人物画を描く(P10) NO.2

今回はモノトーンのカマイユ画から、下描きのモデリングを行っていきます。

人物画の描き方にはいろんな方法がありますが、手順として今回も初心者が何度でも描き直せる方法で行います。

初期ルネサンス方式は鉛筆デッサンが必用になり、デッサン力がある中級者向けですが、今回は19世紀の画家がおもに使う方法とバロック式をまぜた感じで描いて行きます。

この方法は初心者でも、十分に人物を描くことができます。

はじめに

今回の人物画には、西洋人の少女を描く事にしました。

東洋人でもいいのですが、使う色が少し違ってきますし、油絵は西洋絵画なので伝統的な勉強には西洋人の方がいいと思います。

初心者にも理解しやすいので、制作も楽しめるでしょう。

西洋人を描くメリット

・デッサンの勉強を同時にできる

・名画を参考に勉強できる

・下地の色を生かせる

・東洋人と違い新鮮な目で描ける

・使う色彩が明かるい

・西洋人が描けるようになると、東洋人を簡単に描ける

・陰影や面を勉強しやすい

・人物画の理解力が早まる

と、いうことを念頭に置いて制作してください。

そして今回の描き方では、下描きが全てではなく、描いて行きながら表情を確定していく方法です。

要するに、デッサン道理ではなくていいということです。

もし、デッサン重視になると下絵は動かせません。

ボッティチェリやホルバインのようなデッサンに100%忠実な方法だと、初心者にはキツイ仕事になります。

人物画の難しさは、1ミリ2ミリの違いで、人物の表情が大きく変わってしまうところ。

なので、今回の方法は、「自分の好みに仕上げていける」ということで、100%似せるような仕事ではありません。

造形と色彩を使い、自分の理想的な人物を描くための勉強だと考えてください。

何回か経験していくことで、写実的な絵も描けるようになります。

ここで重要なのは、人物の描き方を知り、絵の具を扱いを知り、絵画的な画面を創ることです。

魅力ある人物画を描くコツをつかみとっていきましょう。

 

必要な色

★この人物画に必要な色彩を作るのに使う絵の具

・バーンとアンバー

・バーントシェンナ

・ローアンバー

・ローシェンナ

・ヴァン・ダイクブラウン

・アイボリーブラック

・ピーチブラック

・ウルトラマリン

・ライトレッド

・カドミウムレッド

・ウィンザーレッド

・イエローオーカー

・マースオレンジ

・マルスバイオレット

・クリムソンレーキ

・ネイプルズイエロー

・シルバーホワイト

今回の授業では、絵の具を少し多く使いました。

人物画と風景画は、色の数を増やして授業していきます。

 

自分で絵の具を混ぜ合わせ、色を作れるように訓練すること。

画家として絵を描いて行くには、自分の経験が必用です。

色彩を自由に作れるようになることで、あなたはどんな絵でも描けるようになれます。

このような事は、誰も教えてくれないものなので、自分の経験と知識を積み重ねていくことが重要です。

自分で実験することも忘れないでください。

 

制作のポイント

パーツを分けていく

まず、固有色で人物をパーツ別に着彩していきます。

顔、髪の毛、首、体、バックに分けて、描いて行きましょう。

カマイユで下描きしたデッサンを元に着彩していきます。

・濃い色(陰影)

・中間色

・明るい色(光)

に、それぞれ色面をのせていくのですが、描いた下絵はモノトーンですが、色面には色がついています。

その色を見分けて色をのせていく作業が、人物画では難しいと考えられています。

 

顔の色を作る

◆顔の色には

・冷たい青みがかった色

・赤い血色

・柔らかな黄色

・ハイライトの白い色

・影の茶色

があり、それに合わせて着彩していきます。

観察して見分ける眼を持ちましょう。

 

今回の基本色(※重要)

◆ライトレット、ローアンバー、ウルトラマリン、シルバーホワイトが人物の基本色なので、この4色でいろんな色をまず作ってください。

・濃い色はウルトラマリンとローアンバーを多めにライトレッドをまぜる。

・肌の赤っぽい色はライトレッドとホワイトで調節。(または、ウルトラマリンを少し入れる)

・ホワイトは入れたり、入れなかったりして色の幅を調節します。

この4色で5~6種類のパターンを頭に入れておいてください。

まだまだたくさん作れますが・・・・

この基本色に他の色を足して、制作していくことになります。

どんな色が出かがるのか、自分んで作ってみましょう。

 

豚毛の筆を使う

今から下描きのモデリングを行うのですが、なるべく豚毛の筆を使うようにしましょう。

画面も大きいのですが、下描きのモデリングを豚毛ですると、あとから絵の具が乗せやすいからです。

巨匠の名画をみるとほとんどが豚毛で描いています。

今の豚毛と古代の豚毛は品質がだいぶ違うのですが(古代の豚毛は今より柔らかい)、柔らかいものやビニールだけだと仕上げるときには描きにくい画面になりやすいからです。

豚毛と他の筆を並行して使い、制作していくことをおすすめします。

 

