初心者が静物画を描く場合、まずは硬い物質から描くようにしましょう。

なるべく丈夫な物の方が勉強になります。

造形的な形で重量感がある白いポットや花瓶など、陶器で出来たものがおすすめです。

それに色を添える果物などを組み合わせて、じっくり描くといいでしょう。

絵画構成の勉強にもなるので、いくつかのモチーフを組み合わせて、構図の勉強などをしながら描いてください。

 

本描き・1

ここから上塗りの本描きに入っていきます。

本描きでは、柔らかく描きやすい筆で描いて行き、形の矛盾があれば狂いを調節します。

また、今までモデリングしてきた上に、絵の具をのせる作業で、明るい部分に仕上げに近い色で描いて行きます。

あとは細部の細かい部分の、描写をするのですが、ここで作家のテクニックや個性を入れていきましょう。

タッチや点描、ハッチング、ぼかしなどが使えます。

いろんな作品を描いて行くうちに、慣れてくると自分のテクニックができてくるのでいろいろやってみましょう。

 

制作ポイン

このあたりで、自分の「独立した絵画作品」として見直すことになります。

一度絵を遠くから見て、作品としてどうまとめるのか考えてください。

この本描きは、物を写す形を決定する作業です。

自分の考えと画面が合っているのか、色彩はこれでいいのか、もう少しリアルにするべきか、など、自分なりの解釈でいいので、考えてください。

考えがまとまれば、修正したい部分を描き直してしていきましょう。

あくまでも主人公は2つのカボチャなのを忘れずに、色彩を整えることを考えてください。

 

着彩・NO61

影の微妙なニュアンスを足していきます。

さきほど塗った明るい色もうまく利用します。

 

着彩・NO62

布にもから筆でルツーセを塗ります。

ここで一度壊すように明るい色を置いて行きます。

 

着彩・NO63

今回布の色彩を実物より薄い色にしました。

実際はもう少し赤いのですが、カボチャの色に合わせてパステルカラーに近い色にしました。

絵は創る物なので、その辺は作家の自由な想像力を使って制作します。

 

着彩・NO64

ふんわりした布の感じを出すため白を多めに使いました。

ぼろ布で塗りすぎている部分をふき取って調節します。

 

着彩・NO65

自分が気に入る光の効果を出せるまで試行錯誤してください。

布により描き方は変わりますが、今回は少しビロードの質感を目指します。

 

着彩・NO66

カボチャのごつごつ感を描き込みます。

本描きは、マングースの筆で細かい色の反射を描き込みました。

 

着彩・NO67

絵具を重ねるうちに絵具の層が厚くなり質感が変わってきました。

影の色は毎日天気で変わって見えるので、何回か塗っていますが、自分の目だけでなく感覚で決めても結構です。

どのように仕上がるかが重要なので、これだという色になるまで描いてください。

 

着彩・NO68

ハイライトの乱反射をえがきます。

光は絵に生命観を与えます。慎重に描き込みましょう。

 

着彩・NO69

失敗した場合は布でふき取れます。

ここは最後のニュアンス付けのような感じなので点描や、

ハッチングの技法を使って絵に魅力をつけましょう。

 

着彩・NO70

テーブルに明るい反射の色彩を入れます。

少しずつ絵画的に調節していきましょう。

自分の感性で、一つの絵としての見方で描いてください。

目を細めてよく見直ていきましょう。

 

着彩・NO71

絵に魅力を出すための最後の化粧に入っていきます。

薄いグレーズをかけて影色の変化を描き全体の造形を見直します。

 

着彩・NO72

ローアンバー、ロージェンナー、ホワイトで描き加えます。

色の幅と造形を使ってとらえ直して、

カボチャが生きているような生命観を感じさせるように描いてください。

静物画の魅力の一つは、生命がないものに生命観を与えることです。

 

着彩・NO73

カボチャの存在感が増したので、それに合わせて布の重圧間を意識していきます。

カボチャを支えているという力強さを感じさせてください。

 

着彩・NO74

光の流れを見ていきます。

少し刷毛などでぼかしたりして、柔らかさを表現してみましょう。

 

着彩・NO75

バックの暗い部分にアイボリーブラックと、パーマネントグリーンで色を作り塗りこんでいきます。

斜め左から光が差し込むので、光と陰が生まれます。

 

着彩・NO76

布の部分にルツーセを乗り、着彩していきます。

ルツーセは、絵の具を少し溶す作用があり、あとから乗せていく絵の具と密着しやすくなるので、うまく使いましょう。

(ルツーセは、テレピンで薄めて使います)

塗りすぎた場合は、布でふき取ってください。

ここでは、薄く溶いた絵具をのせて、ふき取ったりしてニュアンスをつけています。

 

着彩・NO77

影の部分を薄い色で、グレーズします。

白い絵の具は、乾いているので薄い色をのせるとうっすら色がかかります。

布を使って、バランスをとってください。

 

着彩・NO78

引き続き描きこんでいきます。

絵の具は薄い色で描きますが、

ラピットメディウムを薄めて使うとグレーズしやすくなります。

 

着彩・NO80

また左のカボチャに戻り、プライムイエローとカドミウムイエローアゾ、

シルバーホワイトで明るい部分に絵の具をのせていきます。

テンの筆を使ってうっすらと描いています。

 

着彩・NO81

暗い部分に色をいれました。

バックをおさえることで、手前が引き立つようにします。

白を入れた明るいグリーンで布の光を表現します。

 

着彩・NO82

テーブルに映る光、この光をとらえる技術は、風景で水の表現にも使う技術です。

よく似ている表現なので、じっくり練習してください。

後の授業に登場します。

 

着彩・NO83

また布の深みを出す作業です。

画面全体を順番に描いて行き、絵になっていく経過をよく見ましょう。

手前と奥の遠近はつねに意識してください。

 

着彩・NO84

ホワイトとグリーンにイエローオーカーを加え光の色彩の幅を広げました。

目に見えるものを描くのは大切ですが、絵として必要だと感じた色があれば取り入れてみるのもいいと思います。

 

制作過程まとめ

お疲れさまでした。

ここまでの作業は、絵の骨格を決める重要な部分です。

普通はこの辺で、仕上げに入るのですが僕は、ここからもう一度全体を見直して仕上げに入ります。

このような経験をつんでもらうことで、絵の具の厚みが出て、初心者でもいい画面が描けるようになります。

一度に塗る方法と違い、手間がかかりますが、この工程を得ておけば後で両方の技術を使いこなせるようになっていきます。

また、この経験と方法を知ることで、より追求する見方ができ、挫折しなくなります。

同じ迷いや壁にぶつかっても、前に進む意味を知っていることになるからです。

大切なのは、絵の具の扱いに慣れることです。

次回は、仕上げに向けて描いて行きます。