理想美とは、自分の美学の中にあり、現実的にはまれな美しさを言います。
奇跡的な美は自然の中に存在していますが、誰もがいつも見れるものではない。
画家の務めは、そのようまれな美しさを絵に表現して、
多くの人たちに見せることだと古代から考えられてきました。
画家は自分の美学を絵筆に委ね、その美を永遠のものにすることができる。
画家は自分の美学をキャンバスに描くことで夢の実現に近づいていけます。
仕上げに向けて
今回は、ついに人物画の最終回です。
「絵の仕上げ」というのは、見て描くままで終わるのでははなく、
最終的には「画家の美的感覚」で絵を仕上げるというふうに考えてほしい。
もちろん、大切な部分は見て描きますが、ほとんど絵としての画面の調節や、
自分の感覚で絵として成り立っているのかをよく考えなければいけない。
現実や写真と違い、絵画は絵として必要な部分を描き加えたり削ったりして、独立した絵画として仕上げないといけない。
現実にとらわれず、ここからは自分の美意識に従い、絵画世界を構築していくのが最も重要です。
制作のポイント
最終のチェックポイントですが、すべてを見直して、こだわって描いてほしい。
顔の色彩から髪の毛の色彩などに変化がおきると、それに合わせてすべての部分を調節し直さなければいけません。
それをしない場合、全体のまとまりはそれほど良くならない。
今回の細部の大まかな変化に、どのように対応するのかをじっくり考えるようにしましょう。
作業自体にそれほどの違いはありませんが、よく見ると違いもあるので、そこのところをよく見てください。
顔の表情にこだわる
顔の造形は、僕の好みに描き替えていきます。
特に鼻はアゴ、口まわりなど、ほほにも少しの造形と色彩的変化を加えました。
基本色は同じですが、影色の少しブラックやカドミウムレッドを加えています。
首との付け根にも注意が必用。
目元や口に魅力を注ぎ込み、女性らしいく表現します。
髪の毛の処理
今まで何度も髪の毛を描きましたが、ここで肩に乗る髪の毛を描き込みます。
この部分は絵の最大の魅力を引き出す部分です。
そして色調の流れとハイライトがポイントになる。
首飾りをさりげなく描く
首飾りは軽く描き、あっさりとした感じで描きます。
重みを無くすことで、画面が少し軽くすることにつながる。
絵具の強弱でバランスをとることも大切です。
首飾りを中心に、首や服を描き込み新たの空間を作り出すことができます。
首飾りはハイライトの入れ方に注意が必用です。
肩の表現
髪の毛が肩に乗ることで、絵画としての肩の役割が非常に重要になる。
肩は平たくならないようにして、手前に出過ぎないようにしましょう。
顔との距離感をしっかり意識して描いてください。
衣服の色彩のトーンが複雑ですが、処理を念入りに行うように。
バック
バックは暗めですが、全体の中心部分から光が広がるように明るい色彩を中心に置きます。
この抽象的な表現は、キネティック絵画の要素がありますが、単純に左手前からの窓の光だと考えてください。
窓からの光による人物の影も描き込んでいるます。
空間を表現するために、柔らかい筆でぼかしの方法を使う。
細密なハイライト
顏や髪の毛、首飾りの細部のハイライトは、絵に生命を吹き込む重要な作業です。
細い筆を使い、細密な描写をするので腕の支え棒を準備すると描きやすくなります。
大切な作業なので、描き直しがないように慎重に色を決めてから塗りましょう。
327・油彩本描き
人物の輪郭部分に丸みを出す。
極端な色より中間色を置くようにして、平板さを避けます。
髪の毛の分け目は、反射光を意識して明るい色と、下塗りの色をなじませてトーンを作る。
328・油彩本描き
少し薄さを感じる部分に、もう一度下地を塗り新たに着彩します。
この時自分が気に入らない部分のやり直しという事なので、上手くいっている場合は修正する必要はありません。
色彩や、髪の毛の表現ができていない場合にだけ行いましょう。
329・油彩本描き
髪の毛の柔らかさと、存在感を強調していきます。
色彩の幅とトーンの美しさを考えながら描きましょう。
330・油彩本描き