30・油彩下描き

ビニール筆で輪郭の濃い色合いに着彩していきます。

下地にそって、濃い部分に色塗り、描いて行きましょう。

ライトレッド、ローアンバー、ウルトラマリンを組み合わせて、影色を作ります。

ホワイトを入れることで調整を可能にします。

 

31・油彩下描き

見えにくいですが、気にせず自分のデッサンの中間色の部分に着彩していきましょう。

ライトレットと、ウルトラマリン、ホワイトで赤い部分に塗っていきます。

 

32・油彩下描き

このモデリングは大切なので、絵の具を少し筆に含んだ状態で、描いて行きましょう。

筆は軽く持って描いてください。

 

33・油彩下描き

下絵の面に忠実に絵の具をのせていきます。

いったん下絵が消えていきますが、気にしないようにしてください。

この作業が分かりやすくするための下絵でしたから。

(プロになれば細かい下絵は、必用ありません。)

バーントアンバーとアイボリーブラックで、髪の毛に着彩。

 

34・油彩下描き

目の位置はあまり動かせませんので、きっちりきつめの線で描きます。

全体のばらついた色を中間色で、調節していきます。

パズルのように埋め合わせてください。

 

35・油彩下描き

細かい部分が消えたら、描き起こしが必用です。

顔のポイントになる部分は、常に消えたら描き起こいておきましょう。

輪郭も1ミリ単位で消えたり、増えたりしますので注意してください。

 

36・油彩下描き

いちばん影が強い部分は鼻筋と眉間です。

その部分と比較して、色を把握していきます。

目、鼻、口、耳、アゴなどの位置を守ると、絵は安定します。

 

37・油彩下描き

軽く絵の具をのせていきます。

明るい部分と影に大きく分けてみましょう。

筆の大きさは自由です。

使いやすい大きさの豚毛を使ってください。

 

38・油彩下描き

マルスバイオレットにウルトラマリンとアイボリーブラックをまぜ、着彩していきます。

ここでも、大きく色を2つに分けて塗ってください。

髪の毛の暗い部分にも少し塗ると、いいかもしれません。

まだ、この段階では、自由に色を試しに置いて行くといいでしょう。

 

39・油彩下描き

バックにバーントアンバー、アイボリーブラックで大ざっぱな色をつけます。

角を濃いめの色調にしてください。

顔の周りは明るめにしておく。

 

40・油彩下描き

肩にホワイトを入れた、マルスバイオレットで明るい面を描き込みます。

肩はこの絵でいちばん手前に位置していますので、手前に出てくるように意識してください。

顔にライトレットとホワイトで赤みを強調します。

僕が筆を置いた部分が赤い部分だと、考えてください。

 

41・油彩中描き

ここで顔のハイライトを描き込みます。

おでこやホホ、鼻先アゴなど、骨がある部分が光るようになっています。

ハイライトは、ライトレッドに白を少し多めにしただけです。

 

42・油彩中描き

細かく色彩を施していきます。

絵の具は濡れている状態です。

このまま一気に面を意識しながら描き進めます。

 

43・油彩中描き

赤みを感じる影の部分に、濃いめの赤を入れます。

ライトレッドを多めに使います。

この段階では、まだ大きな面をとらえて色味を計算しているところです。

顔の部分の付け根を強調しておきます。

 

44・油彩中描き

一日乾かしました。

髪の毛の編み込みの形を描きますが、前もってダーマトグラフの白で下描きしておきました。

顔のハイライトを加えます。

二つの肌色で光を描き込んでいきました。

 

45・油彩中描き

中間色を塗っていきます。

徐々に光と影のあいだを塗りこんで、立体感と同時に質感を意識していきましょう。

 

46・油彩中描き

濃い色で細部の丸みを作り、影も同時に描き込みます。

デッサンを描く感じで、作業を進めていきましょう。

細い筆は、ビニールのものを使いました。

 

47・油彩中描き

細部を描いて行くとき、自分がこの後仕事することを計算して描き込んでいきます。

次に乗せる色を想像しながら描いていく。

色のトーンも考えて隣に来る色を間違えないように。

 

48・油彩中描き

絵の具がぬれているあいだに、どんどん色を載せていきます。

画面上で、濁らないように色を混ぜてつなげていきましょう。

軽くなぞってみたり、たたく感じで描いて行くと綺麗に混ざります。

ここで、角ばった部分をいかにして丸めるかを考えてみましょう。

 

