静物画を描く(F6)・1

前回のオイルスケッチで描いた静物画を今回は、キャンバスで描いていただきます。

オイルスケッチで一度経験をしたので、ある程度コツはつかめたでしょうか。

今回は、キャンバスに静物画を作品として描くので、これからが本番です。

スケッチを終えていることで、ある程度の感覚をつかめると思います。

今回の最大の目的は、

・絵の具とキャンバスの感覚になれること。

・造形的に描くこと。

・空間を作ること

・質感を意識することです。

 

基本的に絵の具をのせたり、色彩を作ることに力をいれていきましょう。

別にリアルにする必用はありません。

今回僕は、油絵の基本的なこと、何度もやり直すことができるというところを、見ておいてほしいと思います。

今回の一作目は基本的な描き方です。

二作目は「イメージのなかでの静物」で、イメージ制作で静物を描いていただくことになります。

今回の一作目の描き方をマスターすることで、2作品目の静物画はさらに楽に制作できます。

自分の好きなイメージで、自由に制作できるようになるということです。

一回目は、少し長いですが、自分のペースで描いてください。

初心者はとにかく、形を大きく捉えることを重点に制作してください。

 

はじめに

前回と同じく二つの物で構成した構図で描きます。

まず物と物の空間や布とテーブルの質感など全体のヴァルール(一つの画面の中の前後関係や遠近、空間と立体感を表現するための明暗の段階)をつかみ、絵画として成立させる目的です。

静物画を描くのは、動かない対象をじっくり見て観察できるメリットがあるので、油彩画の基本中の基本の勉強になります。

モチーフは自分が好きな、愛着があるものなどを選んで描いてください。

色が違っても僕の絵と同じく、二つの物から描いてみましょう。

 

制作のポイント

今回の制作のポイントは初心者でも、上手く描いていける方法です。

一般的な絵画教室では、絵の具をたっぷり使って一気に描いて行く方法を教えていますが、初心者でしかも自分一人だと絵の具の扱いに困って制作ペースが減速します。

そこで、僕が考えた方法は、初期ルネサンスで使われていた技法の一つを選びました。

僕は普段この技法はあまり使いませんが、初心者にはとてもいい方法で誰も教えていないのでテソンアートだけの方法と言えます。

(僕の考案したオイルで、魔法のようなマチエールを実現できます)

この方法は、薄めの絵の具を何回も同じ工程で描き込んで行く方法です。

初心者でも、同じ色を重ねて描くとなれますし、綺麗な画面が作ることができ、修正も簡単に行うことを可能にしますので、一人で描き込んで制作していけます。

★この技法のメリット

・絵の具の濁りを無くせる。

・画面が美しく、素人に見えない。

・描き直しが簡単。

・塗り絵式なので、輪郭内で描き込める。

・いきなりの方向転換も可能。

・乾きが早く、制作がスムーズに行く。

・絵の具の扱いに慣れやすい。

・すぐに油絵制作に自信がつく

・空間を出しやすい

・がっちりした画面になる

と、いうかんじですので安心して学んでスキルをマスターしていきましょう。

1回、2回の静物画はこの技法

3回、4回の人物画と風景画は他の技法で描きます。

技法にはいろんな方法がありますので、初級コースの技法から油絵になれてください。

自分のペースで、楽しみながら学べると思います。

ポイントはとにかく見て手順を覚えること。

どんなことでも、うまくいかなければ楽しめないし、上達しませんので、楽しめるように工夫することを頭に入れておいてください。

では、スタート!

 

トレース

必要な道具

(トレーシングペーパー)

(カーボン紙)

トレースとは

トレースとは描いた下絵を写す作業です。

下絵にトレーシングペーパーを敷いて、鉛筆やペンで形をなぞっていきます。

写したらキャンバスにカーボン紙を敷いてペンでまた形をなぞります。

ポイントは、画面の構図と上下左右を見て判断してください。

 

キャンバスに基準線を入れる

僕はいつも直接木炭で下描きしますが、生徒さんの中にはまだ形をとるのが苦手な人がいると思うので、今回はこのこの方法を紹介します。

一度は必ず自分の力でデッサンをしますが、画力がまだない人は自分のデッサンをトレースしてキャンバスに写すことで、正確な下描きが可能になります。

 

 

トレース1

前回のオイルスケッチをトレーシングペーパーでトレースします。

鉛筆がいちばん使いやすいので鉛筆を使いました。

輪郭と影を大まかに写し取ります。

 

トレース2

次は、キャンバスにカーボン紙を敷いてトレースしたトレーシングペーパーを上に置きます。

このとき画面の構図を考えて中心になるようにテープで両端を固定します。

固定できれば、上からペンで線をなぞっていきます。

 

模写用の型

まだデッサンが苦手な人や、模写を目指す人の型を用意しました。

コピーしてトレースすることもできますが、そのまま鉛筆などで写す方法もあります。

塗り絵としての練習作業で油絵を知ることから始めて、

同時にデッサンの腕を磨いていくと自分の力で油絵を描けるようになります。

デッサンに自信がない人はまず、型を利用してみてください。

 

