったのだと思われます。

5点の作品の中でもやはりこの「音楽にくつろぐヴィーナス」が最初に描かれたこともあり、画面構成と色彩の美しさは素晴らしいものです。

 

ティッティアーノの素晴らしい構図と色彩

ヴィロードの生地と赤い大きなカーテンがヴィーナスの白い肌を引き立てています。

ヴィーナスの足の指先からオルガン奏者の頭部に目が行き、そこから庭の木立の遠近法で地平線と雲の間の奥の光に目が向けられ誘導されます。

この効果で、手前のヴィーナスと演奏者の存在感を、より一層引き立つように工夫されているのです。

演奏者の黒と黄色は、庭の緑に自然とつながる効果も事前に計算されています。

(簡単に説明するとこのような感じになります)

 

圧倒的なヴィーナスの存在感と美しさ

「音楽にくつろぐヴィーナス」は他の4点に比べて自然で落ち着いた印象で、見る人の心を穏やかな気持ちにしてくれます。

ヴィーナスの顔は、優しくかすかに微笑みを浮かべ、犬とたわむれています。

近くで見るとハイライトはなく、肌の色彩に力を入れてるような印象を受けました。

特に描きこまれているところは、お腹の部分の脂肪が見事に表現されていて、手や足はそれほどはっきり描かれていないのです。

色彩は白い肌に赤い血色を感じることができ、全てが柔らかく動きだしそうな軽やかさが見る人の心を和ませるのでしょう。

軽い筆使いで描かれているのですが、このさりげない肉体美の美しさはティッティアーノの絵の特徴なのです。

 

誰にも描けない技法と絵肌

ヴィーナスが軽やかに美しく、どのように描かれているのか僕は不思議に思い観察してみました。

ほとんど輪郭線がなく、またの部分と、わきの下あたりにローアンバーぽい線が見えます。

普通輪郭線が描かれているところが、指で押さえているのかボケた感じになっていて、キャンバスの目があらいので、このぼけた感じがティッティアーノの絵の魅力でもあります。

胴体は力を込めて描かれていました。

お腹の部分を強調し、見せ場にして鑑賞者の目を引き付けている。

一番描きこんでいるところです。

足や手も軽く描かれていて、南イタリアのがっちりした線のデッサンではなく、アタリ的な輪郭線に色面で表現されている。

近くで見ると頼りない感じに見えますが、遠くに離れて見ると自然な柔らかい手と足に見えます。

顔も二日ほどで描いたような感じですが、描き足したようなところもなく見事な表現でした。

犬も一回で描いていて、布地と枕、カーテンは大きな筆で荒く大胆なタッチで描ききっています。

手直しされている箇所は、演奏家の頭部の位置が今の位置より、はじめはもう少し右よりだったようですが、構図は完璧で全体的にまとまっているばかりか、全てが見事な筆さばきで描かれているところです。

筆もビーナスの体はわりと丁寧に、小さな筆も使われていました。

筆後も意外と少なく、どのように描いたのか不思議な部分が多かったほうでした。

プラド美術館の絵は、全作品を見ても作品の画面は黄ばみはなく、他の美術館よりニスも薄く残しているので色彩は当時の色に一番近いと思います。

作品の状態は非常に良く、画面をのぞき込むとキラキラとライトの光でニスが光るのがなんとも美しいし、これは絵画鑑賞で一番の見どころなので、僕はそれも絵画鑑賞の楽しみにしています。

ちなみに額縁も当時の作品の一つなので、合わせてご覧ください。

今では作ることもない貴重な額縁は、何百年も名画を守る役割をしてきた時代の重みを感じることができます。

 

まとめ

普段名画を見る機会はなかなかありませんが、美術展に行くとその時代、にタイムスリップしたような不思議な感覚を味わうことができます。

名画の素晴らしさは、有名な画家から当時活躍していた無名の画家たちの、仕事から多くを感じて学ぶことができることです。

名画を通して人間の力と素晴らしさ、そして歴史の重みを感じることで、より今の自分の人生を改めて考えさせられる機会にもなります。

是非、好きな画家の作品が公開されていれば、美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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ABOUTこの記事をかいた人

画家活動をしています。西洋絵画を専門としていますが、東洋美術や歴史、文化が大好きです。 現在は、独学で絵を学ぶ人と、絵画コレクター、絵画と芸術を愛する人のためのブログを書いています。 頑張ってブログ更新していますので、「友達はスフィンクス」をよろしくお願いします。