49・油彩中描き

赤い肌色を点描を置くように、ほほに載せてなじませます。

明るい色もこの段階では、これまでと同じです。

ここまで、使った明るい色彩は、ライトレッド、シルバーホワイト、少しのウルトラマリンだけです。

白の調節をして、2色から3色で描いて行きます。

 

50・油彩中描き

髪の毛にローアンバーとバーントアンバー、少しのローシェンナーを混ぜて塗ります。

影はブラックにバーントアンバーをまぜます。

3つのトーンで大きく塗ってください。

 

51・油彩中描き

明るい光は肌色を塗っていた筆で描いています。

これは肌との統一性を目指すからです。

今の段階では、下描きでどのような雰囲気になるのかを、試していると思いましょう。

少しのミスは気にしないように、リラックスして描いてください。

 

52・油彩中描き

ライトレッドに少しのウィンザーレッド、ホワイトを入れて、唇の色を作り軽く塗りました

この色も鼻の下や目元にも使いました。

影の基本色と混ぜ合わせて使うと、薄い影色に使えます。

 

53・油彩中描き

今まで使ってきた基本色の三段階を使い、目の部分を描き込みました。

このあたりから、慎重によく面を意識して色を置いたり、重ねて色を作ったりして形を整えていきます。

何度も描き、間違えたときは布でふき取り、描き直しながら練習しましょう。

 

54・油彩中描き

ここでも基本色の影色を使い、唇を描き込みます。

基本色にウィンザーレッドを少し、入れ唇の影の面を作っていきます。

影色と、レッドが入った色を組み合わせて細かい形を作っていきましょう。

面の3段階を意識することで、立体的に表現できます。

まだまだ濃い影を残しておくと、ポイントを忘れずに描き進められます。

 

55・油彩中描き

鼻の形がどうしても崩れやすいことと、ほほの反射のバランスが難しい部分です。

目元の光の入り方や、顔のハイライト部分に目を向けて、

それに対するまわりの色彩に注意しながら描いて行きます。

 

56・油彩中描き

眉毛の上の境界線、鼻の穴の光、など丸みを感じさせていきます。

ハイライトに白っぽい肌色をのせています。

先ほどからしている作業と同じように、さらに細かく描いて丸みを作っていきましょう。

 

57・油彩中描き

鼻先にハイライトを入れ、とんがったはりを出します。

鼻のふくらみ、目のふくらみ、ほほのふくらみを出していきます。

小さな〇がたくさんあると考えて、描いてみてください。

丸を立体的に描くには、どのようにするべきなのかを考えましょう。

ここで一日乾かします。

 

58・油彩中描き

乾いた画面に、ダーマトグラフで正確な線を引いておきます。

その上から輪郭線を描きます。

眉毛と目、鼻、口、首など大切な部分に線を入れました。

 

59・油彩中描き

青を少し多めに入れた基本色で、微妙な色を入れていきます。

首など、顔全体に赤い色と対照的な変化をつけることでより、血色が強調されます。

 

60・油彩中描き

先ほどのグレーっぽい色を骨がある部分に乗せます。

この色を下地にすることで、あとからさらに上にのる色が冴えることになる。

 

61・油彩中描き

ライトレッドに少しだけ、カドミウムレッドを入れました。

豚毛で軽くなぞるように塗ります。

ライトレッドでも、なぞっていきます。

 

 

 

62・油彩中描き

ある程度、下地ができてきたので、ここからもう一度面を起こします。

細かい部分をマングースの筆で整えています。

肌の感じを出していくために、ランダムに作業を行います。

 

63・油彩中描き

濃いめのレッドを影の隣に塗っていきます。

耳にイヤリングの影も描き込みました。

 

64・油彩中描き

ハイライト部分に、ライトレットシルバーホワイトに少量のイエローオーカーを入れています。

すこしずつ肌色に近づけていきます。

目元にも反射を入れ、再簿に柔らかさを取り入れていきましょう。

 

65・油彩中描き

さきほどと同じく、ハイライトを入れ柔らかい筆で、全体をなじませます。

なじませるときは何もつけていない、新しい筆で行います。

マングースがおすすめ。

色をぼかすときにも使えます。

 

授業まとめ

下描きから中描きまでの作業を見てきました。

面倒な下描きですが、人間は骨、筋肉、血管、皮膚という体の層があります。

この層を作り、骨格と皮膚の質感を表現するための下地です。

骨と、筋肉、血管、皮膚は写真などには写りませんが、実際の人間にはそれを感じます。

僕が行っている、この方法はバロック期以前からの手法の一つです。

なので、写真の色などは使っていません。

基本色も、古代の色彩です。

ここまでの授業は、2~3日で描けると思います。

動画なので、長く感じますが実際描くとすぐに終わります。

毎日1~2時間じっくり取り組んでください。

次回は、この上からさらに描き込みます。

お疲れさまでした。