人物画を描く (P10) NO.6

人物を描く場合特に女性を描く場合は、髪の毛の表現に注意する必要がある。

髪の毛の表現で、女性の魅力はずいぶん変わります。

古代では男性も髪の毛が長かったこともあり、その表現方法は多技に渡っています。

髪の毛を描くのがうまい画家として有名なのは、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ティッティアーノ、クラナッハ、デューラーと、ほとんどがルネサンスの画家たちです。

19世紀にロセッティが新たな女性美を描いてその頭角を現します。

それに続き、ルノワールも美しい髪をした少女を新たな方法で追求しました。

 

はじめに

今回も、前回に続き顔の部分を描き込んでいきます。

顔以外の体や髪の毛、バックなどもまだそれほど絵の具がのっていないので、絵の具を載せていく。

顔を描き込んでいることで、他の部分もそれに合わせていくという作業です。

人物の全体を見ながら、画面の色調を合わせるということを念頭に置いてください。

 

制作のポイント

今回の制作のポイントは、肌の色の統一感と体と髪の毛のつながり、バックの空間などです。

この絵は左からの光によって、大きな陰影に分けられています。

そのことを理解して、光をおびる人物を想像しながら作品を描き進めなければいけません。

実践のポイント

・柔らかい筆を使いこなす。

・肌の統一感を目指す。

・髪の毛のつながりに気を付ける。

・髪の毛の流れに注意する。

・人物の肩や腕にモデリングする

・肩から頭部にかけての距離を考える。

・髪の毛と肩や背中の関係を意識する。

・バックの空間に意識を向ける。

・3段階のトーンを忘れない。

・顔と髪の毛の細部の関係を表現する。

以上のことに意識して実践してみましょう。

 

189・油彩中描き

髪の毛の下塗りをしています。

ヴァンダイクブラウン、ローシェンナ、バーントアンバーを使いました。

光のハイライトを入れてみます。

皮膚と髪の毛のつながりを、よく見てみましょう。

 

190・油彩中描き

上から中間色でつなげて、髪の毛の質感を出していきます。

明るい色と暗い色を交互に塗り色調のグラデーションを作ります。

一気に仕上げる方法ではなく、徐々に色を重ねていく方法です。

好みの筆を使い髪の毛の、いろんな表情を表現してみましょう。

 

191・油彩中描き

頭のまわり全体の色調を合わせて描き込んでいきます。

ゆっくりバランスを見ながら進めるといいでしょう。

 

192・油彩中描き

暗い陰影の部分の輪郭を起こします。

この部分は、消えないように何度描き起こしておく必要があります。

頭部のアクセントとしての編み込みは、目立ちすぎてもだめで、その調整が難しい部分です。

眉毛の色も髪の毛に合わせてみましょう。

 

193・油彩中描き

全体の色調を合わせるには、皮膚の色を髪の毛にも取り入れることで、色の統一感を目指すことができます。

髪の毛が顔と別ものにならないように、つなげることを考えてみましょう。

髪のはえぎわを、かすかにぼかすのがポイントの一つです。

 

194・油彩中描き

筆の違いで髪の毛の表情は変化します。

自分がどのような髪の毛を描きたいのかを、よく考えてみるといいでしょう。

細かくフランドル風に描くのであれば、ここから細い筆で描き込んでいかなければなりません。

 

195・油彩中描き

顔の凹凸などと骨格を微妙に変えていきます。

ここからは、絵としての美の追求に入っていきます。

骨の形を変えると人間の顔は違う顔になっていきます。

 

196・油彩中描き

目元をはっきりさせてみます。

ヴァンダイクブラウンにピーチブラックを入れています。

微妙にぼかしてみようと布を使いました。

 

197・油彩中描き

目の微妙な変化は、顔の表情の印象を大きく変えてしまいます。

もし、自分が描いている顔が気に入っている場合は、

むやみにいじらずに全体を描き終えて判断してもいいかもしれません。

 

198・油彩中描き

ほほのハイライトに合わせて、目の部分の肌色を決めなければなりません。

そこから全体の色調を合わせていくことで、肌の滑らかさが出てきます。

 

199・油彩中描き

ライトレッドを影色の部分に塗り、肌色としてのアクセントにします。

基本色と同じくライトレッドにウルトラマリンや、ヴァンダイクブラウンをまぜるといいでしょう。

唇にも同じようにしますが、ホワイトを使いライトレッドを和らげます。

 

200・油彩中描き

基本色の赤い色と青い色を使い、口の周りの影を表現してみましょう。

同時にハイライトにネープルズイエローと、シルバーホワイトを使い入れていきましょう。

 

201・油彩中描き

鼻筋からの光の流れに苦心しています。

写真のままだと平面になってしまうため、造形の変化をつけて解決する方法を考えなければならない。

ここからは、理屈をうまく利用して考えることが大切です。

 

202・油彩中描き

今まで放置していた体の部分の造形を掘り起こします。

全体にウルトラマリンと、マルスバイオレットを使った色を塗りました。

ホワイトを足した色で光の部分に色を入れます。

豚毛で軽く描いて行くといいと思います。

 

203・油彩中描き

一番きついハイライト部分から、肩全体に着彩していきます。

ここでは形をアタリとして、色彩を置いています。

 

204・油彩中描き

暗い部分にアイボリーブラックとウルトラマリン、マルスバイオレットを使い影のマッスを作ります。

大ざっぱに塗りこんで、下地にしていきます。

腕の部分は手前にある分、絵の具を多めに塗った方がいいでしょう。

 

205・油彩中描き

軽く筆を持ち、しわの部分に光を入れておく。

軽い光を描くように。

 

206・油彩中描き

まばらな感じですが、暗い服なので、うっすらしたひだを作っています。

この肩の上にあとから髪の毛をたらす予定です。

 