ウェーブした髪の毛をさらに描き込んで、細かい光の色彩を描き込んでいきます。
ここからは、自分の絵作りなので、自由に頭で考えながら筆を動かして描きます。
自由な発想によって、オリジナリティーを生み出せるようになろう。
331・油彩本描き
手前の髪の毛をリアルに強調して、魅力を引き出します。
微妙な色彩を施し、美しさを追求してください。
この部分は画家にとって一番楽しい部分なので、
じっくり取り組んで研究しましょう。
332・油彩本描き
暗い部分もある程度の色彩を施してバランスをとっていく。
さきほどと同じ勢いで描き込んでください。
ここでは、下地の色彩がメインになります。
333・油彩本描き
マースオレンジをベースに、明るい部分を描き起こしていきましょう。
ホワイトや、ネープルズイエローを混ぜ合わせて、影の中での光を作ります。
下に行くほど、少し暗くなるのでトーンを意識するのがポイントです。
334・油彩本描き
明暗の強調をしていきます。
明るい光を少しずつ下の方に伸ばしていく。
二つの筆を上手く使いこなすとバランスよく描いて行けます。
軽く大胆な筆使いを心がけましょう。
335・油彩本描き
ハイライト部分を髪の毛全体に入れながらまとめます。
細部表現は自由に行えるので、よく考えて色を置いていきましょう。
自分の感覚で描き込みますが、色が飛ばないように注意は必用。
ここまでくると細かい部分まで、だんだん見えてきていると思います。
336・油彩本描き
髪の毛と同時にバックも空間を意識してぼかします。
髪の毛は奥行きを感じさせるように、少し遠近を意識するといいでしょう。
337・油彩本描き
頭の丸みをつけながら髪の毛の柔らかさを目指します。
ヴァンダイクブラウンとバーントアンバーを使い色彩を調整しましょう。
あっさりとした光の表現で、髪の毛の明るさを表現しました。
338・油彩本描き
唇を明るくして女性の魅力を引き出すため、ライトレットにホワイト、カドミウムレッドを少量混ぜました。
丸くなるように細い筆で細かく描いて行きます。
鼻の下にも同じような色を少し塗ってみました。
339・油彩本描き
ライトレットにピーチブラックを少し混ぜて影色を作り、それに合わせて面を作ります。
明暗がはっきりすると次は、その中間を埋めることも頭に入れておきましょう。
口まわりは大変微妙な変化があり、少しの違いで表情が変わってしまいます。
340・油彩本描き
口先の部分の肉付きを表現していますが、ほほとの関係が難しい部分です。
少し濃い色で描いて、上から薄い色でぼかすようにします。
また、唇周りもかたいので、肌色との調和も必要だと感じています。
341・仕上げ
肌の明るさを出して、髪の毛に負けないくらいのインパクトを目指します。
細部も描き込みながら、全体の色の流れがうまくいっているかもチェックするようにしましょう。
342・仕上げ
耳の部分も色彩を増やして、顔の色調に合わせる。
唇に使った色もまぜて使うと、色の関係性が生まれ顔としての一体感が得られます。
かすかな光の表現を使い、全体をぼかしながら描くといいでしょう。
343・仕上げ
ポイントのハイライトを強調して、リアリティを演出しましょう。
耳と同時に、その周りの髪の毛にも注意をはらっておくと、より耳の存在感に魅力が出ます。
仕上げるつもりで、描ける部分は描いて行きます。
344・仕上げ
ほほの赤みは、カドミウムレッドを少しネープルズイエローに混ぜています。
肌の柔らかさを意識しながら作業を進めていきましょう。
345・仕上げ
唇の形を明確にして影の部分を描き込みます。
奥行きがある部分に丸みを表現する。
唇はあまり描き込む必要はありませんが、全体の描写に合わせて描きます。
影の部分のほほや、口まわりに合わせて描くようにすると、うまくまとまります。
346・仕上げ
影の部分を基本色に、カドミウムレッドを少しとホワイトで調整して、色の幅を増やしていきます。
明るいい部分で使っていた肌色もうまく利用して、ほほや目の下、鼻筋などを柔らかくします。
輪郭や鼻筋目元の角を丸めるように描く。
347・仕上げ
ブラックを入れた唇の色を、アゴのラインにも使います。
