これまで、3段階の前景、中景、遠景に分けて考えてきました。

遠景から描き中景を中心に描き込み、前景に至るまでの手順を理解できたと思います。

今回はその前景を描くことで、風景画としての完全な形を描くことになる。

風景画は9ブロックに分けて、ブロックごとに作業を進めると上手くいきます。

特に、前景は二つの方法があり、うっすら軽めに描く方法と厚く迫力ある描き方です。

今回は、中景に力強さを出すために、あえて熱く絵の具を重ねることにしました。

風景画に慣れて、何枚もの作品を描くことで、遠景と前景の処理は感覚で調節できるようになるでしょう。

また、写真的なリアリズムで表現したい場合は、前景を描き込み、中景とのバランスを調節できるような訓練が必要になります。

 

制作のポイント

質感を描き込んでいく

この絵に登場する、建物、木、草、雲、水などの質感を分けて描くこともしていきましょう。

同じ質感にならないように、筆の使い方や、絵具の塗り方などを工夫してみることが大切です。

いろんなことを実験して、試してみることをオススメします。

 

省略

建物の細かい部分や、木や草など不要と感じる部分は、省略するようにしましょう。

写真に写っているからと全てを描く必要はありません。

絵画はあなたが感じたことを表現する世界です。

今回僕は建物の後ろにある木を消しました。

そして、睡蓮など、前景部分と建物の部分を省略しています。

細かい部分を大きく捉えることも必要です。

大きく捉えた絵は、画面も不思議と大きく感じるのです。

 

描き込み

絵の中心やメイン部分は、なるべく描き込むことは大切です。

絵の主人公というか、見せ場は魅力を感じるように工夫してください。

細部の木や草なども描き込んで、どんどん生命感を与えていきましょう。

 

色彩

写真の色彩は、写真色です。

絵は、あなたが見た色、見える色にするとで絵画としての魅力が生まれてきます。

自分の感覚でほしい色を作れるようになり、どこにどの色をおくとよいのか、配色の勉強をしていきましょう。

この訓練は、後にあなたの画風の大切な財産になります。

 

281・油彩中描き

もう一段階色を明るくしていきます。

明るくすることで、空間を作り遠近が増します。

シルバーホワイトとチタニウムホワイトでは、発色がまったく違います。

 

282・油彩中描き

雲は強い光を透かします。

細い筆先を利用して、光の変化を描き分けましょう。

雲は濡れている状態で描くと、トーンの調節がしやすくなります。

 

283・油彩中描き

筆先をこするようにすると、微妙な変化を出せるようになる。

ルツーセを前もって塗っておくと、作業しやすくなります。

下地を少し溶かすことで、上塗りした絵の具とよくなじむ。

 

284・油彩中描き

雲と雲の間の空間を意識してください。

空気感を出す準備段階と考えて、何も見ないで描いてください。

頭の中で、この後どうするのかを想像してみましょう。

 

285・油彩中描き

手前の雲をもっと手前に引っ張ります。

そのためには、トーンの幅を増やす必要があります。

ぼかしながら描きます。

 

286・油彩本描き

筆の形をそのまま使い、ブロック状に石積みを描いていきます。

下地を利用して、少しずつ描き足していきましょう。

今まで行ってきたことを、まとめるように塗っていく。

 

287・油彩本描き

レリーフの細密描写も同時にしていきます。

光を大きく捉え、とりあえず、絵の具をのせていく。

画面の中心で絵の主人公なので、画面前面に押し出すことを意識してください。

少し写真を見て、だいたいは自分の頭で作っていきましょう。

 

288・油彩本描き

僕は、ほぼ見ないで描き、自分のイメージを足していく。

省略することで、自分の目を通した解釈が絵に出ますので、

大切な部分以外は、写真を無視して作業していく。

 

289・油彩本描き

中間色で、間を埋めていきます。

色調を整えるには、中間色をうまく利用しましょう。

ハイライト部分はまだ塗りません。

 

290・油彩本描き

暗い部分に着彩します。

塔の丸みを出していくため、影と光を描き足します。

なるべく、細い筆を使い、細かく描いていきましょう。

中心部分なので、目立つポイントを作ってください。

 

291・油彩本描き

回り込む部分を、少し明るい色で描き足します。

いちばん細かい部分の作業は、見える範囲で描き、省略してください。

全て描いてもいいのですが、できるだけ大きく捉えると絵が堂々とした感じに見えます。

 

292・油彩本描き

暗い部分に中間色を入れて、空間を作ります。

ホワイトを使い石の光を表現しましょう。

ここでも、写真をある程度見て、

あとは自分の好みで作業を進めてください。

 

