オイルスケッチを描く手順を
動画で説明していきます。

はじめに
今回は初心者を中心に、または初めて油絵の具を使う人を対象にしています。
授業は油絵の描き方を、動画で説明していく方法で行います。
ここでは、油絵の具を使っていきなりキャンバスに向かうのではなく、まずは絵の具を実際に使って紙で下絵を描いてもらいます。
なぜこのような手順で勉強するのかというと、いきなりキャンバスに描くのは、油絵の具を使ったことがない人には難しく感じるからです。
まずは練習して、実際にキャンバスに描く作品のイメージを明確にすることが目的です。
・はじめに普通の紙に鉛筆でイメージをスケッチしてください。
・描くモチーフを決めて構図を決めます。
・次は、パステル紙に木炭鉛筆でデッサンしていきます。
・デッサンが描けたら、油彩で着彩していきます。
この紙に描くことは、水彩で描く方法に似ていますが、水彩と描き方が違うのは白部分を残さないで、塗り重ねて光を表現するところ。
厚紙で描くことで、油彩の感覚を実感しやすいと思います。
また、この過程を知ることで、今後の制作の練習やイメージ画を描くのに役立つので覚えておくと便利です。
あくまでも、キャンバスに描く前の下絵と考えて楽に描いてください。
この絵を元に後で、実際にキャンバスに描くので、重要になる部分を頭に入れて描いて行きましょう。
オイルスケッチとは
油彩画といえば、キャンバスに描くものと思われていますが、油絵の具はキャンバスのほか、紙や木などほぼすべてに描ける便利な描画材料です。
特に紙に描くと、紙の吸収性により、絵の具の油分を吸い込み、早く乾いたような状態になります。(色は若干沈みます。)
キャンバスに描くよりも手軽で、初心者の習作用に向いているといえます。
ただ、絵の具を厚く塗るのにはあまり適していません。
ある程度まで絵具を塗れますが、紙なので限度があります。
そのため木炭鉛筆で、明暗の調子をある程度描き込んでから、着彩しましょう。
使用する紙はパステル紙、水彩氏、などやや圧手のもの、
ボール紙、ボール紙を圧縮した画用ボードなど、薄い紙以外ならほぼどんな紙にも描けます。
今回はパステル紙に描きます。
◆作例のひとつですが、
下の絵のように特殊な厚紙に描くこともできます。
この人物画と風景画はオイルスケッチでもオイルを少なくして
絵具を多く使った例です。
そのまま作品として扱うこともできるのがいいところです。
1~2日ほどであっさり仕上げます。


必要な道具
パステル紙、木炭鉛筆、油絵の具、筆、オイルが必要です。
紙は、圧手の画用紙または、ボール紙、キャンバスボードでも描けます。
木炭鉛筆は、僕が気に入っている道具なので、ほかにも木炭、鉛筆、チョーク、油性ペン、ダーマトグラフなど自分が描きやすいものなら何でも結構です。
絵の具を溶かす溶き油は、水彩絵の具の水と同じ役割をします。
今回僕が使ったオイルは「ボイルドリンシードオイル2容量、ヴェネチアテレピンバルサム1容量、リンシードオイル1容量、ポピーオイル1容量、ラベンダーオイル6容量(テレピンでもよい)」ですが・・・
・ペンティングオイル(わたしがプレゼントした配合オイル)と
テレピンかぺトロールを2倍に薄めたもの。
・ぺトロールかテレピンだけでも大丈夫です。
通常のオイルより少し揮発性油で薄めて使います。
筆は柔らかい筆を選んでください。
自分が描きやすい筆ならなんでも使って大丈夫です。
硬い筆は紙には、伸びが悪いのであまりオススメできません。
制作手順
スケッチブックかクロッキー帳に何枚か鉛筆でデッサンし、
大まかな構図を決めてパステル紙に向かう。
まずは木炭鉛筆で形をとり、暗い部分の調子をつけていきます。
下描きが終了すると、次は油絵の具で着彩。
まずは中心の二つのカボチャから描いて行きます。
パレットの上で混色した絵の具を筆にとって、紙面に色を置くような感じで塗る。
カボチャがあるていど描けてきたら、全体を描いてバランスをとり、またカボチャを仕上げます。

(モチーフのイメージ写真)
※動画で流れる曲は時間に合わせて選んでいます。
音楽が邪魔と感じた人はボリューム調節してください。