影色の統一が必用なので、この色を使うことでまとまりが出て、ひきしめることができました。
348・仕上げ
アゴの下部分の色彩を入れて、もう一段面を作り、顔の丸みを自然な状態にしました。
違う角度の色面を作ることで、口やホホとの関係が違ってくる。
これによって肌の柔らかさと顔の表情も少し変化します。
349・仕上げ
鼻の穴周りの面を軟骨を意識して描き込みます。
影の色と、鼻の下や口の上の細かな部分は、鼻から伸びているように描き、口とのつながりを自然に表現しなければいけません。
鼻の明るい部分に赤みを少し加え、ほほとの違いを出します。
350・仕上げ
鼻は口と違い少し、かために描くようにしてください。
意外に難しいのは鼻の下の処理です。
そして、鼻の丸みをつけるのを忘れないように。
351・仕上げ
口元の部分が硬い感じに見えるので、少しいじって変化させました。
豚毛で絵の具をなじませ、不要な部分をぼかします。
ここで、まつげを描き込みます。
352・仕上げ
もう一段階明るいトーンの流れを入れて、顔のリアル感も出していきます。
白目にうっすらと光を入れていきます。
目に生命感を持たせるためです。
シルバーホワイトでハイライトを強調。
353・仕上げ
まぶたにも少しトーンを入れます。
目の下に赤みを入れてボディーを入れ、影の中の赤みを表現します。
アゴ部分も大きな面を作り、色調を整えました。
354・仕上げ
ほほの色とハイライトの色を使い、柔らかい化粧を施します。
これによって肌の質感が上がり、美しい効果が出る。
全体的に少しぼかしも入れています。
355・仕上げ
ほほを少し明るくし、まつげの部分を少しぼかしました。
うっすら色を影に入れていき、さらにぼかしを入れています。
丸みをつけるため、目の周りを描き加えました。
356・仕上げ
ぼかした次にまた細部を描きます。
ハイライトを入れて、まつげとまぶたの線を入れ直しました。
そして、アゴのラインを描き足し、鼻にもうっすら明るい色を入れルツーセを塗った首にも着彩。
357・仕上げ
黄色っぽいハイライトと、ピンクっぽい肌色を上手く使い分けることで、
柔らかさを出していくことができます。
肌色の色彩をいくつも作り、部分的に使い分けると顔のリアリティーが生まれる。
色彩を見分ける場合は、筆先の絵の具の色をよく見てください。
358・仕上げ
首にも赤みがある色を施し、顔との色彩をつなげました。
これによって首のリアリティが増していきます。
首に入る線の部分が難しい部分です。
首の色を顔の部分にも使って、肌のトーンを整えることができました。
359・仕上げ
イヤリングの影色を描き起こします。
白い肌とのコントラストを強調することで、イヤリングの物質間も密かに浮かび上がる。
肌も明るくしていき顔と近い色になりました。
360・仕上げ
首の表現のポイントです。
ねじれた筋肉の部分にハイライトを入れ、動きにはりを持たせました。
顔の陰影の流れに合わせて中間色の流れを作り、自然な感じを目指します。
豚毛を柔らかい筆を交互に使い分けていく。
361・仕上げ
上塗りを施し、さらに顔の皮膚に近づける。
柔らかい刷毛でぼかすとうまくなじみます。
後ろに回り込む部分にも、同じようにしていきましょう。
ネックレスとの質感の違いがはっきりすることで、絵の柔らかさを出すことができます。
すべて同じ調子で描かないようにすることで、画面の雰囲気も違ってくる。
362・仕上げ
顔にハイライトを入れます。
鼻の陰影を強調し、ハイライトはネープルズイエローにシルバーホワイトまぜる。
ハイライトを入れたら中間色の部分と、光をよく見て調整しましょう。
363・仕上げ
少し、頭の色調を落としました。
そして明るい部分を描き直します。
頭部分のハイライトの色を調節し直し、まとめます。
これによって、顔の色彩が強調されることになりました。
364・仕上げ
首飾りのハイライトも入れていきます。
先ほどと同じようにネープルズイエローに、シルバーホワイトを入れますがホワイトを少し多くしました。
ハイライトを入れるときは慎重に行ってください!