293・油彩本描き

段になっている部分は、省略します。

とにかく、浮き上がっている部分だけに集中していきましょう。

遠くから見て違和感なく凹凸を描いたら、丸みにも目を向けてください。

 

294・油彩本描き

屋根の上の傘も、明暗を整えておきましょう。

細部の光をとらえることで、絵の魅力が増します。

石の質感に目を配り、どのような色を入れるとよいのか実験してみてください。

ただのホワイトで描くだけではだめです。

トーンを読み取り、自分で判断をしていかないといけません。

 

295・油彩本描き

ここまで描き進めると、あとの細部描写を楽しめるはずです。

自分のイメージで、ハイライトを入れていき、

グレーなども使い石の汚れなども描いていきましょう。

 

296・油彩本描き

傘にハイライトを入れます。

ブルーやグレートとなじませて、ホワイトを加えましょう。

暗い窓は、塗り重ねて深みを出します。

真っ黒は使わず、茶やホワイトを少し混ぜましょう。

 

297・油彩本描き

空の空気感をもっと出すために、ウルトラマリンとホワイトを使いました。

いちばん奥から塗り、雲となじむようにぼかします。

片目で見て、すっぽり奥行きが出ているのかを確認しながら作業をしてください。

雲だけを見るのではなく、地上の木なども見て描きましょう。

 

298・油彩本描き

そのまま上に上がり、トーンを合わせます。

グラデーションではなく、空間にホワイト、

雲に近い色を塗り重ねることで、空間を作ることができます。

ホワイトを入れることで、雲の動きと通じる空間が生まれるという事です。

 

299・油彩本描き

建物に生える草をテールベルトなどで描き込みます。

塔に連なる葉などの緑も反射している感じで描き加えます。

色彩濃度は後で調節できます。

リアリティーある表現をしたい場合は、反射を描き加えます。

そうでない場合は、反射を無視します。

 

300・油彩本描き

水面を奥から暗めの色彩で描き足します。

これ木の影です。

ブラックやアンバーなどをまぜておくと深みが出ます。

水面は、できれば一回で描き終わるようにする方がいいのですが、

今回は何度も重ねることにしました。

 

301・油彩本描き

縦に絵の具を塗り、伸ばします。

木の色彩を重ねていき水面の中で奥行きを表現します。

縦と横の色の入り方を見て着彩しましょう。

全て描く必要はありませんが、色彩を分析して深みを出す。

 

302・油彩本描き

明るい色をおいて、下地になじませながら描いて行く。

水面をイメージして、鏡のように近い色を塗ります。

 

303・油彩本描き

テールベルトとブラックをベースにした色を左の草に塗りました。

水面は光の反射を大きく入れる。

水面に映る建物の色を入れていきましょう。

できるだけ筆先に絵の具をつけて塗ってください。

手前になるほど厚みのあるマチエールが必要になります。

 

304・油彩本描き

ベースになる色をおいていきます。

グリーンと混ぜて水面を暗くしていく。

影を暗めに意識して、深みを出しましょう。

その上から光の反射を描いていきます。

筆の毛がこびりついたときは、ピンセットを使います。

 

305・油彩本描き

緑が映る部分をすこしぼけた感じで表現します。

明暗で色彩を分けてみましょう。

そして建物もぼかして色を作っていきます。

 

306・油彩本描き

細かい光を入れていきます。

遠近感を意識して、色彩が飛ばないようにしましょう。

表現は自由ですが、葉の感じを出すことを考えてください。

 

307・油彩本描き

どんどん絵画的に作っていきましょう。

ここからは自由に表現していくことに重点を置きます。

絵画的に美しく見える色彩や、タッチに切り替えてください。

雲による天候の光と影も表現してみましょう。

 

308・油彩本描き

明確である必要はありませんが、緑の塊として捉える必要はあります。

ボリュームを出し、手前に引っ張り出しましょう。

そうすることで、絵画的魅力が増します。

 

309・油彩本描き

点描による光の効果は分子的に、物質を捉えるときに役立ちます。

塊として一つの点にして捉えるという事です。

レンズでぼけたときに出きる光の点を、思い浮べてみてください。

 

310・油彩本描き

奥から光を入れて遠近を出すことを考えます。

手前の草をビリジャンを使って描く。

前景を描くには、水面の遠近法を利用することと、

絵具のボリュームをつけていくことの2つが重要になる。

 

311・油彩本描き

石垣と水面の境目を十分意識してください。

ここからが、前景になりますから。

石の重みと、水圧をイメージしてください。

どちらも力がかかる部分なので、重みを出すことを考えて描く。

後ろの建物との空間をよく見ましょう。

前景は後ろより明るく描くと、前面に出やすい。

 