なくてもいいかもしれません。

自分の好きな静物を選ぶ
ここでは、二つのカボチャを選びましたが、
生徒さんは自分が描きたいモチーフを使って練習していきましょう。
全く同じものでも構いませんが、形は似ているモチーフ、好きな色彩や形を描いても大丈夫です。
オススメは、
・ニンニク
・玉ねぎ
・カボチャ
・ピーマン
・なすび
・リンゴ
・ミカン
・梨
・洋ナシ
・桃
腐りにくいものは、油彩に向きますし、柔らかいものはオイルスケッチに向きます。
パンやブドウなど、わたしは好んで描いていましたが、果物は腐りやすいので注意してください。
じっくり描くなら、丈夫な野菜などが勉強になります。
木炭鉛筆で下描きNO・1
中心を決めて、2つの動きをつかみカボチャの形をとります。
はじめはうっすらと描いてバランスを見て、鉛筆は軽く持ちましょう。
木炭鉛筆で下描きNO2
鉛筆デッサンをするように、ハッチングを使って暗い部分に大まかな調子をつける。
なるべく面を意識してください。
僕は録画しているので、手を早く動かしていますが、ゆっくい描いてください。
木炭鉛筆で下描きNO3
立体感が出てきたので、まわりも少しずつに描き込んでいきます。
できるだけ消しゴムは使わないようにしましょう。
使う時は、ねり消しゴムか、食パンの白い部分が木炭にはいいでしょう。
あと、鹿の皮なども使えます。
木炭鉛筆で下描きNO4
ここから確実な線を描いて行きます。
今回は鉛筆デッサンの勉強のため、細かく説明的に描きこんでみました。
もう少し軽く描いても大丈夫です。
木炭鉛筆で下描きNO5
量感を意識して、陰影を描き込んでいきましょう。
暗い部分の微妙な段階をつけます。
濃い線は、量感と立体を強調するための線です。
下描き終了
空間を意識して仕上げていきます。
物と物の感覚のヴァルール(明暗、色との対比の関係)をとらえます。
線の間隔は、できるだけ同じ幅になるようにしましょう。
油彩で着彩に入ります
はじめて油絵の具を使う方は、どう描けばいいのか、とまどうのではないでしょうか。
ここでは、二つのカボチャから描き始めるのでパレットに出した絵の具を溶き油でのばし、白と黄色、茶色の絵の具を混色して作ります。
その絵の具を平筆の先端にとり、画面に色を置くような感じで描いてください。
小さめの作品ですから、少しずつ筆を進めていきます。
黄色い色でも色を微妙に変えて明暗を出しますので、色のせもほんの少しずつになります。
最初は、同じパステル紙に少し色をのせてみて、調子を見るのもいいでしょう。
少し描き進めると慣れてきますので、臆病にならず描き進めましょう。
油彩で着彩・NO1
まずは右側のカボチャの明るい部分から少しずつ描いて行きます。
ます、筆先に少しオイルとつけます。
その筆で、パレット上の絵の具をまぜてみましょう。
シルバーホワイト、ロージェンナー、マルスイエロー、バーントアンバーなどで色を作ります。
(色彩は自分の好みで選んで混色します。原色だけを使うことはあまりありません。)
濃い色と薄い色を作り、明暗にそれぞれ塗ります。
油彩で着彩・NO2
絵の具は厚塗りしないようにしてください。
水彩絵の具のように塗ってみましょう。
暗い部分を塗っていきます。
明るい部分にマースイエローとネープルズイエローを混ぜて描きます。
油彩で着彩・NO3
芯の部分をロージェンナーで描き込みます。
ここで細い筆に切り替えました。ハッチングも使ってみましょう。
油彩で着彩・NO4
次は左のカボチャを描きます。
カドミウムイエロー、マースオレンジ、カドミウムオレンジ、ローシェンナー、バーントアンバーを使いました。
左のカボチャと同じように、二色の色を作っておきましょう。
油彩で着彩・NO5
色彩が分かりずらい時は、ほかの紙に試しに塗ってみてください。
画面が小さいので、絵の具を少しずつ乗せていきます。
ある程度は、絵具を重ねることもできます。
油彩で着彩・NO6
赤い布を描き込みます。
マルスバイオレット、バーントアンバー、シルバーホワイト、カドミウムレットを使っています。
同じく、明るい色と暗い色を作ります。
細めの筆で、描くように絵の具を塗っていきましょう。
