静物画を描く(F6)・4

静物画の魅力は何処にあるのか?

静物画は面白くないと思われることが多いのですが、考え方によっては最高の勉強方法です。

モチーフを自分で選択して、好きなだけじっくり観察もできる。

また、遠近感や色彩を学ぶことで、風景画の基本的に必要な事も同時に習得できます。

絵の上達には最高の分野だといえますね。

絵を面白くしたいなら、あらゆる質感のモチーフを組み合わせて描き分けるとより面白くなります。

自分の趣味でいろんな絵の雰囲気に作り上げることも可能で、17世紀の絵画から20世紀の絵画で静物画を見て自分の気に入るスタイルを取り入れてアレンジすることで、独自の表現で活躍することも可能です。

中描き・3

前回に続いて中描きを続けます。

画面全体の前後関係と、中心の「主人公のカボチャ」をただの立体ではなく、物としての質感や色彩をとらえ直すことを中心に描きます。

この作業では、みんながよく言う「油絵の難しさ」を体験することになります。

単純に物を描くだけなら、前回のところから仕上げに入る人もいます。

僕の授業では技法的な手順を覚えて自分で経験することで、どのような絵を描いても挫折しない考え方に持てようになります。

どんな人でも制作の途中に、壁にぶつかるのは当然のことです。

ですが、考え方と捉え方が変われば一つのプロセスと受け止めて、

この部分を簡単にクリアーするスキルを身に着けることができます。

 

制作過程で見えてくるもの

制作していると、造形の理解に苦しむ時があります。

物を理解するには、さわってみることがいちばんいい

物の質感や重さなど、見るだけではわかりづらい時は、近くまで行って確認してみるといいでしょう

裏はどのようになっているのか、どのように色彩が変わっていくのか、手でさわってみるのが理解するには一番早い方法だからです。

そして、わからない部分は改めて、鉛筆で形を紙に描いて考えてみましょう。

デッサンして構造を理解できれば、一つ前に進めます。

僕が描く筆の方向をよく見て、実際に真似てみるといいかもしれません。

また、絵の具を点描的(軽く筆先を使う)に置いて行くとグラデーションしやすくなります。

 

着彩・NO44

布の影色から塗っていきます。

そしてそれに合わせて、色を調節して明暗を表現する。

 

着彩・NO45

カボチャの影なのですが、布の反射の色も混じります。

カボチャと布との接点をよく見て、カボチャの重量感を意識して色を塗ってください。

布も影の中の反射の色を見逃さないようにしましょう。

 

着彩・NO46

ここで手をつけていなかったバックの布を描きます。

パーマネントグリーンにシルバーホワイト、アイボリーブラック、を使っていきます。

明、中、暗で大きく分けて描きましょう。

 

着彩・NO47

大きく色分けできたら、空間がはっきりしてきます。

動画では速く筆を動かしていますが、ゆっくり絵の具をのせてください。

隣の色と混ざってもかまいません。

 

着彩・NO48

色を塗り終わったら、柔らかい大きめの筆で全体をならしてください。

この作業で境界線と筆跡が消すことができます。

今回僕は、馬の筆を使いました。

マングースなどがおすすめです。

 

着彩・NO49

また気になる部分を描き込みます。

ぼかすと絵の具が多少とれてしますのと、ぼやけてしまうことから、何度か描き足して形を明確にしてください。

グリーンや赤、黄は、乾きにくいので、ラピットメディウムを多めに使っても大丈夫です。

 

着彩・NO50

ここで乾燥してつや消しになった部分に、まずはルツーセ(加筆用ニス)を塗ります。

(ルツーセはツヤがなく、色調をはっきり把握できないときに使います)

そしてその上から本描きの着彩を行っていきます。

カドミウムイエローとプライムイエロー、シルバーホワイトで行います。

 

着彩・NO51

細かい細部のデコボコを強調します。

筆跡をなめらかにするため、細いインターロンの筆を使っています。

ここでも、明るい色、中間色、基本色の3つのトーンで描いていく。

 

着彩・NO52

消えた影色をオイルを少し多めにつけて描き込みます。

静物画は動かない物ですが、動きを出すことも大事です。

画面のなかに動きを感じるように演出してみましょう。

 

着彩・NO53

北窓の昼間の柔らかい光を表現します。

今回この画面の主人公は2つのカボチャですので、先に描きこむ。

質感と量感を意識していきましょう。

 

着彩・NO54

光の反射のハイライトを描き込みます。

ウルトラマリン、アイボリーブラック、シルバーホワイトで表現します。

 

着彩・NO55

細かい光をとらえ直します。

画面から離れて、絵の全体を見直してください。

細かい光を点描で捉えている

 

着彩・NO56

細部のデコボコと色合いを調整し直します。

自分の「理想の絵の色」を見つけることは、絵画には大切です。

見たままではなく自分のイメージでデフォルメしたり、色彩を少し変えることも考えていきましょう。

 

着彩・NO57

薄い色を重ねて質感を出していきます。

木のテーブルには、無数の線が見えますので、このように光の反射でいろんな色が見えてきます。

どこまで描くかは自由ですが、描く部分と省略する部分を選ぶようにする。

 

着彩・NO58

暗い部分の光の反射を描き込みます。

ここでも何度も同じような作業になりますが、この作業で普通の単純な絵との違いが出ます。

普通の絵より薄塗なので、今回はこのような手順で画面の厚みを出します。

・テーブルはどっしりしているので、本当は厚塗りの方が良い。

 

着彩・NO59

カボチャの影のきつい部分を中心に描き込んでいきます。
片方の目をつむり、片目で見てマッスをとらえましょう。

片目だと細かい部分が見えなくなり、陰影がはっきりするからです。

 

着彩・NO60

乾燥している部分にルツーセを全体に塗る。

ルツーセは、正確な色彩を把握できるようにします。

また、ルツーセは下の絵の具を少し溶かすので新たに乗せる絵の具との密着を助ける役割もします。
ここでも細い筆で描き込んでいく。

 

制作過程まとめ

お疲れさまでした。

今回は、一番難しい作業が多かったと思います。

同じように見える作業ですが、自分の絵を決める大切な作業です。

ここで、みんな自分の絵を壊してしまう人や悩む人が多いのです。

あっさり上手くいっている場合は、この作業を飛ばしてもいいほどです。

ベテランになれば、もっと他の方法を使うことができてきますので。

今回は、あえて基本に忠実に描いて行く作業をしているので、

あせらずにここのところをマスターしてください。