312・油彩本描き

見える部分から、順番に描いてください。

石や、緑の部分の処理をどこまで描くかは、自由なので省略する人は大きく捉えてください。

出窓部分の立体を見逃さないようにしましょう。

 

313・油彩本描き

左端まで色をつなげていきます。

端の部分はそれほど細かくする必要はありません。

中心部分に目が行くように処理しましょう。

ピンクを使い花を描いておきます。

 

314・油彩本描き

建物の輪郭部分に筆を入れます。

中景部分を目立たせるには、絵の具を後景より多く塗る方が効果的です。

自分の絵にボリュウームがない場合は、絵具をもっとのせていくとよいでしょう。

 

315・油彩本描き

光を捉えて、塔との距離を出していきます。

全て空間を意識しないと、関係性を出すことが出来ません。

細やかな光と影を捉え、常に意識しましょう。

 

316・油彩本描き

出窓の屋根に明るい色を入れました。

明暗をつけて色彩を調節します。

大きな屋根にも絵の具をのせていく準備をしておきましょう。

奥の壊れている壁の処理も考える。

 

317・油彩本描き

見える範囲で色を塗っていきます。

点描で表現したり、筆を変えていろんな表現を目指してください。

建物全体をくまなく描き、だいたいの雰囲気をつかんでいきましょう。

 

318・油彩本描き

緑の細かい光を捉えます。

レンガも一度細かく描きますが、不要な部分はあとで修正します。

 

319・油彩本描き

物質間を出す努力をしてください。

硬いもの柔らかいものの違いを描き分けるとまた違う雰囲気が出ます。

筆のタッチや塗り方で、いろんな表現が可能です。

動画と違う表現もしてみてくださいね。

 

320・油彩本描き

睡蓮の葉を描いていく。

筆で軽く絵の具をのせていきますが、

写真どおりではなく自分の感覚で自由に配置してください。

絵にするためには、自分の感覚が重要になってきます。

写真の通りでは絵にならないこともありますので、遠近を考えて配置してください。

 

321・油彩本描き

左の草を細い筆で描いていきましょう。

ホワイトとビリジャンやサップグリーンを使ってみました。

イエローなどと混ぜてみてください。

水面に緑を塗って、色面を作っていきます。

 

322・油彩本描き

睡蓮の葉を描いていきます。

ここでも自分の感覚を活かして、描いていきましょう。

省略して、丸い形で表現します。

描き込みたい人は、後で描き込んでいきましょう。

水面に映るグリーンも描き込んでください。

 

323・油彩本描き

水面は何度も色を重ねておきます。

重ねて描く方法で深みを出していきます。

縦と横の色彩を両方取り込んで、遠近を出してください。

前面になるほど、絵の具の厚みが必要です。

 

324・油彩本描き

牛の毛でタッピングして、暗い色をまぶします。

明るい色の上から、細かい筆先で暗い色を入れることで、

木の中でのいろんな色彩を表現できます。

ラピットメディウムを使うと効果的です。

少し明るい色も入れてみましょう。

 

325・油彩本描き

筆先を使い、ランダムにいろんな色をのせます。

自然な葉の感じを目指しましょう。

少しぼかす感じをイメージすると、ふわりとした感じになります。

 

326・油彩本描き

水面に映る色に少し明るさを入れます。

水面は2つの層を描く必要がある。

まずは、映った建物です。

そして、もう一つは水面に感謝する光です。

この二つをよく見て、どちらを省略するかを決めてください。

 

327・油彩本描き

木の葉先をできるだけ細かく描きます。

どのような筆を使ってもいいので、木の動きが出るようにします。

遠くから見て、木の自然な感じをイメージしましょう。

ここでもラピットメディウムを使うと絵の具がのりやすいと思います。

 

328・油彩本描き

手前の草が生えている部分に、できるだけ絵の具をのせましょう。

前景の水面にも絵の具を塗り重ねて厚みを出してください。

できるだけ色に深みが出るように何回も色を重ねましょう。

水面の処理も自由ですが、できるだけ深みが欲しいところです。

 

329・油彩本描き

水面の色彩もどこまで描くかは作者の自由で、その処理方法で個性を出すことができます。

水面の深みと、遠近の奥行きの両方を見ながら、作業を進めていきましょう。

絵具を上手く利用して、ぼかすこともしてみてください。

 

330・油彩本描き

なるべく明るい色で壁を上塗り、穴の開いた部分は暗く塗っておきましょう。

そこから、レンガの色をホワイトと、ライトレッドを使い分けて壁の表情を出します。

割れている部分には、もう一度暗い色を塗り、明暗をはっきりさせておく。

 