モノトーンで下描きをする

今回は、3色を使って下描きをしていきます。

今回は、イエローオーカー、バーントアンバー、アイボリーブラックの三色です。

下描きには、描く絵の邪魔にならない色で行います。

ペンティングオイル(オリジナル配合オイル)に揮発性油をペインティングオイルを2倍に薄めて描きます。

テレピンだけでも描けます。

 

モノトーンで描くNO1

トレースした線だけでも大丈夫なのですが、僕は少し静物を動かして少し調整しました。

線はあくまで目安と考えてください。

オイルを多めに付けて、絵の具を薄く溶いて使います。

 

モノトーンで描くNO2

イエローオーカーとバーントアンバーでカボチャの影の色をつけていきます。

いちばん暗い部分をアイボリーブラックとバーントアンバーを塗ります。

いちばん明るい部分は白いままにしておきます。

 

モノトーンで描くNO3

バーントアンバーでバックを薄く塗っておきます。

この段階は、水彩絵の具と同じような描き方です。

前回のオイルスケッチを思い出して描いてください。明色、中間色、暗色を意識しましょう。

失敗したときは、ぼろ布でふき取ってください。

 

モノトーンで描くNO4

下描きの最終段階です。

少し大きめの筆を使ってバックを塗り、全体を描き加えて絵になるように調節していきます。

筆使いはランダムに行っていきます。

下描きを終了すると2,3日乾かして、乾燥させます。

本当は、一週間ほどおくといのですが、乾いていれば問題ありません。

 

油彩の着彩に入る

下描きが乾くと次の段階の絵の具の着彩に入ります。

油絵の着彩は、前回と違い絵具を塗るのではなく、絵の具を置いていきます。

はじめは、豚毛の筆を使いキャンバスに絵の具をのせていく作業から始めます。

 

色を作る方法

筆を使って混ぜることもできますが、ペインティングナイフを使って混ぜると綺麗に混ざります。

使う色が分かっていれば前もって、色を用意しておくと仕事も楽になります。

少量の絵の具なら、筆で直接混ぜるのもいいかもしれません。

 

着彩・NO1

カメラで見えにくい左のカボチャの形を整えていきます。

影の色は、バーントアンバー、マースオレンジ、ローシェンナー、イエローオーカーです。

まずは自分の絵の影色を作ってみましょう。

※影色が絵の全体のイメージにかかわっていくので、最初に決めておきましょう。

 

着彩・NO2

オーシェンナーとマースオレンジで全体を塗っていきます。

絵具はおく感じで描きます。

ナイロンの筆で影を強調します。

(別にどの筆でも描いて大丈夫です)

 

着彩・NO3

ネイプズイエローとイエローオーカーローシェンナーで明るい部分に色をのせます。

次は、左のカボチャに着彩していきます。

ローアンバーとローシェンナーで影色を作り、ローシェンナーとホワイトで明るい色を作ります。

この場合も豚毛で描いてください。

 

着彩NO4

絵具を置いていくことで、このあとに乗せていく絵の具をこの土台が受け止める役割をします。

筆は使い分けて使います。

影色、明るい色、細かいところは細い筆で描き、使い分けましょう。

 

着彩・NO5

テーブルに色をのせていきます。

アイボリーブラック、ローアンバー、バーントアンバー、明るい部分にホワイト、ウルトラマリンブルーを調合して使います。

 

 

着彩・NO6

布の部分に着彩します。

暗い部分にバーントアンバー、マルスバイオレット、にカドミウムレットディーブを少々。

明るい部分カドミウムレットディーブ、シルバーホワイト、マルスバイオレットを使います。

調合は、実物の色をよく見て、自分で色を把握して作ります。

 

着彩・NO7

さらに絵具をのせていき、立体的にしていきます。

明暗を意識して色をのせていきましょう。

油絵は濡れている絵具の上に色をのせて色をぼかすことができます。

 

着彩・NO8

ここでバックも着彩していきます。

パーマネントグリーンとローアンバー、シルバーホワイトで色を作ります。

絵具はランダムに塗ってください。

まばらな状態があとで、絵の具の食いつきを良くします。

ここで、乾くまで、一日、二日乾燥させます。

 

着彩・NO9

またカボチャに戻ります。

ハイライトにシルバーホワイトとローシェンナ、ネープルズイエローを使います。

また影も描き加えて立体を意識していきましょう。

 

着彩・NO10

細い筆を使い細部の凹凸を強調してみましょう。

光の流れを意識して描きこんでください。

中間色と影の色をよく見て絵の具を置きます。軽いタッチで描くと生命観が出ます。

 

第1段階の中描き終了

ここまでで、第1段階の中描きを終了とします。

お疲れさまでした。

この段階は基本中の基本なので、表面より、造形と絵具の乗せ方の両方のモデリングを重要視しました。

このように描く事で、今この段階でストップしても、絵として見ることが可能な状態に仕上がっています。

絵は、いつ終わっても絵になっていなければなりません。

次回は、引き続き中描き制作をつづけて行きます。