油絵を始めるときに必要になるのが「ペインティングオイル」です。
油彩画には3つのオイルが必用になります。
・揮発性油
・乾性油
・樹脂
これらを配合して「ペインティングオイル」を作り、絵具や筆の調節を行う。
印象派時代から描画用ニス(樹脂)を使わなくなり、絵画の伝統を守らなかったこで、今ではその方法を知る画家は少なくなっています。
正しい方法で油彩画を描かないと絵の状態は悪化していき、画面の保護ができないばかりか、描いた時のツヤや色彩は薄れていきます。
画面にもひび割れがおきて、絵の具がはがれることさえある。
油彩画のオイルについて
一般的に使っているオイル
伝統的な配合を知る画家は少ない。
現在市販されているものは、人工樹脂が多く入りあまり良くない。
昭和の時代の画家たちのオイルも似た感じで、接着力がなくてあっさりしているものが多い。
特にポピーオイルだけとか、リンシードオイルだけで描いていて、配合することを知らい画家たちばかりでした。
オイルはプロの画家たちの「トップシークレット」
実をいうと、画家がオイルレシピを公開することはありません。
自分のオイルというのは、画家が経験して何年も実験して生まれるものです。
普通自分の表現に合うオイルを作れるまで20年はかかります。
それまでの間試行錯誤を繰り返し、自分独自の配合に到達することができるからです。
溶剤と、地、筆さばきこそが、画家のトップシークレットであるから、人にはあまりいいたがらないのです。
オイルレシピをプレゼントする理由
僕が自分のオイルレシピを一般公開するのは、この「テソンアートスクール」に参加して成果を出してほしいからです。
僕が考案してきたオイルの中で、「今でも画面の状態がいい」最高の配合オイルで描いて行くことで、油彩画の美しさや面白さを体験してもらいたい!
オイルが違うだけで、自分がプロになったかのような感覚も味わってもらえますよ。
(16年前に描いた作品ですが、画面状態は非常に良い状態です)
オイル用の瓶に、メモリをつけてそれぞれオイルを順番に入れていく。
きっちり量って調合する人もいますが、僕は目分量でやっています。
昔は神経質にやっていましたが、それほど違いがないように感じるので、そこのところは本人の自由です。
初心者用の入門オイル
初心者用の簡単な配合
油絵初心者が初めから、いろんな道具をそろえるのは大変なことです。
お金もかかりますし、一度に大量のオイルをそろえるには無理もあるでしょう。
ここで、最小限の4つのオイルの配合から始めることができます。
小さい瓶のオイルを購入するといいでしょう。
配合
・ヴェネツィア・テレピンバルサム 1容量
・スタンドリンシードオイル 1容量
・リンシードオイル 3容量
・テレピン 5容量
それを描き始めはテレピンで2倍に薄めて使う。
描きにくいと感じたらリンシードオイルを少し増やす。
ボイルドオイルベースの配合
あっさりとした伝統的な配合
17世紀アンソニー・ヴァン・ダイクのオイル配合に近いもので、レンブラント、フェルメールなども愛用していたボイルドオイルを利用した配合です。
僕はヴァン・ダイクの配合に近いものを使っているので、これも紹介しておきます。
わりと乾きが早いオイルです。
乾燥促進剤はほとんど必用ないでしょう。
冬場の寒い時期など、乾きが悪い場合油壷に2滴ほど入れるとよい。
初心者には使いやすいオイルと思います。
古代と現代ではオイルの使い方や、絵の具の作り方がだいぶ違います。
なので、自分が使いやすいように配合を調節するようにして使ってください。
このオイルは、厚塗りには適していません。
配合
・ボイルドリンシードオイル 2容量
・ヴェネツィア・テレピンバルサム 0.5容量
・スタンドオイル 1容量
・ポピーオイル 3容量
・テレピン(またはラベンダーオイル) 7容量
同じく下描きなどでは、さらにテレピンを好みで増やす。
フランドル絵画的プロ用オイル
15世紀フランドル絵画に近い配合
僕が使っていたオイルの中で、いちばん素晴らしい質感を出していたオイルです。
描きやすく、接着力が良いので厚塗りにも適している。
画面は樹脂によって守られ、ツヤのある画面になり乾きもわりと早い。
初心者からプロまで幅広く使うことができるので、是非愛用してほしいオイルです。
配合
・ヴェネツィア・テレピンバルサム 3容量
・コーパル樹脂 1容量
・リンシードオイル 4容量
・スタンド・リンシードオイル 2容量
・テレピン 10容量
描き始めには、テレピンを加えて薄めて使う。
※追記 北方イタリア系ニューオイル
イタリア絵画、特にベネチア派からバロック時代の絵肌に近いを再現したオイルです。
大作などにオススメです。
配合
・ハーレムシッカチーフ(ルフラン)2容量
・スタンドオイル 1容量
・ウォールナットオイル(クルミ油・マイメリ)2容量
・リンシードオイル 1容量
・ぺトロール 5~6容量
ウォールナットオイルは黄ばみの変色がないのが特徴です。
粘りと接着力をもたせるために少しスタンドオイルとリンシードを加えてあります。
リンシードオイル無しの場合はウォールナットを増やしてください。
ハーレムシッカチーフはツヤのある強固で古典的な画面をつくる。
オイルの伝承
昔の画家たちの絵の具には、今我々が使っているオイルがまぜられていました。
ペインティングオイルはありましたが、また違う使い方をしていたのです。
配合は、絵の具にまぜられていたものを、オイルに入れて再現しているという感じです。
15~17世紀までは、火で熱した熱いバルサムを使ったりと、現在では考えられないことをしていたと思われます。
加筆用ニス・ルツーセ
加筆用ニス
これはオイルではありませんが、制作に必要になるのでオマケとして紹介しておきます。
ルツーセは画面上の油分がキャンバスの下地に吸収されて、
ツヤを無くした場合に色彩を蘇らせるために用いる加筆用ニスです。
また、描いている絵の具を少し溶かしてその上に乗せる絵の具と接着をよくする働きがあります。
絵の具を溶かすことで、加筆しやすいという利点がある。
アートスクールでもこのルツーセを使います。
市販のルツーセは使わないようにしましょう。
乾きが早すぎるので。。
配合
・ダマー樹脂液 10容量
・リンシードオイル 3容量
・テレピン または ぺトロール 10容量
テレピンの割合は10容量にしてあるが、自分の作品に適した配合を見つけるようにすること。
あまり少なすぎる場合べとつくので注意しましょう。
画家としてのスタート
このように、僕の絵の秘密の一部を貴方にプレゼントします。
僕は、このオイルを作るまで、たくさんの試験や研究を重ねてきました。
そのような事は、時間がない生徒さん達には無駄な時間なので
まずは絵の上達に力を注いでほしいと感じたのです。
この4つのオイルはどれを使ってもかまいません。
※(正しい使い方は、授業で説明していきます。)
絵が上達して、自分の作品が描けるようになれば、自分に合うオイルを研究していくといいと思う。
このオイルとアートスクールで、世界中の誰よりも早く油彩画の基本テクニックをマスターして、
画家として自由に活動できるようになってください!
※このオイルレシピは、僕と生徒さんたちだけの秘密にしてください。
口外したり、悪用することはしないようにお願いします。