331・油彩本描き

いちばん光が当たっている部分を、ホワイトを多めにして塗り重ねる。

壁の割れ目に注意して描き込みます。

単純な形をしていますが、奥の木と手前の塔をつなぐ役割をしている部分です。

この部分をいかに上手く描くかで、遠近法と魅力ある見せ場が決まります。

 

332・油彩本描き

葉の絵具が乾いたら、空の色を間に描き込み、少し空間を作りました。

その上からさらにグリーンを足していきます。

手前の草も色の幅が広がり、きれいな明るい緑になりました。

さらに奥の草も描き足していきましょう。

 

333・油彩本描き

パーマネントグリーンにカドミウムイエロー、イエローオーカーなどをまぜて草の色を明るく描く。

それを水面にも同じように塗っていきます。

常に遠近と空間を意識して作業していきましょう。

 

334・油彩本描き

もう一度細かい空間を作るため、空の色に近いホワイトを所々に入れていきます。

大きなすき間をメインにして、遠く離れてみて違和感がない程度で作業してください。

 

335・油彩本描き

この作業はよく見て楽しみながら行いましょう。

自分の感覚を信じて、木の動きや表情を作る作業です。

空いた空間に葉の影を入れて、空間を感じさせることもしてみてください。

 

336・油彩本描き

水面の光を入れてみて遠近が上手くいくか試します。

前景、中景、遠景をしっかり意識してください。

もし、遠近が上手くいかない場合は、不要な光と色彩を省いてしまいましょう。

リアルさよりも、しっかりとした造形を意識してください。

 

337・油彩本描き

水面の風による波を描きます。

うっすらしたものですが、少し描き込みます。

奥の光を少し強調してみました。

 

338・油彩本描き

ハイライト部分をチタニウムホワイトを多めにまぜて塗ります。

今まで通り、中間色とチタニウムホワイトまぜて、細かい部分を描き足しましょう。

光が強い部分から描いていき、調子を合わせて細部とつなげていってください。

 

339・油彩本描き

強めの光で、丸みのある形にします。

極端に明るい場合は、中間色で塗り直して、色調を整えましょう。

 

340・油彩本描き

反射も描き加えて、石の形を描き起こします。

不要な部分は省略してもかまいません。

細かく描くのは冒険のようなもので、失敗することもありますが、失敗を恐れずに描き込んでみましょう。

影の中のトーンを描くことで、色調の柔らかさが出ます。

 

341・油彩本描き

屋根のてっぺんの光も描き足します。

写真を見過ぎないようにして、個々では絵画的にどう見せたいのかを考えることが大切です。

あまり写真に頼りすぎると、写真を超える表現ができなくなってしまいます。

独立した自分の絵としての表現を楽しみましょう。

 

342・油彩本描き

塔の色彩の明るさに合わせて、となりの建物も明るくしていきます。

今までと同じように、レンガの壊れた部分と漆喰の部分を描き分けていく。

光の表現をどこまで描くかは自由ですが、遠近と絵画的に中心の塔との関係をよく考えて着彩しましょう。

 

343・油彩本描き

いちばん奥の色の深さを強調します。

遠近がもう少し欲しい感じなので、さらにグリーンを伸ばしていきました。

右端の影を強調して、光と影の色彩バランスを考えます。

 

344・油彩本描き

前景の水面の色を濃くしていきます。

睡蓮の影として考えることもできますが、水のなかをイメージさせる方法です。

いろんなグリーンを使い、表現の幅を広げてみてください。

 

345・油彩本描き

睡蓮の上塗りをして、自由な発想で描き加えていきましょう。

前景なので絵の具をたくさん使って、盛り上げてもかまいません。

軽く絵の具をのせいて描いてもかまいませんし、写実的な描写をしてもいいのですが、

今回は建物をメインにするため、軽い表現にすることにしました。

 

346・油彩本描き

屋根の色のトーンを加えます。

石の明るさに合わせた明るさを目指しましょう。

屋根と屋根の遠近感を忘れないように作業していきます。

少しずつ明るく丸みを出す。

 

347・油彩本描き

屋根瓦の感じを出すために細い筆を使っていますが、

もう少し大きめの筆を使ってもかまいません。

屋根の厚みが欲しいところですが、とりあえず描き進めていく。

 

制作経過まとめ

各ブロックの描き込みに入り、風景画としてのまとまりが出てきました。

緑の色調で遠近を出すことは難しい部分です。

いろんな緑を使い、塗り重ねて、魅力ある画面にしていきましょう。

水面の遠近は、静物画でテーブルを描いた方法を使って描いてみることです。

自然と奥行きが出ているように工夫して遠近感を出してください。

水面と空の雲のバランスを忘れないようにして、

全体の空間イメージがしっかりできているかをチェックすることも忘れず行いましょう。

次回はついに最終仕上げに入ります。

お疲れさまでした。