私は美術館に行くと、絵の鑑賞と共に楽しみにしていることがある。
それは、作品と一体となって飾られている額縁です。
額縁というものはとても不思議なもので、
絵と同じく職人の技巧による技と、木彫の装飾デザインと色に魅力を感じる。
展覧会で名画を観る人は多いがそのほとんどの人たちには、
額縁の美しさによって絵画が引き立てられていることなどに
関心を寄せている人は少ない。。。
また、額縁を作品として見ていないようにも思える。
額縁について知ると絵画鑑賞はもっと楽しいものになる。
額縁は絵を引き立てるための服のようなもの
私たちが自身を着飾るように服を着るのと同じように、
絵にも同じく額縁があります。
1950年代からの現代美術や抽象画などのような近代の作品には、
額縁を必要としない絵もありますね。
それは、人が自分が裸でも魅力があると思うのとよく似ている。
服のモデルもいれば水着のモデルもいるのと同じです。
服を着るのも裸でも、どちらもそれなりに自分の美が基準となる。
額縁は絵を引き立てるための服のような存在なので、
額を選ぶことは作品を仕上げる画家の最後の仕事ともいえます。
額縁の役割は作品を守るためにある
額縁は絵を華やかに飾るだけのものではなく、
絵を守る鎧のような役割をします。
キャンバスのまま裸で飾ると数年は大丈夫ですが、
生活のなかではゴミやチリや煙などの影響を受けてしまう。
絵は何月と共に汚れがついてしまうので、
描いたばかりのころの色彩と違うも色になっていきます。
美術館などにしっかりした温度調節などの設備がない場合は、
額縁に入れてアクリルやガラスでしっかり保護する必要があります。
また、多少の事故からも絵を守る役割をしてくれる。
額縁の魅力は絵画史と共に歩んできた
額縁の歴史は確認できる記録としては、
13世紀の祭壇画が最も古い。
それまでは教会のなかのレリーフとして建物と一体化していたものが、
時代と共に独立化していったのが始まりでした。
大きな祭壇画を飾るために用意された彫刻のような額縁に入った絵は、
やがて市民たちの間でミニアチュール化して個人の愛用品になっていきます。
中世からルネッサンスの時代までペスト(今のコロナ)が世界に広まっていて、
そのときに聖母子などの絵が額装されて市民たちに広がっていったと思われる。
額の形も祭壇画のような彫刻的なものから、どんどんシンプルになっていきました。
そしてそれは生活に欠かせないインテリアとして、人々に800年間愛されてきたのです。
作品としての額縁
宗教画、肖像画、神話画、風景画、静物画、風俗画、など、
絵画の世界も広がりを見せ始めると、世界中の額縁職人たちはこぞって
それぞれの画家の依頼のために新しい額縁を彫刻し始めます。
ルネサンスやバロック時代の額縁は特に素晴らしく、
もはや額縁のレベルを超えた作品になっていました。
そして国によって額の特徴が出てきて、
イタリア額、オランダ額、スペイン額、フランス額
などがその時代、時代によって持てはやされていきます。
今でも手作りの額縁を手掛ける額縁職人は、
工芸作品としての額縁を制作しています。
額縁選びを楽しむ
はじめて自分の絵の額縁を選ぶときは、
何が合うのかさっぱりイメージ出来ないものです。
額縁選びは簡単そうで意外に難しい。
ある程度は自分の絵にどの分野の額縁が合うのかは想像できても、
実際にその分野の額縁から選ぶのはとても大変です。
でも、あれこれ見ていると楽しくなっていくので、
まずは小さな作品に合いそうな額縁から購入してみるのがいいでしょう。
自分の描く作品にどんな額が合うのかを実際に試してみると
絵に対する愛着も増すと思います。
絵を描くと同時に自分が額縁に何を求めるのかをイメージ出来ていたら、
必要な額縁は簡単に見つけることができますよ。
額装に対する考え方を決めておくのも大切ですね。
まとめ
私は絵画作品を見るとき絵に50%、
額縁に50%と割り切って見ることがある。
これは私の鑑賞の趣味の話になりますが、
絵を引き立てる額縁の素晴らしさを見逃さないようにしています。
額縁が絵を勝っていてもいけないし、
絵が良くても額縁との関係が合っていないのも良くないと感じています。
どちらもバランスが大切で、画家の画力と額縁のイメージの一致が
大切であることを最近は特に思うようになりました。
額縁が好きな人は絵を完成させる最後の楽しみにしてほしいですね!