207・油彩中描き

肩の半分は必要ないのですが、しっかりとした形を描いておくことでボリュウームが出ます。

細かい作業ですが、しっかり形を描いておきましょう。

 

208・油彩中描き

細かい明暗をつけて、柔らかい筆で全体をならしていきます。

硬さや、むらを無くしたい場合にこの方法を使うとよいでしょう。

 

209・油彩中描き

ここからもう一段階の光の層を作ります。

さきほどと同じような作業を繰り返します。

 

210・油彩中描き

細かいひだをもう一度描き起こします。

目安としての型を取っていますが、この作業は別に必用ありません。

 

211・油彩中描き

大きく胸の部分に絵の具を置いていきます。

肩のっ部分をどの程度で、描くかがいちばん調整が難しい部分です。

顔や髪の毛との光のバランスがあることと、手前に張り出させることを考えていかなければいけないからです。

 

212・油彩中描き

首から肩にかけてのトーンを整え、肩から腕をまとめないといけない。

少し服のひだが派手すぎるので、色を落とす必要があります。

 

213・油彩中描き

バックの色にウルトラマリンとアイボリーブラック、ホワイトを使い新たな色彩を施します。

少し色調を暗めに調節することにしました。

 

214・油彩中描き

さきほどと同じように、反対側にも暗めに塗りこみます。

こちらはあまり明るくしません。

とりあえず、全体に絵の具を塗りこみます。

 

215・油彩中描き

右側はわりと明るめにしておき、上の方は暗めにします。

真ん中部分に空間を作るのが目的です。

ある程度全体の雰囲気をがまとまってきました。

 

216・油彩中描き

ここでホワイトを多めに使い明るい光を入れていきます。

柔らかい筆でぼかしていくようにします。

 

217・油彩中描き

髪の毛全体にルツーセを塗り、沈んだ色をよみがえらせます。

色のツヤがないと、はっきりした色彩が分からないためです。

もう一度影色を全体に大まかに塗っておきます。

気にいらないので、色をつけ直したいと感じたからです。

 

218・油彩中描き

気にいるまで何度でも描く事は大切なことです。

今回髪の毛の量が多いこともあり、一度で描く事が難しいので、まとまりが悪いように感じます。

方法は、今までと同じですが、そろそろ下の方まで描きたいと感じている。

 

219・油彩中描き

少しずつ下の方に伸ばしていきます。

肩までの部分がいちばん光を浴びている部分です。

顔を中心に光を、流れさせなければいけません。

 

220・油彩中描き

頭の奥から肩を通して、手前までの遠近を考える。

難しく感じますが、光を利用することで手前に引き出せます。

風景画では川の流れで、この効果を利用しています。

 

221・油彩中描き

波のようなふくらみを作ることで、髪の毛の動きが出ます。

この辺は想像力を使い、楽しんで描いて行くといいでしょう。

 

222・油彩中描き

近くで見ていると錯覚しやすいので、離れて見直す必要があります。

まずは、離れて見て、うまく描けているかを確認しましょう。

 

223・油彩中描き

中間色で全体をならし、光と影を描いて行きます。

ハイライトには、ネープルズイエローと少しのホワイト、マースオレンジを使います。

光と影、中間色の3つを使い分けて、そのままつなげていきましょう。

 

224・油彩中描き

上の方で行った作業を、そのまま下でも行います。

軽く絵筆を持ち明暗を、つないでいきましょう。

ある程度したら、刷毛で色調を滑らかにまとめてみる。

髪の毛はできるだけ、硬くならないようにしたいものです。

 

225・油彩中描き

髪の毛の色調が合っていないので描き直します。

一気に描くとこのような事にはなりにくいのですが、日を分けて描いて行くとこのような事もあります。

顔の描き込みに対して、髪の毛をどの程度まで描くかは、作家によってそれぞれ違います。

この絵では髪の毛の魅力が、絵の見せどころのメインになります。

 

226・油彩中描き

マースオレンジを強く持ってきました。

奥から手前に引き出す、この部分の表現がいちばん難しい部分かもしれません。

 

227・油彩中描き

ホワイト系は濁りやすいので濁ってしまった部分は、描き直す必要があります。

下地の段階では気にする必要はありませんが、仕上げるときは気を付けましょう。

 

228・油彩中描き

背中にかけて、髪の毛のボリュウームが増します。

ここに少しの重みを、感じさせなければいけません。

髪の毛が肩にかかる部分は、絵の魅力を引き出す2つ目のポイントです。

 

229・油彩中描き

だんだん髪の毛として、見れるようになってきました。

それほど細い筆を使っていませんが、離れて見ると髪の毛の質感を感じることはできます。

描き方には好みがあり、大きな筆で描く人と細い筆で描く人がいます。

いろいろ試してみて、自分の表現を生み出すようになりましょう。

 

230・油彩中描き

細かい作業ですが、このまま下まで描き続けます。

下に行くほどハイライトの色は、おさえる必要があります。

 

231・油彩中描き

同じくアンバーとマースオレンジを下塗りして、上からローシェンナを混ぜた色で明るい部分を描いて行きます。

色を微妙に混ぜ合わせることで、流れを自然にしていけます。

 

232・油彩中描き

顔の作業と同じく根気がいる作業です。

何度も見直して、じっくり取り組むようにしましょう。

肩の後ろの部分がいちばん明るいラインになるようにします。

 

制作過程まとめ

今回顔の描き込みと全体の形を描いて行きました。

顔は普通は、このあたりで終わります。

初心者には難しいかもしれませんが、何度か描けばコツをつかめると思います。

髪の毛も描くのは大変ですが、ウェーブや細かい光や髪の毛の質感を描く練習をしましょう。

お疲れさまでした。