静物画を描く(F6)・3

静物画という分野は、17世紀のバロック時代に確立されました。

それ以前にも中世の時代から背景などに描かれてきましたが、絵として独立していた分野ではありませんでした。

静物画や装飾は、絵の修行でいちばん最初に描かされる分野です。

もともとは背景の一部でしたが、市民たちの娯楽の一つとして楽しめる絵画として成長していったのです。

18世紀になると、王侯貴族も静物画や風俗画に関心が高まり、その地位は風景画に勝る扱いを受け人気がありました。

絵としては画家の個性が出やすく、また、初心者の画家には最高の勉強材料として描かれてきました。。

我々も歴史的な静物画の本質を元に、油彩画の楽しさを感じながら制作していきましょう。

 

中描き2

前回に引き続き画面のモデリングを行います。

この作業は、何回も同じようなことをしているように見えますが、これを繰り返すことで頑丈な画面になっていきます。

一度や二度だけ塗る油絵との違いがはっきり出ます。

厚塗りではなく、薄塗りによって厚みを出していくという方法です。

初心者は一度で全てやることを避けるようにし、同じ色彩を繰り返し塗るような作業で、ベテラン画家とのテクニックの差を埋めることができる。

絵具は、おく感じで塗り、なるべく濁らないことを意識することです。

 

制作のポイント

リアルに描くのではなく造形的に物を見て、立体を意識するのが重要です。

まずは面を意識して、形を整えることを中心に作業しながら、空間を表現するように描いて行きましょう。

・実物に近い色彩で描く

・輪郭線を決める

・面を意識する

・面の色彩を把握する

・量感を出していく

・距離感を出す

これらを意識しながら描いて行きましょう。

細かく分析しながら考えること!

 

画材の使い方

色を作る場合、パレットの上でペンティングナイフかパレットナイフを使って絵の具を練り合わせます。

少量でしたら、筆で混ぜてもかまいません。

筆先に少しつけて、絵の具と混ぜ合わせて使うと使いやすい。

今回オイルにフラマンシッカチフを少量と、パレットにラピットメディウムを置いて、絵の具に混ぜました。

ラピットメディウムは、多く使うと絵の具が速く乾燥しますので、調節して使ってください。

このメディウムとシッカチーフは光沢のある画面になります。

(画面保護に非常によく、耐久性がありひび割れを防ぎます。)

映像でも画面が光っているのはそのためです。

絵具は、一日から二日で乾燥します。

(フラマンシッカチィフは入れすぎるとべたついて描きにくくなりますので、注意してください)

(夏場は必用ないと思います)

 

着彩・NO27

油絵は、乾かないうちに絵の具を重ねることがある程度まで可能です。

それを利用して、絵の具をのせて色を作る。

まだこの段階でも光と影を意識した、細かい面作りを考えて描いてください。

 

着彩・NO28

左のカボチャの細部を描いてボリュウームをつけていきます。

明るめの色、プライムイエローとカドミウムイエローアゾを使いました。

 

着彩・NO29

テーブルとの境界線の影を描き込みます。

バーントアンバー、アイボリーブラックをまぜて色を作りました。

カボチャの影も、ついでに描いて行きましょう。

 

着彩・NO30

カボチャの全体の影の幅を見直します

モチーフの光は自然光なので、毎日見え方が違います。

色彩は自分が気に入る色彩を選びそれに近づける。

自分の理想の色彩を探さなければなりません。

 

着彩・NO31

明るい部分に色をのせていきます。

色は大きく3色の色、明、中、暗で描いて行く。

デコボコした凹凸を意識しましょう。

 

着彩・NO32

全体にマースイエローと、バーントアンバーをまぜた色を軽く塗ります。

明るいハイライトも描き込んで、行きましょう。

油絵の具は何度も塗り重ねることで、厚みと質感を作りあげることができます。

 

着彩・NO33

消えてしまった影色を塗りこみます。

先端部分の明るい部分を、ロージェンナーとシルバーホワイトで描きます。

絵具をのせる感じを忘れないように。

 

着彩・NO34

テーブルの光の反射の下地を塗ります。

アイボリーブラック、シルバーホワイト、ウルトラマリンで色を作りましょう。

一気に明るい色を塗らず、手前の色彩で描いておきます。

 

着彩・NO35

いちばん反射がきつい部分は、ホワイトを多めに入れて色を作ります。

この段階では、白を単独では使いません。

よく見るとテーブルの上には、多くの色彩が見えてくる。

いろんな色を作ってみましょう。

 

着彩・NO36

テーブルを描き込むことで、だんだんカボチャの存在感が増してきました。

少し重さが感じられ、物の存在感がはっきりしてきました。

ここからリアリズムが生まれてきます。

 

着彩・NO37

片目でヴァルールを見直して、テーブルの遠近感を意識しながら奥と手前を描いてください。

テーブルは奥行きがあるので、前から後ろまでの色のトーンが大切になります。

遠近感をよく見ましょう。

 

着彩・NO38

テーブルの手前は直角になっているので明暗をはっきりさせます。

光は動いていると考えてください。

一定しているようで、光の色は移り変わります。

 

着彩・NO39

左のカボチャの影を薄い絵具で塗っていきます。

隣のカボチャの影色に合わせて調節しましょう。

指を使うことで、ランダムな柔らかさを表現できます。

丸みを意識してください。

 

着彩・NO40

再びプライムイエローとパーマネントイエローを使って着彩します。

物の色の幅は広く、見れば見るほど色彩が見えてきます。

色彩をよく観察しながら、描いて行きましょう。

失敗しても、何回でもやり直せるので、気にしなくて大丈夫です。

ここではマングースの筆を使いました。

 

着彩・NO41

カボチャの明るい部分の色彩を描き込みます。

細かい光を意識していき迷う。

光も色なので、ロージェンナーにホワイトと、パーマネントイエローで光の色を作ります。

軽く柔らかく色をのせます。

 

着彩・NO42

布の明るい部分に、カドミウムレットディーブ、シルバーホワイト、マルスバイオレットで作った色をのせていきます。

主に布はこの三色をまぜて描いています。

影には、アイボリーブラック、マルスバイオレットを、カドミウムレットディーブを調節して作ります。

筆はテンの筆やナイロンの筆です。

自分が使いやすい筆を使ってください。

 

着彩・NO43

絵具がぬれている状態で影色と中間色を作り質感をだしていきます。

この動画は、速描きなので、ゆっくり自分のペースで絵の具を整えていってください。

ゆっくり筆を動かして、よく見て色を塗っていきましょう。

色をあまり濁らせないのがポイントです。

 

制作過程まとめ

カボチャんの形がほとんどできてきました。

全体のモデリングはまだ完了していませんが、ある程度雰囲気は出てきました。

全体を見渡して自分の作品が、どのように進んでいるのか見直してください。

絵を遠くにおいて逆さにしてみると、形の狂いや遠近感の狂いが分かります。

とにかく、この段階で立体感は出しておきましょう。

よく見て形の狂いを見つけて、二つのカボチャの距離感にも注目してください。

実践する場合は、モチーフの周りの空間をしっかり描くように!

お疲れ様です。