365・仕上げ
ウルトラマリンとシルバーホワイト、少しのアイボリーブラックでバックに明るいブルーを表現していきます。
画面の雰囲気をブルーにすることで、髪の毛のイエローが強調されインパクトが出ます。
366・仕上げ
バックの空間を出すため、ぼけた感じにしました。
胸元をいちばん明るくして、中心を決めておきましょう。
背中部分もそれに合わせた色調を塗っていき、全体のバランスをイメージしていきます。
367・仕上げ
バックで使った色を服の部分にも上手く使い、
服の柔らかさや反射光と空気感を得ます。
うっすらつけるか部分的に使うといいでしょう。
368・仕上げ
反射光の色彩として少しバックの色を塗ってみました。
うっすら描くので、不要な部分はふき取ってください。
元の色を交互に使い描き込みます。
369・仕上げ
髪の毛のハイライトを入れます。
細い筆で、顔のネープルズイエローに近いホワイトを入れていきます。
部分的な作業になり、細かいので慎重に行ってください。
失敗した場合は布でふき取り、ルツーセを塗ると元に戻りますので
もう一度やり直すことができます。
370・仕上げ
部分的な光の効果を利用して、絵画的な美しさを作り出します。
ハイライトの使い方次第では、絵画の印象がまったく違ったものになりるので、
自分の美的感覚が大きく関係してきます。
むやみにハイライトを強調知るようなことはせずに、計画的に行ってください。
371・仕上げ
肩の近くはいちばんポイントになる部分なので、注意しながら作業を行いましょう。
あまり極端な事はさけて、自然に感じるように表現しましょう。
距離感を意識することが最も大切です。
372・仕上げ
ルツーセをまず塗り、細かいハイライトを入れます。
細密なので、使いやすい筆を選ぶことをおすすめします。
373・仕上げ
僕は目が悪く、カメラがあることで近づいて描けないのもあり、手を置く平たい木を置いて描きました。
何でもいいので、手をつけて描くと細密描写がしやすいので竹の棒や、木の棒などを利用するとよいでしょう。
374・仕上げ
さらに細密描写をしていきます。
最終調整なので、慎重に全体をよく見て描いてください。
頭部に近づくと暗くなり、うっすら光が入るように描くのがポイントです
375・仕上げ
一番表現が難しい部分です。
奥に入っていきながら、光と回り込みを同時に描いて行かなければいけない。
反射光のような表現で描き込んでいきましょう。
376・仕上げ
最終調整を行います。
ルツーセを塗り、耳の周りを少しぼかしました。
髪の毛のぼかしを整え描き足す。
頭部の光を描き加えていくので、ルツーセを使いながら作業しました。
細かい光を描き込み、ぼかしながら色彩を調節します。
これで完成とします。
(まだまだ描けますが、これ以上は中級者の限界だと考えています。)

制作を終えて
人物画の制作は画家たちの中で、いちばん難しい分野だと考えられています。
見ていて人物は難しいと感じたかもしれませんが、動画のように何度も絵具を使って作業していくことで、だんだん慣れてきますので心配ありません。
制作の流れを2つの方法に分けて、同時に説明しましたが、前半の部分から仕上げても絵にはなります。
動画では、長く感じたかもしれませんが、2週間ほどで絵は完成させることも可能ですので、難しく考えず自分に合う方法を見つけ出していきましょう。
僕の授業は、初心者が何回失敗しても描き直せ、最終的に絵を綺麗に仕上げることが可能というコンセプトなので、部分的に組み合わせて、独自の方法で描いて行ってほしいと思います。
人によって、レベルや理想が違うので、今回の動画で今の自分に必要な動画を選んで勉強するといいかもしれません。
ここまでの流れを把握できれば、少しの経験でも自由に人物を描いて行くことは可能です。
お疲れ様でした。
次回から風景画の授業です。