油彩で着彩・NO7
ここから画面の手前を描いて行きます。
バーントアンバーとアイボリーブラックで、テーブルにも色を塗ります。
徐々に奥行きを出していきバックも色をのせていきます。
バックはローアンバー、カドミウムグリーン、シルバーホワイトです。
ここでは少し大きな筆に変えます。
柔らかいリスの毛の筆です。
油彩で着彩・NO8
全体に色を塗ることで、物の存在感がはっきりしました。
ここでまたカボチャに戻り描き込みます。
影を強調していきます。
油彩で着彩・NO9
布のひだの明るい部分を描き込みます。
この辺で、キャンバスにどのように描けばいいのか、だいたい把握できてきます。
絵のポイントや、難しいと感じるところをチェックしておきましょう。
油彩で着彩・NO10
ここから細部に目を向けていきます。
凹凸が多いのですが、あまり細かく見すぎないようにしましょう。
油彩で着彩・NO11
一度遠くに離れて全体を見てみると、狂いが分かりやすいので画面を見直すことも大切です。
全体の流れを見直しましょう。
油彩で着彩・NO12
光の反射や模様、テーブルに移る色を逃さないようにします。
明るい部分を描き込むことで、向こう側を感じさせることになります。
油彩で着彩・NO13
細かい光とトーンを意識しましょう。
練習なので、もし、失敗しても気にせずに描いてください。
紙でも、油絵の具はこのように絵具を何回も、乗せていくことで質感が出てきます。
油彩で着彩・NO14
全体をまとめていきます。
テーブルと布の質感を描いて手前に立体感をつけます。
布にはレットにホワイトを入れて光を表現しましょう。
テーブルなどを描く場合は、大きな筆を使います。
油彩で着彩・NO15
静物画を描くポイントは光線や陰影、質感をとらえることを重視して描いていくことです。
布とテーブルの光をとらえる。
スケッチなので、大まかにに描いてください。
油彩の着彩・NO16
カボチャの影の色の幅を増やしていきます。
浮き彫りのようになれなOKです!
別にハッチング技法で描いて行ってもかまいません。
描きやすい方法で試していきましょう。
油彩の着彩・NO17
細部の細かい光とトーンを描き込んでいきます。
紙ですが結構絵具をのせていくことが可能です。
パレット上にたくさんの色ができるので、対象をよく見ながら色を塗っていきましょう。
油彩の着彩・NO18
左のカボチャの光と影を強調します。
テーブルに映る反射の色も見逃さないようにしましょう。
全体の立体感を意識して進めてください。
油彩の着彩・NO19
テーブルの全面を暗くして遠近を強調します。
テーブルの奥とバックも意識して奥行きを出していきます。
油彩の着彩・NO20
バックを暗くして絵の重みを出します。
バックを描き込むことでバランスが変わってきますので、また前の方から調節しましょう。
油彩の着彩・NO21
布のハイライトを描き込んでいきます。
これにより前後の遠近をはっきり強調できます。
油彩の着彩・NO22
ここから仕上げに向けて上化粧を施していきます。
下地を生かすことで、上に乗せる色がさえます。
テーブルにも光が差しますので描き足していきましょう。
油彩の着彩・NO23
ここで仕上げになります。
細部の形を整えていきます。
遠くに離れて全体を見渡して、よく観察してください。
だいたいの雰囲気が出ていれば、この辺で終了です。
ここで大切なのは、物と物との空間と立体を描くこと。
そして、色彩の把握です。
このスケッチを終えて、本番のキャンバス画に描く。
まとめ
オイルスケッチにしては、描き込みましたが、初心者の方のためにわかりやすく細かい動画にしました。
この練習を何度か経験していくと、油絵の感覚を覚えることができます。
この段階を踏んで(今回の静物画で一度描いているので)、次回も引き続きキャンバスに作品として描いていただきます。
モチーフですが今回は、腐りにくいカボチャを使いました。
別になんでもいいので、リンゴや玉ねぎとか丸い感じの物から練習していきましょう。
オイルスケッチはあくまでも下絵、イメージ画なので楽に描いてください。
次回はキャンバスに同じ絵を描きます。